作成日:2023年05月31日
「中房温泉」楽しみ方ガイド!長野の秘湯で“新湯治”を体験しよう 長野
中房温泉(読み方:なかぶさおんせん)は、長野県安曇野市にある秘湯の一軒宿。北アルプスの麓、標高1,462mの高地にあり、源泉の数は登録分だけでも29本。宿一軒だけで湯めぐりを楽しめ、多くの温泉ファンや登山客に愛され続けています。
また、単に温泉の数だけでなく豊かな自然や地熱資源にも恵まれ、当館では“新湯治”を提唱。日帰り入浴も一部可能ですが、その真価を味わうには宿泊がベスト! そこで今回は、宿泊した際の“中房温泉の楽しみ方”を徹底紹介します。
また、単に温泉の数だけでなく豊かな自然や地熱資源にも恵まれ、当館では“新湯治”を提唱。日帰り入浴も一部可能ですが、その真価を味わうには宿泊がベスト! そこで今回は、宿泊した際の“中房温泉の楽しみ方”を徹底紹介します。
中房温泉とは
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中房温泉は、江戸時代に湯治場として開かれた一軒宿。標高が高いので冬季は休業しますが、春になると飛騨山脈(北アルプス)の表銀座である燕岳へと向かう登山客で賑わいます。また温泉ファンには、日本秘湯を守る会の会員宿としても良く知られた存在です。
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宿としては、大きく「招仙閣」と「ロッジ」に分かれます。招仙閣は、鉄筋コンクリート造の旅館部とでもいうべき存在。玄関をくぐると、山奥の一軒宿とは思えない立派な佇まいで驚かされます。
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一方のロッジは、山小屋風もしくは湯治場風とでもいった質素な佇まい。招仙閣に比べると安価で宿泊できます。
旅館部・湯治部と分かれたスタイルは、東北地方山間部にある湯治場などで見られますが、少しずつ減少傾向にあります。中房温泉は、湯治文化を現代まで引き継いだ貴重な存在と言えるでしょう。
このお風呂は外せない!中房温泉の浴室を厳選7湯
中房温泉の大きな魅力の一つが、“温泉そのもの”です。源泉数は登録分だけでも29本(実際には更にある)。すべて自然湧出の源泉で、高温源泉を加水せずに減温して利用。浴室の数は数え方にもよりますが、おおよそ15以上。すべての浴室で源泉100%かけ流しを実現し、できるかぎり源泉をミックスすることなく単独の源泉を楽しめる様に配慮されています。
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泉質名は、アルカリ性単純硫黄温泉(一部、アルカリ性単純温泉も有り)。柔らかな肌触りと噴気が混ざった硫黄の香りが特徴の泉質です。
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温泉に入る際には湯巡りマップ(上写真)を携帯すると、自分が居る場所と行きたい温泉の場所が分かるので大変便利。チェックインの際、宿スタッフにレクチャーを受けましょう。
また、“浴槽の数が多すぎて、どのお風呂に入ったら良いか分からない”、といった人も多いのではないでしょうか?
そこで、中房温泉で特におすすめしたい浴室を7湯ご紹介します。
1.大浴場
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招仙閣にある混浴内風呂。この棟内のメイン浴室的な存在です。広々とした湯船に源泉が滔々とかけ流され、心身ともに癒されます。また、この浴室はシャワーやソープ類も完備しているので、体を洗うのにも適しています。
※女性専用時間帯が設けられているので、混浴がどうしても気になる方は宿のスタッフに問い合わせてみて下さい。
2.岩風呂
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招仙閣にある混浴露天風呂(女性専用時間帯有り)。洗い場一面に湯が溢れ出す様が、豊富な湯量を物語っています。
中房温泉の中でもツルツル感が比較的強めの泉質で、上質の滑らかな肌触りにウットリ! 筆者的には、中房温泉の中で特に好きな浴室のひとつです。
3.不老泉
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ロッジにある混浴内風呂(女性専用時間帯有り)。この棟内のメイン浴室的な存在であり、中房温泉でも一番歴史のある浴室と言われています。
ここではお湯もさることながら、立派な木造建築に圧倒! 梁むき出しの高い天井を眺めながら湯浴みを楽しめ、豪快な湯浴みを満喫できます。
4.御座の湯
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ロッジにある男女別の内湯。木の温もり溢れた小ぶりなお風呂で、共同浴場やひなびた温泉がお好きな方には特におすすめです。
5.白滝の湯
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中房温泉では、屋外にある混浴露天風呂めぐりも楽しみのひとつ。「白滝の湯」は、中房温泉で最も奥地にあるお風呂(宿玄関から徒歩5~10分程度)。手付かずの原生林に囲まれた中での入浴は格別です。
※女性専用時間帯の設定は有りません。
※白滝の湯への道中は街灯などの灯が全くありません。夜は行かないようにして下さい。
6.湯原の湯
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中房温泉の入口付近にある男女別露天風呂。中房温泉で唯一、日帰り入浴可能なお風呂です(宿泊客は無料)。2つ湯船があり、それぞれ別の源泉を投入。日替わりで男女浴室が交代するので、宿泊客は両方の浴室が利用可能です。
※湯原の湯の入浴時間は17時までなので、宿泊客はチェックイン後の早めの入浴がおすすめです。
7.根羽の湯
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中房温泉では、貸切風呂が充実している点も見逃せないポイント。「根羽(ねば)の湯」はそのうちの一つであり、中房温泉では最も新しい浴室です。ちなみに根羽村から根羽村杉を提供されて造られたお風呂であり、木の温もりたっぷりの浴室である点も魅力的です。
1~2人程度しか入れないお風呂ですが、湯船が小さく湯の入れ替わりが早いせいか、お湯の新鮮さを実感。フレッシュな硫黄の香りと滑らかな肌触りを楽しめます。
1~2人程度しか入れないお風呂ですが、湯船が小さく湯の入れ替わりが早いせいか、お湯の新鮮さを実感。フレッシュな硫黄の香りと滑らかな肌触りを楽しめます。
天然の岩盤浴やサウナまで楽しめる!
中房温泉では単に温泉入浴するだけでなく、様々な観点で温泉資源を有効活用しています。
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「地熱浴場」では、天然の岩盤浴が楽しめます。利用の仕方は、すのこの上に備え付けのゴザを敷いて寝っ転がるだけ。特有の噴気の香りが温泉情緒を盛り立ててくれます。しかし天然の地熱であるため、場所によっては熱すぎる所もあり、場所選びには注意しましょう。
また周辺はほとんど人工の光が無く、空気も大変澄み切った場所なので、晴天の夜は星空や月明かりが楽しめる点も見逃せません。
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また「蒸し風呂」(上写真。左建物が女性用、右奥建物が男性用)では、天然のサウナが体験可能。温泉蒸気を利用したミストサウナです。単に汗をかくだけでなく、蒸気を吸うことで身体の内外から温まる効果が期待できます。
ここでは5分ほど天然サウナに入って汗をかき、その後は外気浴で休憩。それらを数回繰り返すことによって、最近の流行でもある“ととのう”を体感できます。
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また、中房温泉では飲泉場(上写真左側の樽)も設置されています。気になるお味は、ゆで卵の様な硫黄の味が多少しますが、比較的飲みやすい味です。
上写真の右2つは天然の湧水。ヒンヤリと冷たい上、のどごしが柔らかくて大変美味。市販のミネラルウォーターを買うのがもったいない程で、入浴前後の水分補給にピッタリです。また、夏には自家製のキュウリやトマトが冷やされています。
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他には、夏季限定(6月~10月中旬)になりますが、温泉プールが利用可能。国の登録有形文化財にも登録された歴史ある施設です。
実際に水泳や歩行浴が楽しめ、それを源泉100%かけ流し温泉で利用できるのは、この上無く贅沢なこと。晴天の夜には流れる星や月明りも楽しめます。
焼山で地熱料理にチャレンジ
中房温泉の楽しみ方として、決して見逃せないのが「焼山」。地面から蒸気が噴き出し、天然の地熱料理が楽しめます。筆者もチャレンジしてみました!
場所は、宿から山手にあります。上り約20分・下り約15分程度のハイキングです。道中は結構な勾配で足元も悪い箇所があるので、スニーカーの様な運動靴が望ましいでしょう。
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上写真は、焼山へ行く道中にある「湯元大弾正」。中房温泉を代表する地熱地帯で、ここからも幾つかの源泉が浴室へ引かれています。
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宿玄関からゆっくり歩いて約20分、焼山へ到着しました!
この一帯は蒸気が噴出するため、所々草木生えません。地熱料理は地面に穴を掘り、食材を熱して作ります。
この一帯は蒸気が噴出するため、所々草木生えません。地熱料理は地面に穴を掘り、食材を熱して作ります。
![](https://static.onsen.nifty.com/terme/230528688418/5dd60c98-6723-48b2-9b2f-412201369bab.jpg)
食材は事前に宿で調達。写真左から、ソーセージ・卵・ジャガイモです。新聞紙などで包まれているのは、食材に土砂が付着しないようにするためです。
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食材はさらに土のう袋に入れて(どこに埋めたか分かりやすくするため)、スコップで地面に穴を掘って埋めます。所要時間は、卵・ソーセージは10~15分程度、ジャガイモは20~30分程度地熱で蒸すのが目安です。
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上写真は、蒸し上がったゆで卵。温泉玉子の中にはしっかりと硫黄の味が染み込んだものもありますが、この焼山で蒸したゆで卵は比較的癖の無いあっさり味。ソーセージやジャガイモも適度にホクホクと蒸し上がって、とても美味しく頂けました!
まとめ。中房温泉の“新湯治”とは
以上、中房温泉の楽しみ方をご紹介させて頂きました。
このように中房温泉では単に温泉入浴するだけでなく、この地ならではの大自然・天然サウナや地熱浴場・焼山で地熱料理を味わう…など多彩な楽しみ方を満喫できます。
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一言で言えば、大地のエネルギーを様々な方法で感じ取れる点が、中房温泉最大の魅力でしょう。
ちなみに上写真は、中房温泉の「膠状珪酸および珪華」(こうじょうけいさんおよびけいか)。国の天然記念物に指定されている自然が生み出した大地の息吹です。
ちなみに上写真は、中房温泉の「膠状珪酸および珪華」(こうじょうけいさんおよびけいか)。国の天然記念物に指定されている自然が生み出した大地の息吹です。
![](https://static.onsen.nifty.com/terme/230528688418/41f070db-b937-4559-b5c2-db54f6cb036d.jpg)
まるで温泉ラリーの様に、慌ただしく湯巡りする方も中にはいらっしゃいますが、それは中房温泉本来の楽しみ方とは言えません。中房温泉が提唱する“新湯治”とは、非日常の体験を楽しみながらゆっくりと時間を過ごし、本来の自分自身を取り戻すことです。
湯治とは元々、温泉に入浴して病気を治療すること。しかし、それは単に病気の人だけでなく、むしろストレスにまみれた現代人にこそ必要と言えるでしょう。
古から伝わる湯治は1~2週間の長期療養を必要とするため、時代の流れと共に少しずつ減少傾向にあります。しかし中房温泉では大地の恵みを最大限に生かし、慌ただしく生きる現代人にも受け入れ可能な「新湯治」文化が根付いています。心身をリフレッシュしたい方とって、“最高の癒し宿”といっても決して過言ではないでしょう。
中房温泉の基本情報
中房温泉
住所:長野県安曇野市穂高有明7226
電話番号:0263-77-1488
※冬季の電話番号 0263-77-2008
営業期間:4月下旬から11月下旬
アクセス:
【車】長野自動車道 安曇野ICから車で約60分
【バス】JR穂高駅から中房線乗合バスに乗車(乗車時間約55分)、終点中房温泉バス停下車
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![権丈 俊宏](/cms_image/onsen/terme-writer/211207820433/niftyprofilephoto465487050334456205 (1).jpg)
- 権丈 俊宏
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良質の温泉を求め、全国を旅すること20数年。特技は、自らの五感を駆使したオリジナルの泉質分析。“温泉は数より質”がポリシー。一級建築士。
温泉マイスター,サウナ・スパ健康アドバイザー,一級建築士,ソニー・イメージング・プロ・サポート会員
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