みんなでつくる温泉探訪記のご紹介
「みんなでつくる温泉探訪記」って温泉に行く前から疑似体験として頭の中で温泉旅行ができると思うんです(本文から抜粋)
ニフティ温泉での新コーナー「みんなでつくる温泉探訪記」のリリースを記念して、ニフティ温泉編集部では精力的な活動を続ける三温士(さんおんし:編集部言葉)にインタビューを実施!
独自の温泉論に始まり、「みんなでつくる温泉探訪記」が担っていく重要性、必要性、また温泉ソムリエとして足跡を残し発信していくことが温泉愛好家として尊いことだということを熱く語っていただきました。
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いきなりですが温泉は楽しいものですか?
一同:楽しいですよ!(笑)
編集部:どんなところが楽しいポイントなんですか?
郡司:たとえば「つるつるぬるぬるする温泉」だとか、野原にそのまま沸き出している「野湯」だとかですね、温泉毎にそういう分類をしています。
それが温泉の楽しみの一つかなと。
そうすると自分の中でランキングをつけたくなって、これが一番ぬるぬるだとか、つるつるだとか。色にしても赤、青、緑、白、黒とか、いろいろあるので、どこが一番濃いかな、と楽しいですよ。
編集部:これはスタンダードな温泉の楽しみ方で正解でしょうか?
遠間:スタンダードというより、かなりレベルの高い楽しみ方です(笑)
温泉をテイスティング
遠間:昔から飲泉という温泉を飲むという行為はあるんですけれど、テイスティングっていう発想はなくて、おそらく郡司さんが日本の第一人者ですよね。
編集部:それはレベルが高いですね。
郡司:すごく研究したんですよ。徹底的に飲んで、分析表を見て、こういう分析表の時はこういう味だっていうのを。そうすると飲む前から分析表を見ると味の想像がつきますね。食塩泉ならしょっぱいし、酸性泉のH+っていう水素イオンが1ミリ超えてると酸っぱくて、それが6とか7ミリになっている草津温泉なんかはかなり酸っぱいとか。
編集部:テイスティングはするものなんですか?
遠間:絶対飲んでみますね。
石井:私は湯口で香りを確かめてから、源泉をなめてみて味や濃さを確かめます。
郡司:指宿(いぶすき)の温泉は美味しいですよ。すましだし汁みたいな味がします。
石井:私が一番美味しいと思ったのは、山梨県の奈良田温泉白根館。
硫黄と塩の温泉なんですけど、硫黄臭がだし汁のようであって、昆布茶のようであって、さらに塩加減がちょうどいい。しかもその温泉で朝「源泉がゆ」を炊いてくれるんですけど、またそれが美味しいんですよ。
遠間:私は自分のところ(赤倉温泉)になっちゃいますけど美味しいと思います。それとは別にですね、マグネシウムが入っている温泉は苦いので基本的にまずいんですが、片山津温泉では、その源泉に豆乳に溶かすんです。温泉そのものはちょっと苦いなって思うんですけど、にがり成分があって豆乳をいれただけで豆腐になります。そうすると中和されて、美味しいんです。普通に考えると豆腐屋さんが作った豆腐の方が美味しいはずですが、これが温泉なんだと思うと美味しく感じるんです。
編集部:…レベルが高すぎますね。
分析表と体感で温泉を知る
遠間:分析表を読むとだいたい味とか色とかどんな温泉なのか分かります。五感って絶対大切だと思うんですけど、もうひとつヒントになるのは分析表だと思います。
石井:そうですね。私の場合だと分析表を見れば、大体入ると肌がどうなるか分かります。
編集部:そうなるには温泉ソムリエの座学ではまだ全然足りないんですか?
石井:実践あるのみだと思います。分析表の見方を勉強できるのが温泉ソムリエ講座で、実践と講座の違いは自分で体感しないと。私の場合は肌で知るし、郡司さんの場合は舌で知るとか。みんなが共通してするのは、さわったりとか、匂いをかいだりとか体感することですね。
郡司:匂いも重要ですね。硫黄泉は硫黄の匂いがしますけど、その他の温泉もですね、鉄サビの匂いがしたり、香ばしい「えびせん」みたいな匂いがしたり。「えびせん臭」と呼んでます。
石井:ネーミングが最高に面白いですよね。
極めれば温泉に入る前から温泉が分かる
遠間:あとは空気感ですよね。たとえば脱衣場に入るとかけ流しかそうでないか大体分かります。
石井:なんか良さそうだな、っていう予感は宿の入り口から感じることができます。
郡司:浴槽を見るとすごく湯を入れているのに、まったくあふれ出ていないっていうのは「循環だな」っていうのが分かる。
編集部:お湯につかる前から温泉は始まっているんですね。
石井:そうです。あとは逆に湯口から出していなくても、下から源泉を入れてる所とかもあって、逆にどれだけ湯口から出ているかというよりは、流れているかっていう方が結構重要。
編集部:足元湧出ってやはりいいんですか?
郡司:源泉にそのまま浸かれるというのは、天然記念物的な状況であって、源泉に建物を建てて、そこで入浴できるようにしてしまうのは非常に珍しいことです。温度も湯量もなくちゃいけないんで、非常にぴったりと条件が合わないとできない。全国に50カ所くらいありますけど、非常に貴重な温泉だと思います。
石井:結局温泉って生きてる地球からそのまま出てきている生きている水なので、それにそのまま触れられるっていうのは、結局そのまま地球に入れるっていうのと同じことなんです。
遠間:足元湧出は今の話のように素晴らしいです。温度がちょうどいいのでそのまま入れます。ただし時間を置いた(冷ます)方がいい温泉もあるんですよ。これは自分の所のPRになってしまいますが赤倉温泉。温泉街から6キロ上に源泉があり、その源泉の温度は51.1度です。足元湧出のようにそのまま入れる温度ではありません。
編集部:熱いんですね。絶対に入れない温度です。
遠間:それがですね、これを「奇跡の温泉の旅」とカッコよく呼んでいて、6キロパイプの中でもまれてくると、まさに天然湯もみのごとく入りやすくなって、かつ42度ピッタリになって届くんですよ。これもひとつの奇跡なんですね。そういう意味でいうと、足元湧出も最高であればある程度空気に混ざってしまったものもいい温泉であるということで、そう思うとどの温泉も楽しめるんですね。
石井:温泉入浴では「気持ちいい温度だな」っていうこともすごく大事。それが日本人の入浴習慣からすると大体40度から42度くらい。それより源泉の温度が高ければ、水でうめるか、熱交換などで冷まして入れるか、あるいはゆっくり少しずつ入れて湯船の中でちょうどいい温度にするなどの方法をとらなければならないので、源泉温度が熱い温泉地が源泉かけ流しで利用する場合のご苦労というのもあるんです。
遠間:ぬるいからこその奇跡っていうのもあります。二酸化炭素泉と放射能泉っていうのはぬるいっていう傾向にあるんです。新潟県の栃尾又温泉は、大体源泉の温度が37〜38度でぬるいんですよ。それが浴槽に注がれると34度から37度の不感温帯っていう体温に近い温度になる。しかし一番消費カロリーが少ないのでどれだけでも長湯できてしまいます。
石井:温泉に良い悪いっていうのはないんですよ、自然のものだから人間と同じように一人一人全部違って、誰が良くて誰が悪いってないんです。温泉は生きていますので全てが唯一無二。優劣はありません。だからこそ、わざわざ旅に出かけて、そこにしかない温泉との出会いを楽しむわけですね。
温泉の素晴らしさを伝えるには?
編集部:温泉の情報を誰かに伝えるときは何を書けばいいですか?
郡司:たとえば有馬温泉なら真っ赤ですごい塩っからい。鉄分のおかげで釘のような匂いもします。
編集部:色と味と匂い、あとは成分表みたいなことになるんですか?
遠間:まあそうですね。やっぱりアプローチとして一番得意分野なんで僕は温泉分析表を見ます。特に際立って多い成分とか、成分表の特徴を書きます。全部見るとわけ分からなくなるので、これが多いんだなという特徴をピンポイントで伝えます。
石井:私はどうだったかという自分の感覚を書きます。入ってどういう気持ちがしたか、どんな感触で、どういう風に気持ちがよかったか。あとは目に見える景色とか、どんな雰囲気のお風呂で、どこが素敵だったか。何を書かなければいけないとか、そういうマニュアルってないと思うんですよ。自分独自の視点をどれだけ伝えることができるかも大切だと思います。
郡司:同じ泉質でもやっぱり展望がいいとか、海岸で海のしぶきが当たるぐらい海岸に近いとかそういう雰囲気によってもずいぶん印象が変わっちゃうんですよ。
石井:たぶん同じお風呂に入って同じことを書いてくださいと言われたとしても、郡司さんが書くのと、遠間さんが書くのと、私が書くのと、きっと内容が、もちろんある程度データ的なものは同じ部分を押さえると思いますけど、違ってくると思う。それがやっぱり楽しいところですよね。
野湯に行こう!
編集部:今まで入った温泉は記録に残したりしていますか?
郡司:私は全部結構細かく残しています。厚いノートがもう4冊分になっています。アナログで始めたんでもうデジタル化できないくらいの量で今でもアナログで書いています。
石井:いいですね。宝物ですね。
郡司:行った温泉地数は4,790カ所くらいです。
遠間:温泉地である温泉の正式なカウントだと3,200くらいしかないんです。
石井:じゃあそれ以外は「野湯」とかそういうところですよね。
郡司:そうですね。そうなります。
遠間:4,790カ所なんてとてつもないスゴい数なんですよ。
編集部:野湯っていうのは温泉の中ではもう認知された文化の一つなんですか?
石井:「野湯」っていう言葉が浸透して、切り開いたのは郡司さん。
編集部:なんかちょっとワイルドで、癒しを求めにいく感じではないですよね。
郡司:そうですね、ちょっとした登山の装備が必要。行くときドキドキします。
石井:郡司さんでもドキドキするんですね。それはどういうドキドキですか?
郡司:迷うかもしれないじゃないですか。果たしてここから情報では45分って書いてあるけど、それで着くのかなとか。やっぱりちょっと心配になりますよね。
石井:そうなんですね。
郡司:それと私は温泉の数をカウントするのに、自分ですごくシビアにしているので、その場で入らないとカウントしないんですよ。ペットボトルで持って帰ってきたりだとかはダメ。側溝(そっこう:排水のために道路や線路のわきに設ける溝)に流れてたら、側溝に入ります。
石井:それは郡司さんじゃないとできないですよね(笑)
郡司:林に溜まっていれば林で入る。
遠間:道路の脇で車が走っているのに、郡司さんは入っちゃう。あれ、どうしたって出入りする時は見えるだろうっていう。もう面白いんですよね(笑)
編集部:もうレベルが高すぎます!(一同:笑)
自分の視点を書いて欲しい
遠間:郡司さんの記録はすごいと思うんですよ。分からないことがあって聞くと大体あの温泉地だっていうのが分かる。逆に僕はそういう方々がいらっしゃるおかげでメモを取らない、写真も撮らないというのがむしろポリシーですね。撮らないといけない、と思うと温泉が味わえないんでやっぱりゆっくり味わうために。
郡司:最近それがね非常にプレッシャーになっちゃってて疲れるので、もうそろそろ写真もいいかなっていう気になってきちゃった。
石井:なんかでも、ここまでやってくるとどうしても一応撮っておくかってなっちゃいますよね?
郡司:なっちゃうんですよね。
編集部:メモも書くんですよね?
郡司:写真もがんばって撮って、帰ってきてから一応800字を目標にコメントを書くんです。色とか匂いとか温度とか分析表の数値も入れて。
石井:郡司さんのようにデータ化してストックを残すことのできる性格の方はいいんですけど、私なんかは帰ってくるともう次の旅のことを考えたくなるんで、ブログやFacebookにその場で上げちゃう派なんですよ。
それだと旅先でスマホで気軽に写真一枚と、そのとき自分の思ったことをそのままポンと上げることができるんで。
後でまとめてがっちり書こうっていう風に思うとハードルが上がって、だんだんつらくなって。
遠間:僕は逆に前のを思い起こしてブログとかに書くこともあります。するとその温泉に行った時の感動が、頭で三次元的に思い出されて、またその温泉に行った気分になる。だからある種瞑想状態。温泉に行ってないのにその温泉の癒し効果が戻ることがあるんです。
石井:それもいいですね。
遠間:そのときには、映像で浮かべて、その映像から文章に直すっていう作業です。そういうのって非常に書く意義があるなって思うんですよね。
編集部:いろいろな書き方があっていいですよね。同じ温泉に行っても人それぞれ感じることも違うわけですから。
遠間:それも「みんなでつくる温泉探訪記」のひとつの楽しみかなって。
石井:データはもちろん書きますが、それ以外はぜひ自分の視点での温泉レポートを書いて欲しいですね。
編集部:そうすると見る方も自分の視点と合う方の「みんなでつくる温泉探訪記」を追うようになりますよね。
遠間:その通りですね。そうするとお互いね、ファンとか教祖みたいなのが出てくるかもしれない(笑)
三温士から一言ずつ
郡司:温泉は非常に楽しいものです。日本は各地に温泉があります。温泉を趣味にするということは一生楽しめるということ。色、味、匂いなどを観察すると温泉の違いが一個ずつ理解できるようになり、非常に含蓄(がんちく)がある良い趣味になると思います。一生温泉を趣味に持ち続けて下さい。
石井:温泉はぜひ五感で楽しんでいただきたいと思います。さわること、それから匂いを感じること、そして肌で味わう、周りの環境を楽しむ、そういう五感をどんどんどんどん旅で刺激するといいと思います。脳がいつも若々しくいられるということもありますので、美と健康、アンチエイジングにもつながります。自分がずっと美しくいられるためにもぜひ、温泉を五感で楽しんでそれを書いていただければと思います。
遠間:まずは日本人に生まれておめでとうございます。日本に住んでいておめでとうございますと言いたいです。やっぱり温泉の数からしても日本がトップですよね。日本に住んでて温泉に行かないということはまずないだろうと思います。そういう時に、こういう「みんなでつくる温泉探訪記」って、温泉に行く前から疑似体験として頭の中で温泉旅行ができると思うんです。仕事から離れるとそれだけでも脳は活性化しますし、免疫力が上がると思うんです。
その上で温泉のよさを知って本当に温泉に行けば、これはもう効果倍増ですからぜひ「みんなでつくる温泉探訪記」を使ってください!
編集部一同:ありがとうございます!
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遠間 和広(とおま かずひろ)
温泉ソムリエ協会 家元
株式会社船井総合研究所で経営コンサルタントを務めた後、実家のある温泉地に帰り、温泉業界に入る。
平成14年11月に温泉ソムリエ制度を立ち上げ、温泉ソムリエ認定セミナーの講師と務める。またメディアなどを通し、温泉の魅力と正しい入浴法の普及につとめている。
郡司 勇(ぐんじ いさむ)
温泉研究家 一級建築士
1960年生まれ。東京理科大学 工学部建築学科卒。27年以上続けている温泉巡りが、平成25年7月現在で4,790温泉地、約7,000施設を数える。「TVチャンピオン」全国温泉通選手権で3連覇を達成した。テレビや雑誌、講演などで泉質重視の温泉評論を展開し、高い評価を得ている。
石井 宏子(いしい ひろこ)
温泉ビューティ研究家、株式会社温泉ビューティ研究所 代表取締役
温泉の美容力を研究する日本でただひとりの「温泉ビューティ研究家」。
トラベルジャーナリストとして取材執筆・テレビ出演、講演など年200日温泉地を旅する。4冊目の著書「地球のチカラをチャージ!海温泉 山温泉 花温泉」を出版。
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