箱根芦之湯温泉「松坂屋本店」宿泊レポート!360年の歴史を持つ名湯と美食の宿【神奈川】 神奈川

創業寛文2年(1662年)、歌川広重の浮世絵にも描かれた箱根屈指の老舗旅館「松坂屋本店」。
まるでタイムスリップしたかのような歴史の重みや伝統と文化が感じられる館内で、三大美肌泉質すべてを含有する稀有な温泉と丁寧に調理された目にも美しい料理が堪能できます。オールインクルーシブを取り入れたラウンジでは、ゆったりとアルコールを楽しむことも。
実際に宿泊して体験した優雅で贅沢な滞在の様子と日帰り入浴の利用法について紹介します。
まるでタイムスリップしたかのような歴史の重みや伝統と文化が感じられる館内で、三大美肌泉質すべてを含有する稀有な温泉と丁寧に調理された目にも美しい料理が堪能できます。オールインクルーシブを取り入れたラウンジでは、ゆったりとアルコールを楽しむことも。
実際に宿泊して体験した優雅で贅沢な滞在の様子と日帰り入浴の利用法について紹介します。
箱根芦之湯温泉「松坂屋本店」について

駒ヶ岳の麓にある箱根芦之湯温泉。その歴史は古く、鎌倉時代には既に山岳信仰の行者たちが湯治場として使用していたという記録が残っています。一般的な温泉地として発展したのは江戸時代に入ってからで、「箱根七湯」と称されていました。

松坂屋本店内の歴史展示コーナー
松坂屋本店が芦之湯温泉に創業したのも江戸時代。360年の歴史の中には、木戸孝允と西郷隆盛との会見、小説家・獅子文六の逗留など、様々な記録が残されています。乃木大将直筆の宿帳が残るのは日本でもここだけです。

廊下に飾られた皇室ゆかりの大鏡は、まるで過去へタイムスリップする入口のよう。
改築や改修を行い、4000坪の敷地の中には現在5つの館がありますが、ユニークなのは敷地内に鎌倉古道の湯坂路が通っていること。この湯坂路を保存するためトンネルを掘り、館内に階段を昇り降りして進む通路ができています。今も時々、古道歩きをする人が通って行くそうですよ。

かつての露天風呂の先を通っている鎌倉古道の湯坂路
館内を散策するだけで、ノスタルジックな非日常を体験できます。
松坂屋本店のおもてなし

旅館に到着し最初に通されるのは煌びやかなシャンデリアと暖炉が印象的な、明治時代の洋館をイメージしたラウンジです。チェックイン手続きは、こちらでお茶とお着き菓子をいただきながら行います。

宿泊した日のお菓子は、小田原最古の老舗和菓子店「ういろう」の花菖蒲を模した練り切り。香り高い煎茶と一緒にいただきました。

旅館ではめずらしいオールインクルーシブ※スタイル。チェックイン後は、テラスやラウンジでアルコールやソフトドリンクをいただきましょう。
※オールインクルーシブとは、宿泊代金にお食事やドリンクなどが料金に含まれているサービスのこと

アルコールは日本酒、ワイン、焼酎、ビール、ハイボールと種類も豊富。軽い飲み口の日本酒「箱根山」は、特に人気です。ソフトドリンクもピーチティーや100%フレッシュジュースなどが揃い、アルコールが苦手な人にも好評です。

館内や客室で焚かれている京都松栄堂のお香や、チェックイン時にいただいたお茶などは、お土産としてショップで購入できます。

囲炉裏のある休憩室
また、その他のパブリックスペースとして、バーラウンジや折り紙など日本の遊びが楽しめる休憩所などがあります。
海外からのお客様も多い松坂屋本店。スタッフにも海外の方が多く、きめ細やかなホスピタリティに、老舗旅館のおもてなしの心が感じられます。
三大美肌泉質すべて含有の稀有な温泉
加温加水なしの源泉100%かけ流し

箱根七湯の中でも最も上位とされていた芦之湯温泉。特に松坂屋本店の源泉は、三大美肌泉質といわれる硫黄泉、硫酸塩泉、炭酸水素塩泉の成分が、どれもバランスよく含有された全国的にも稀有な温泉です。60メートルほどの浅い場所から毎分200リットルほど湧出しています。豊富な温泉を、大浴場、貸し切り露天風呂、客室で、加温・加水なしの100%源泉かけ流しで満喫できます。

温度は湯船にお湯をいれる時間で調整。適温になるよう長年の経験で得たデータをもとに、その日の気温も考慮しながら調整しています。湯の花が多い温泉のため、パイプに湯の花が積り1週間で80リットルも湯量が変化するのだとか。そのため毎日お湯がたまる時間を計って、定期的にパイプの掃除を行っています。
松坂屋本店の極上の温泉は、スタッフの皆さんの毎日の努力に守られているんですね。

湯船の底には、まるで模様のような大量の湯の花が沈殿していました。
お湯の中に浮かぶ大量の湯の花に、海外のお客様から「ティッシュが浮かんでいる!」というクレームが来たこともあるとか。

比較的温度は高めですが、なぜか体に負担を感じません。熱くなって外に出ても、しばらく外気にあたって落ち着くと、また入りたくなり、いつまでも出られなくなります。湯上りの肌はトゥルトゥル、それでいてサッパリとしています。
リニューアルした大浴場「権現の湯」

旅館としての歴史は長いですが、かつての箱根は外湯文化であったため、館内に大浴場ができたのは昭和になってからです。2023年には大浴場をリニューアル。
温かみのある木目調の浴室には、大きな窓から陽光が差し込みます。

朝の光が天使の梯子のように降りてきていた露天風呂。

脱衣所のロッカーには履いてきたスリッパが収納できるようになっているほか、自分専用の椅子まであります。

2つの浴室は夜中0時で交代となるので、宿泊すると両方の温泉に入ることができますよ。

湯上りラウンジには、フレッシュなフルーツジュースやミネラルウォーターのサービスがありました。
日帰り利用も可能な貸切個室源泉露天風呂

大浴場とは別に5つの貸切個室源泉露天風呂「万右衛門の湯」があります。宿泊者は空いていれば何度でも利用可能。
豊かな緑に囲まれた露天風呂には、大きなソファベットのある休憩室もあり、湯上りはゴロリと横になって寛ぐことができます。

夜、満天の星空の下で入る温泉も格別でしょう。お湯に星空が映り込み、まるで宇宙遊泳しているような体験ができるかもしれません。

雨天の場合はフロントで編み笠を貸してもらえます。雨の中の露天風呂も、また風情があります。
露天風呂にも無数の湯の花が舞っていました。
貸切個室源泉露天風呂は日帰り利用可能です。
温泉60分+フリードリンク+ラウンジ利用60分で1室8,800円(税込)。1~2名で利用できます。
極上の温泉を楽しめてこの値段は、宿泊することを考えたら、かなりのお手頃価格でしょう。ただし、一度このお湯の魅力にとりつかれたら、次は絶対宿泊したいと思ってしまうかもしれません。
※料金は2024年7月時点での情報です
シーンによって選べる趣の異なる客室
4000坪の敷地の中には、建てられた時代が違う5つの館があり、全部21の客室があります。そのうち、11の客室が露天風呂付き。4000坪に21の客室ですから、1室がとても広く贅沢な造りとなっています。
筆者達が利用したのは、芝蘭荘の若紫。居間と寝室が分かれている半露天風呂つきの客室です。炬燵はすべてのお部屋にあり、7月・8月以外は設置されるそうで、やはり箱根は涼しいですね。

真っ白な布団カバーや枕カバーにも松坂屋のマーク。低めのベッドは寝起きするのがとても楽でした。もちろん寝心地もいうまでもありません。朝、障子をあけて見えた新緑の色が鮮やかで、まるで森の中にいるかのようでした。

かけ流しの半露天風呂。好きな時間に何度も入れます。

部屋着には浴衣と作務衣の用意があり、浴衣は好きな柄がチェックイン時に選べます。

アメニティも充実。シャンプーやコンディショナー、ボディーソープは、バリ島生まれのSensatiaもありました。環境にも優しいボタニカルシリーズです。髪を結ぶシュシュがあるのも嬉しいですね。

ミニバーにはコーヒーやお茶以外に、箱根のハイボールやサイダーなどご当地ドリンクが冷蔵庫の中で冷えていました。こちらも無料でいただけます。

他のお部屋も見学させていただきました。
芦刈荘の姫沙羅はメゾネットタイプ。1階には露天風呂と足湯、2階が居間となっていて、とても人気のお部屋だそうです。

手前が露天風呂、奥が足湯
個人的に次予約するのなら芝蘭荘の空蝉に宿泊してみたい!檜の内湯から見える緑に魅了されました。寒い冬でも、ずっとお風呂に入っていられそうです。

芝蘭荘の空蝉の内風呂
箱根宿当時の食事を現代風に

食事は「お食事処えん」でいただきます。プライベートを重視した落ち着いた半個室になっていて、飲み物はオールインクルーシブのメニューの他に、有料のワインや日本酒も取り揃えてあります。
夕食:宿場会席

夕食は箱根宿としてにぎわっていた頃に振る舞われたお料理を、現代風にアレンジしたオリジナル会席料理「宿場会席」。

最初の旬菜からして、食材から吟味したとても手の込んだものだと伝わります。

たとえばジュンサイ。小ぶりなものほど上級品とされています。
山のイメージのある箱根ですが、実は海にも近く相模湾や駿河湾の新鮮な海の幸も味わうことができ、静岡産の幸海老と、足柄産の山女魚も一緒に楽しめるという贅沢。
三島産の枝豆と長芋・独活の黄身酒盗和え、やわらかく煮含めた真蛸の有馬煮などなど、これだけでスパークリングワインのグラスが空いてしまいました。

お造りには、真鯛、縞鰺、アオリイカ、そして箱根大平台の名水「姫の水」を使用した湯葉。蕩けるような舌触りが絶品です。本鮪の塩麹漬けのねっとりとした食感も美味。日本古来の調味料「煎り酒」でいただくお刺身は、お醤油よりもあっさりとしてて、魚本来の旨味を堪能できました。

メインはかながわブランドに認定されている足柄牛の鉄板焼き。きめの細かい肉質とふんわり甘い上品な脂が特徴です。ここまでに、焼き物や揚げ物をいただき、かなりお腹いっぱいなところにお肉。これはきついと一瞬思いましたが、こってりしていないのでぺろりと食べてしまいました。

〆のご飯はお釜で炊いた穴子と生姜の炊き込みご飯です。ふっくら艶々のお米と香ばしいおこげのビジュアルが美しすぎる。当然、味も申し分ないのですが、ここまでで胃袋がパンパンに…。残った分はおにぎりにしてもらい夜食としました。

デザートは自家製プリンにワインの風味が残る無花果の甲州煮。〆まで完璧だと食事の満足感がグッとアップしますよね。
すべてのメニューを紹介できませんでしたが、この時期旬の駿河湾の桜海老や希少な湘南レモンなど、箱根ならではの地のものが満載で、舌で楽しむ箱根観光といったところでしょうか。
朝食:旅人朝食

朝食はやはり同じく食事処えんにて、旅立つ人へ滋養と癒しをもたらす「旅人朝食」。こちらも江戸時代のメニューを現代風にアレンジしたものです。
箱根の名店「銀豆腐」の桶豆腐は湯豆腐にて。お出汁をかけていただきますが、まずはそのまま、大豆の甘さを感じてください。
自家製納豆は納豆特有の匂いと粘り気が控えめで海外の方にも好評とのこと。籠清の蒲鉾に伊豆天城産の山葵漬け。小田原曽我の十郎梅干しと、名だたる逸品が並んでいます。
一夜干しは相模湾の金目鯛、野菜の旨味が凝縮したような建長五目汁。どれもヘルシーでありながらおいしく、ひとくちごとに体の中からきれいになっていきそうです。

でも、メインはやはり箱根のきれいな水と空気の中で育った自然薯のとろろご飯でしょう。残すのがもったいなくて全部食べてしまいました。とろろと麦飯、その後のデトックス効果もばっちりでしたよ。
※夕食・朝食ともにメニューは季節や仕入れ状況で変わります。
ゆっくり余韻が楽しめる11時チェックアウトが嬉しい

朝食を食べてお部屋で寛いだ後も、お部屋の露天風呂を楽しむ余裕のある11時チェックアウトが嬉しいですね。せっかくなのでギリギリまで上質な時間を満足がいくまで楽しみましょう。
現天皇陛下もお気に入りの旅館。大学時代からご学友のみなさんと一緒に10回以上訪れたそうです。
記念日や両親・祖父母へのプレゼント、特別な日に利用したいとっておきの旅館です。
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この記事を書いたライター

- さとちん
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温泉とご当地グルメを愛するおでかけ&グルメ&旅ライター。 休日や旅先では朝風呂でパワーチャージ! 温泉ソムリエになりました。
温泉ソムリエ,サウナスパ健康アドバイザー,銭湯検定4級,高齢者入浴アドバイザー
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