日本最北の温泉郷「豊富温泉」世界的に希少な天然オイルバスを徹底紹介【北海道】 北海道

豊富温泉(北海道天塩郡豊富町)は、日本最北にある温泉郷。温泉に石油成分を含有することで知られており、世界的にも大変希少な泉質です。また、油分が乾癬やアトピー性皮膚炎に特効があると言われ、遠隔地ながらも全国から湯治・療養目的で多くの人々が訪れます。
今回、四半世紀以上に渡り全国の温泉を巡り続ける筆者が現地体験し、独自の視点で豊富温泉の“天然オイルバス”をレポート。温泉地概要や日帰り入浴施設をはじめ、宿泊施設・アクセスまで徹底紹介します!
今回、四半世紀以上に渡り全国の温泉を巡り続ける筆者が現地体験し、独自の視点で豊富温泉の“天然オイルバス”をレポート。温泉地概要や日帰り入浴施設をはじめ、宿泊施設・アクセスまで徹底紹介します!
豊富温泉とは
豊富温泉のはじまりと現在
豊富(とよとみ)温泉は、大正時代末期に石油の試掘を行った際、天然ガスと共に湧出した温泉地です。昭和初期には草葺(くさぶき)小屋を建て、地元の人達が温泉として利用。その後は川島旅館など8つの旅館が開業し、温泉街が形成されました。

現在(令和)の豊富温泉街
平成4年(1992年)には環境省から「国民保養温泉地」の指定を受け、令和の現代においても全国から湯治客が温泉療養のために訪れます。
豊富温泉街マップ。 画像提供:豊富町役場商工観光課
また、周囲は広大な牧草地が広がり、避暑地としても知られる地域。日本最北の国立公園として有名な「利尻礼文サロベツ国立公園」の玄関口でもあり、豊富温泉はその観光拠点としても親しまれています。
稚咲内海岸から望む利尻富士。画像提供:豊富町役場商工観光課
豊富温泉の泉質&効能
温泉街中心部にある源泉タンク。画像提供:豊富町役場商工観光課
豊富温泉最大の特徴は、泉質そのものでしょう。源泉井戸から湧出する温泉には石油や天然ガスが含まれているために油分を含有。世界的にも大変珍しい“天然オイルバス”です。
豊富温泉で、現在浴用で利用されている泉質は2種類。「含ヨウ素-ナトリウム-塩化物泉」と「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉」です。前者は5本の井戸から湧出する源泉の混合、後者は2本の源泉の混合です。
濃厚な塩分と油分を含む温泉。画像提供:豊富町役場商工観光課
いずれも人間の体液よりも濃い高張性の食塩泉のために温泉成分が体内に浸透しやすく、保温効果に優れます。また、温泉に含まれる油分が皮膚表面を覆い、保湿効果にも優れます。特に乾癖(かんせん)※やアトピーに関しては、油分に含まれるタールが抗炎症作用を発揮すると言われています。
※乾癬(かんせん)とは、免疫の異常により皮膚が炎症を起こす病気のこと
町営温泉入浴施設 ふれあい温泉センター(温泉編)

ふれあいセンター 外観
「ふれあいセンター」は、豊富町が運営する日帰り入浴施設。温泉街の中心部に位置し、まさに豊富温泉の中核をなす施設です。
単に温泉に入浴するだけでなく、レストラン・売店・無料休憩所も併設。地元の方をはじめ、湯治療養目的や温泉ファンまで、幅広い層に利用されています。

浴場入口
温泉は2ヶ所の浴場を設置。湯治客用の浴場と一般客用の浴場に分かれ、それぞれ趣が異なります。
源泉は、湯治用・一般客用も同じで、いずれも源泉かけ流しで提供。泉質名は「含ヨウ素-ナトリウム-塩化物泉」。本文最初の方でも申しましたが、多量の食塩と油分を含む点が特徴で、温泉通が“アブラ臭”を呼ぶほどの個性的な香りを放つ超濃厚温泉です。同時に、美肌成分で知られる重曹、消毒作用が期待できるメタほう酸も含有しています。
また、あまり語られませんが、豊富温泉の源泉には植物起源の有機質からなるモール成分も含有。石油臭に混ざって、ハーブの様な清々しい植物性のアロマも同時に感じられ、不思議と心和みます。
湯治客用の浴場
湯治客用と一般客用浴場の大きな違いは、湯治客用浴場では朝のオープン開始時に湯口の周りにオイルフェンスが設けられ、その中に源泉から採取された成分の濃い油分が投入されている点。多くの湯治客は、その濃厚な油分を顔などに塗り付けています。
筆者の場合は大きな皮膚トラブルがありませんが、入浴しただけでも油分が体全身をふんわりと包みこみ、浴後は驚くほどの肌の保湿効果を実感。単に湯治療養だけでなく、美肌を目指す方にもおすすめです。
※オイルフェンスは、男性浴室のみに設置されます。
湯治客用の男性浴場。画像提供:豊富町役場商工観光課
また、湯治浴場では30度台のぬるめの温度で提供されている点にも注目。浸透した温泉熱と成分が油分の膜によって体内に封じ込められ、体が火照ったように温まりやすい泉質ですが、ぬるめなので比較的体に負担をかけずに入浴できます。
さらに浴場には、別に原油が入った容器も設置。それを皮膚に塗り付けると乾癬に効くとされ、多くの湯治客に利用されています。
一般客用の浴場
一般客用の浴場は、露天風呂こそありませんが、窓が広く取られた大きめの浴槽を設置。お風呂の温度は42度前後の適温やや熱めで、短時間でスカッと汗をかけます。
一般客用の女性浴場。画像提供:豊富町役場商工観光課
また、湯治客用と一般客用の浴場は、1回の入浴料金で両方とも入浴可能。いずれの浴場も日本では唯一無二の貴重な泉質と言え、初めての方なら両方の浴室を入り比べて、お好みの浴室でじっくりと楽しむのがベストでしょう!
あえて違いを言えば、豊富温泉本来の温泉パワーをより体感したいなら湯治客用浴場、特有の香りがキツすぎる(マイルドな方が良い)と感じる方なら一般客用浴場が良いでしょう。
町営温泉入浴施設 ふれあい温泉センター(ランチ編)
温泉を存分に満喫した後は、やっぱりお腹も満たしたくなるもの。併設のレストラン「味彩(あじさい)」でランチを頂きました。

レストラン「味彩」
メニューの一番人気はジンギスカン。他には麺類・丼物・カレーなどありますが、筆者は北海道名物である「豚丼」を注文してみました。

今回注文した「豚丼」
厚めにカットされた豚肉には、砂糖と醤油甘辛みがしっかりとダシとして染み込み、深いコクのある味わい。揚げ物ではないので脂っこさは皆無で、ライスとの相性も抜群。大変美味しくいただきました!
宿泊施設の温泉もご紹介!
豊富温泉では、数軒の温泉付きホテルや旅館があります。他に長期滞在向けの安価な宿泊施設もいくつかあり、温泉はふれあいセンターに通って利用します。
今回は、日帰り入浴可能な宿泊施設3軒の温泉を簡潔にご紹介しますね!
川島旅館

川島旅館
ふれあいセンターの道路をはさんで真向かいにある旅館。豊富温泉では貴重な露天風呂・貸切風呂があります。内湯には非加熱かけ流しの浴槽も設置。源泉はふれあいセンターと同一ですが、すべての浴槽にて源泉かけ流しで提供。女性向きの洒落た小宿。
ニュー温泉閣ホテル

ニュー温泉閣ホテル
川島旅館の真向かいにある旅館。大浴場は、大きな加温かけ流し浴槽が一つあるだけのシンプルな浴室。源泉はふれあいセンターと同一。安価で温泉付き旅館に泊まりたい方向け。
ホテル豊富

ホテル豊富
温泉街中心部から少し離れた場所にあるホテル。ここだけ使用源泉が異なります。泉質名は「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉」。重曹成分を比較的多く含むせいか、他に比べ若干マイルドなお湯。加温かけ流し浴槽に加え、サウナと水風呂も設置。
豊富温泉へのアクセス
豊富温泉は日本最北端に近くに位置するため、道外の方は飛行機を使ってアクセスすることが多いでしょう。いくつか行き方はありますが、主に稚内空港と新千歳空港からのアクセスが一般的です。
稚内空港からのアクセス
最寄りの空港は、稚内空港です。羽田空港からの直行便が一日一便あるので、首都圏近郊の方には便利なルートでしょう。
<公共交通機関の場合>
1.稚内空港から空港連絡バスに乗車し、稚内駅前ターミナルで下車(下車約30分)
2.JR稚内駅から宗谷本線に乗車後、JR豊富駅下車(乗車時間約45分)
3.JR豊富駅から沿岸バス 幌延留萌線に乗車し、「豊富温泉バス停」もしくは「ふれあいセンターバス停」で降ります(乗車時間約10分)

豊富温泉バス停
<車・レンタカー利用の場合>
稚内空港から車で45~60分ほど(約47km)で到着します。
新千歳空港からのアクセス
全国各地からの航空便が多いのは、新千歳空港です。
<公共交通機関の場合>
1.新千歳空港から電車(快速エアポート)で札幌駅下車(乗車時間約40分)
2.札幌駅から沿岸バス 特急はぼろ号に乗車後、豊富温泉バス停で降ります(乗車時間約5時間)

新千歳空港
<車・レンタカー利用の場合>
新千歳空港から車で約5時間ほど(約310km)かかります。
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この記事を書いたライター
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- 権丈 俊宏
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良質の温泉を求め、全国を旅すること20数年。特技は、自らの五感を駆使したオリジナルの泉質分析。“温泉は数より質”がポリシー。一級建築士。
温泉マイスター,サウナ・スパ健康アドバイザー,一級建築士,ソニー・イメージング・プロ・サポート会員
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