千と千尋の神隠しの世界を堪能できる宿
[群馬県] 積善館
今回の温泉探訪記ガイドはこの人
趣味は食材採取の旅に出ること。それに温泉が付けば完璧。お風呂はちょっと熱めが好きだが、すぐのぼせてしまうタイプ。
群馬県の四万温泉に、『千と千尋の神隠し』のイメージモデルの一つとなったといわれている宿があるらしい。
実際に行ってみると、入口に掛かる赤い橋、日本最古の湯宿建築、近代化遺産に登録された温泉、振り返るのが怖くなるトンネルなど、確かにそこには幻想的な世界が広がっていた。
重要文化財に泊まれる湯治宿
群馬県の四万温泉に開業して300余年、現存する日本最古の湯宿建築といわれているのが、積善館本館。この本館は群馬県の重要文化財に指定されている貴重な建物なのだが、湯治宿として誰でも利用する宿でもある。
この宿には、あの宮崎駿監督が『千と千尋の神隠し』の制作をする前に泊まっており、印象深い独特の世界観を作りあげたイメージモデルの一つとなったのではといわれている場所。
そう言われてみると、この赤い橋や外廊下に囲まれた建物など、なんとなく見覚えがあるような気がするかな。
大正ロマネスクの温泉、『元禄の湯』
昭和5年に建てられた『元禄の湯』は、広い空間の中に5つの湯舟を並べた独特の形状で、誰もが「ええ!」と驚くこと間違いなし。外観から想像した純和風の温泉かと思いきや、予想外の大正ロマネスク。
私が訪れたのはちょうど正午くらいだったが、アーチ型の大きくてかわいい窓から入ってくる自然光と、教会を思わせるような高い天井で、風呂に入る前からすでに気持ちがいい。
そして肝心のお湯は嬉しい源泉掛け流しで、透明でサラッとしているけれど、やはり体の温まり方が家の風呂とは段違い。同行したカメラマンに言わせると、「見た目よりも力のある温泉」とのこと。
これぞ湯治宿という客室
本館の客室は、これぞ湯治宿という感じのシンプルなものだが、「なにもしない贅沢」を味わうには、最高のシチュエーションといえるだろう。温泉は『元禄の湯』以外にも立派な露天風呂や混浴の岩風呂などがあり、退屈することはなさそうだ。
ちなみにこの積善館は斜面に沿って建っており、上に行くに従って、本館、山荘、佳松亭と建て増しがされているので、予算や目的に応じて、宿泊先を選ぶことができる。
怖くて振り返れないトンネル
この宿で『千と千尋の神隠し』をイメージさせるのは、赤い橋や建物だけではない。本館から山荘へと続く館内の『浪漫のトンネル』が、またすごいことになっているのだ(館内にトンネルがあるっていう時点で異空間なのだが)。
裸電球に照らされた薄暗いトンネルは、現実世界に戻るために振り返らずに走り抜けなくてはいけないという、あのシーンで出てくるトンネルの雰囲気にそっくり。そして、その先にあるエレベーターのデザインも、また味わい深いのである。
温泉街には懐かしのスマートボールが楽しめる遊技場や、無料で外湯を楽しめる公衆浴場などもあり、すっかりこの四万温泉が気に入ってしまったのであった。