温泉ライターはどうやって浴室写真を撮っている!? 取材現場の裏側を公開 全国

こんにちは! ニフティ温泉ライターの権丈です。
ダイナミックな自然に囲まれた露天風呂、歴史ある名宿の風格たっぷりな内湯、生活感あふれる共同浴場のお風呂、豪快に源泉が投入される姿…。皆さん、そういった写真を見ると、すごく温泉に行きたくなりませんか? 筆者自身、その場の雰囲気が伝わる素敵な温泉写真を見ているだけで半分温泉に行った気分になれて、心がホッと癒されます(笑)
そこで今回は、温泉ライター歴10年超の筆者が取材撮影において、“どうやって浴室写真を撮っている!?” かを公開。温泉写真は上手なカメラマンが撮るから良い写真になるとは限りません。“温泉撮影はテクニックよりも大切なことがたくさんある!”。現場の裏側を解説します。
ダイナミックな自然に囲まれた露天風呂、歴史ある名宿の風格たっぷりな内湯、生活感あふれる共同浴場のお風呂、豪快に源泉が投入される姿…。皆さん、そういった写真を見ると、すごく温泉に行きたくなりませんか? 筆者自身、その場の雰囲気が伝わる素敵な温泉写真を見ているだけで半分温泉に行った気分になれて、心がホッと癒されます(笑)
そこで今回は、温泉ライター歴10年超の筆者が取材撮影において、“どうやって浴室写真を撮っている!?” かを公開。温泉写真は上手なカメラマンが撮るから良い写真になるとは限りません。“温泉撮影はテクニックよりも大切なことがたくさんある!”。現場の裏側を解説します。
まずは、取材(撮影)&掲載許可が必要
温浴施設の記事を取材するにあたって、筆者の場合はまず最初に取材(撮影)許可・掲載許可をとるケースが一般的です。そこで施設管理者(例:施設のオーナー・社長・支配人などの責任者)の許可を得ることが大前提。入浴客が裸で過ごす浴室ではトラブルが起きやすいこともあり、浴室撮影には細心の注意が必要です。

黒川温泉「耕きちの湯」(熊本県南小国町)の女性大浴場。施設管理者立会のもとで撮影
一例をあげると、筆者は男性ですので女湯を撮影する場合は、女性スタッフに浴室に人がいないか事前に確認してもらったり、撮影中は見張りの人を付けて女性の入浴客が入ってこないように監視していただくこともあります。
取材現場における浴室写真の撮り方
成功の半分以上は事前準備で決まる!
無事取材・撮影・掲載許可が取れたら、筆者は最初に取材する温浴施設を公式サイトなどで調べます。具体的に何を調べるかというと、どういった特徴のある施設なのか・何が魅力の施設なのかをまず調べます。施設そのものを理解していないと、何を撮影すべきか分からないからです。

伊予の湯治場 喜助の湯(愛媛県松山市)の男性大浴場。営業時間終了後の深夜2時から撮影
さらに細かく言えば、『この浴室はどの時間帯にどのアングルから撮れば魅力が伝わるか』など、公式サイトの画像などを参考にしながら頭の中であらかじめイメージします。サムネイル画像(記事の“顔”となるような代表的画像)は、できればその段階で決めます。予備知識ゼロよりも事前にどういった施設なのかを理解することで、より良い温泉写真を撮れる確率は高まります。
とはいえ、取材現場では何が起こるか分かりません。例えば、急な天候の崩れ・撮影機材の故障・施設設備のトラブル…など可能性はゼロではありません。
また、報道内覧会のような多数のメディア(TV局や新聞社など)が集まる取材では、個人行動が厳しく制限され、団体行動での撮影を強いられるケースもあります。要は、撮り直しがきかない状況も多々あります。

TOTOPA博多駅前店(福岡県福岡市)の男性用サウナ。報道内覧会で他メディアと合同取材。撮影マナーは特段気を使います。
しかしお仕事である以上、制限があるから綺麗な写真が撮れなかったという言い訳は一切できません。“トラブルはあって当然。現場の状況の中で最善を尽くし、求められる以上の結果を常に残す”ことが何よりも重要です。
トラブルも、ある程度は事前回避できることが多いです。先に挙げた例でいうと、
・天気の崩れ ⇒ 天気予報や雨雲レーダーを事前に確認して撮影時間帯を決める。
・撮影機材の故障 ⇒ 取材中は常時カメラ2台体制。一台故障しても、もう一台で対応可能。
・施設設備トラブル ⇒ 基本は現地の指示に従う。代替設備で撮影可能かその場で確認。

桜田温泉「山芳園」(静岡県松崎町)の貸切大露天風呂。撮影時は雨が降ったり止んだり。事前にイメージした画を撮るため、現地待機しながらベストタイミングを模索
具体的に言うと、天気の崩れに関しては、あらかじめ定められた撮影時間帯の中で撮影順番を変更するなどの対応も常に視野に入れます。基本的に天候不順の場合は、露天風呂など天候に左右されやすいものを優先して撮影することが多いです。
施設設備のトラブルに関しては、例えば男湯のジャグジーが壊れたという場合、女湯のジャグジーで撮影可能かを速やかに確認します。
取材施設の内容を事前に理解し、現地では想定されるトラブルを頭に入れることで、求められる以上の撮影結果を安定して生むことができると考えております。

ONSEN & SAUNA YUKULU(長崎県長崎市)の「和華蘭サウナ」。撮影前日に施設を見学。空間の特徴を事前に把握し、翌日の撮影本番に生かしました。
『成功の半分以上は事前準備で決まる』というのは、決して大げさな表現ではありません。事前にできることを可能な限り実行し、不安要素を先に潰すことによって、肝心の本番で慌てることなく撮影に集中できます。
また、事前に予習した内容と実際の撮影現場では、大きく状況が異なる場合があります。その場合も慌ててはいけません。実際の撮影現場では、理想的状況になること自体が奇跡的なこと。あらゆるシーンに対応できるためには、普段からカメラを直感的に扱えるよう、カメラの操作方法を反復練習することも大事。シャッターを切るまでの一瞬の遅れが、決定的瞬間を逃すことにつながります。
実際の撮影現場で気を付けていること
現地へ行ったら、最初に取材を担当される施設スタッフの方にご挨拶。その時に、あらかじめ予習してきた施設概要が間違いないか確認。さらに、施設のアピールポイントをその場で聞くようにしています。要は、事前予習では分からなかった撮影すべき内容を、その場で把握するためです。

照葉スパリゾート(福岡県福岡市)の岩盤浴「蒼の洞窟」。巨大施設なため取材時は施設担当者が同行し、浴室ごとにレクチャーを受けながら撮影
温浴施設や宿泊施設では、浴室のみならず撮影すべき項目は多岐に渡ります。(例:施設外観・パブリックスペース・客室・料理・人物(モデル)・調度品・周辺観光、など)
今回は、浴室を中心にご説明します。
浴室撮影は筆者の場合、浴室全体を先に撮影するケースが一般的に多いです。広角レンズで床・壁・天井まで一枚の画像に納めるため、どうしても人(例えば清掃スタッフや他メディアの関係者)が写り込むリスク回避を早い段階で済ませたいからです。後回しにすると、状況次第で撮影不能なケースもあります。

法師温泉「長寿館」(群馬県みなかみ町)の混浴内湯。床・壁・天井を同時に一枚の画像に納めることで、どういうお風呂なのかを読者に伝えられるよう配慮
続いて、浴槽→シャワースペース→アメニティなど、大きなものから小さなものへ、広角~標準~望遠とレンズを使い分けながらサクッと一通り撮影します。
一通り撮影したら、サムネイル予定の画像を再度撮影します。サムネイル画像は温浴施設記事において記事の方向性を決定する非常に重要な要素なので、最も気を使って慎重に撮影。必要とあらば、三脚や照明機材を用いて撮影することもあります。
撮影技術面で気を配っている点は?
これは本当に沢山あり、挙げればキリがありません。ここではほんの一例になりますが、筆者が考える基本事項をいくつかご紹介します。
光の当たる方向を常に意識して撮影する
光の当たる方向や強さ・質感は、あらゆるジャンルの写真撮影において極めて重要な要素。細かく言えば沢山ありますが、ざっくりと言えば主に順光・半逆光・逆光の三つが代表的でしょう。
順光:撮影者の後ろから被写体の正面に向かって光が当たる状態
半逆光:被写体に対して斜め後方から光が入る状態
逆光:被写体の真後ろ(カメラの反対側)から光が当たる状態
順光は全体的に明るくはっきり写るので、一般的に風景や建築写真などで好まれます。浴室撮影ではお湯の透明感やにごり具合が明快に写りやすいので、筆者の場合は泉質を説明するシーンで使うことが多いです。

桜島シーサイドホテル(鹿児島県鹿児島市)の混浴露天風呂。順光で撮影し、にごり湯の色合いを克明に表現しました。
半逆光は、被写体に斜め後方から光が当たるため、手前側に適度な陰影が生まれます。程良く立体感が出るので料理やポートレート(人物)撮影で好まれる傾向にあります。筆者の場合、浴室撮影でも多用します。適度な陰影を利用して、浴室の雰囲気をよりドラマチックに表現しやすい点に注目すべきです。

水巻天然温泉 いちょうの湯(福岡県水巻町)の露天風呂。半逆光で撮影。程良い陰影が残っています。
逆光は被写体の手前に陰影ができます。明暗のコントラストがかなり強く出るため、撮影の際はストロボなどの照明機材で暗い部分に光を部分的に足すことも。撮影後は現像作業で調整することも多いです。

舟戸の番屋(静岡県河津町)の露天風呂。逆光で撮影。海側から太陽光が照り付け、メリハリの強い画像になっています。
水平・垂直をきっちり合わせる
筆者は建築士ということもあり、建物撮影の水平垂直は凄く気にします。傾いた建物は実際に利用する上で問題があり、特に水平は職業柄どうしても気になります。ただ完全に水平垂直を一発でキッチリ撮るのはかなり困難で、ずれた場合は編集で微調整します。

伊計島温泉「黒潮の湯」(沖縄県うるま市)。窓枠の水平垂直を格子状に合わせ、さらに湯面へのリフレクションも画面に納めています。
しかし、水平垂直にこだわりすぎると構図が制限され、かえって面白みのない画になることも。時には水平垂直を無視して様々なアングルで撮影することも大切です。
しかし、水平垂直にこだわりすぎると構図が制限され、かえって面白みのない画になることも。時には水平垂直を無視して様々なアングルで撮影することも大切です。
広角と望遠の特性を理解して撮影に生かす
広角レンズは単純に広い範囲を撮影する、望遠レンズは遠くの被写体を大きく写すだけのものではありません。広角レンズと望遠レンズには以下のような特性があり、それらを頭に入れて撮影に生かすことが重要です。
広角レンズ
・遠近感の強調:近いものはより大きく、遠いものはより小さく写るため、ダイナミックな表現が可能
・被写界深度が深い:近くから遠くまでピントが合いやすく、画面全体にピントが合った表現に向いている。
・周辺の歪み: 画面の端が引っ張られるように歪みやすい。
望遠レンズ
・圧縮効果:背景が被写体に近づいているように見え、より密集したような圧縮された画になる。
・浅い被写界深度:背景をぼかし、被写体を引き立てやすい。
・手ブレの影響:わずかな揺れでもブレた写真になりやすいので、より高速なシャッタースピードにするなどの対策が必要
では、広角撮影の例を挙げてみます。

天然炭酸温泉 のもん湯(長崎県長崎市)の非加熱かけ流し浴槽
上画像は、大人が数人しか入れない比較的小さめの浴槽です。しかし超広角にズームして、奥の湯船や窓の景色まで映るようにローアングルの構図で撮影すると、以下のような画になりました。

手前の浴槽が先程と同じ非加熱かけ流し浴槽。遠近感で大きな湯船に見えます。
これは広角レンズの遠近感の強調を利用して、湯船および浴室を広くダイナミックに撮影することを心掛けました。具体的なコツは、画像の主役である手前の湯船にしっかり接近して撮影すること。この点に気をつけないと、単に広いだけの焦点が定まらない画像になってしまいがちです。
同じ浴槽でもアングルによって見え方が大きく変わります。どのように見せるかは機材の問題ではなく、すべてカメラマン次第です。

御船山楽園ホテル「らかんの湯」(佐賀県武雄市)の男女交代制サウナ室。歪み防止対策で、モデル(人物)を画面中央付近に配置
また、広角レンズは画面の端ほど人物が歪んで見えやすいため、人物撮影では画像中央付近に人物を配置することがコツ。人物の歪みを抑えるためです。
続いて、望遠撮影の一例を挙げてみます。
浴室写真で分かりやすい比較作例が見当たらなかったので(すみません)、今回は長門湯本温泉(山口県長門市)で冬に開催されるライトアップイベント「音信川(おとずれがわ)うたあかり」を取り上げます。

「音信川うたあかり」(山口県長門市)。約3,000個の「あかりモチーフ」を展示。広角レンズで撮影
広角で撮影した「あかりモチーフ」は空間としては広がりがあってダイナミックですが、画面手前側に置いてあるあかりモチーフは間隔が開いて(閑散と置かれているように)見えます。

同じ「あかりモチーフ」を望遠レンズで撮影。圧縮効果と浅い被写界深度を意識しました。
一方、望遠レンズで撮影したあかり画像は、あかりモチーフが間隔を狭めて置かれているように見え(実際の間隔は同じです)、圧縮した密度の高い画に見えます。結果、広角レンズと比べるとキラキラ感ある画に見えます。また、手前や奥をぼかして(玉ボケを入れて)撮影することで、広角とはまた異なる立体感のある画作りを目指しました。
このように、広角と望遠の特性を考えながら撮影することで、より多彩な表現が可能になります。


会津東山温泉「向瀧」(福島県会津若松市)の男性内湯の湯口。望遠で遠くから撮影し、湯口にある純白の析出物を引き立てるように配慮
まとめ:温泉ライターにとって、美しい写真よりも何を伝えたいのかが最も大切
以上、『温泉ライターはどうやって浴室写真を撮っている!? 取材現場の裏側を公開』と題し、筆者が取材撮影における留意事項をご紹介させて頂きました。
筆者が最も大切にしているのが、どうやったら読者の皆様に撮影している温泉や温浴施設の魅力が伝わるか、ということです。『何を撮りたい・何を伝えたい』が最初にあるべきことであり、その次に『そのためにどんなテクニックが必要・どんな機材が必要』と考えるようにしています。

「ユインチホテル南城 天然温泉さしきの 猿人の湯 」(沖縄県南城市)の貸切湯。ここではシーサーを画の主役と考え、湯口にピントを合わせて撮影
最初から美しい写真を撮ろう・SNS映えする写真を撮ろうと意識し過ぎると、過度なレタッチに走るなど、撮影しようとする被写体(ここでは温泉や温浴施設)の魅力を誤って発信することにもつながりかねません。
写真の撮り方に絶対的な正解はありません。100人のカメラマンがいたら100通りの撮り方がある、それが正解だと思います。自らの目で見て感じた真実を信じ、それを多くの人に正しく伝えることが、温泉ライター・温泉カメラマンとしての筆者の使命だと考えております。
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この記事を書いたライター
- 権丈 俊宏
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良質の温泉を求め、全国を旅すること30年余り。特技は、自らの五感を駆使したオリジナルの泉質分析。“温泉は数より質”がポリシー。一級建築士。
温泉マイスター,サウナ・スパ健康アドバイザー,一級建築士,ソニー・イメージング・プロ・サポート会員
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