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公開日：2025年07月28日

【季節湯まとめ】12ヶ月の季節湯の効能と楽しみ方全国

日本には、毎月季節の薬草や植物を入れる「季節湯」という習慣があります。

季節湯は、日本の風土や伝統を由来としたものが多く、四季の移り変わりを感じながら、毎月違った気分で入浴を楽しめるのが魅力です。

本記事では「季節湯とは」をテーマに、季節湯の歴史や各月の一覧とそれぞれの効果、季節湯を手軽に楽しむ方法などについて紹介します。よりリラックス効果の高い季節ごとの入浴方法が知りたい人は、ぜひ最後までお読みください。

季節湯とは？歴史をさかのぼる

まずは、日本ならではの文化である季節湯の概要や歴史について紹介します。

そもそも季節湯とは？

季節湯とは、季節にちなんだ旬の薬草などの植物や果物をお湯に入れて入浴する、日本独自の風習です。季節湯は、入浴を通じて四季を感じるとともに、植物の薬効で健康を保つことを目的に、月ごとにそれぞれ定められています。

生活に季節感を取り入れながら、毎月違った香りや効能を楽しめるのが季節湯の魅力です。

空海の薬湯から始まった季節湯の歴史

季節湯は、平安時代に弘法大師の空海が、薬効を期待して薬草風呂を施療に使ったのが起源とされています。

江戸時代になると、季節湯は皮膚病に用いられるなど、治療を目的として処方されるようになり、一般化していきました。この頃には銭湯の文化が広がり、菖蒲湯（端午の節句）やゆず湯（冬至）などが体に良いとして定着したそうです。

また、江戸時代の銭湯は混浴が主流でしたが、ある時、風紀の乱れを案じた徳川幕府が「混浴禁止令」を出します。しかし、昔の銭湯経営には、男湯・女湯をそれぞれ用意することで水や燃料のコストがかかるという悩みもありました。そこで、当時混浴が可能だった「薬湯」として営業するスタイルが増え、それが季節湯の普及にもつながったと言われています。

その後季節湯は、庶民の間でも風邪の予防や厄除けとして受け入れられ、地域ごとの風習として根付いていったと考えられています。

毎月の季節湯一覧

各月に定められている季節湯は以下の通りです。

1月：松湯

2月：大根湯

3月：よもぎ湯

4月：さくら湯

5月：菖蒲湯

6月：どくだみ湯

7月：もも湯

8月：薄荷湯（ハッカ湯）

9月：菊湯

10月：生姜湯

11月：みかん湯

12月：ゆず湯

それぞれの湯の特徴や、期待される効能についてご紹介していきます。

1月：松湯

1月の季節湯は「松湯」です。

松は、冬の時期でも青々とした緑を保っていることから「不老長寿」の花言葉を持つ植物です。松の精油にはカンフェンなどの血行促進作用がある成分が含まれているので、体を芯からポカポカと温め、冷えや肩こり、神経痛、リウマチ、疲労回復などに効果的といわれています。

松湯は、お湯に松の葉をそのまま浮かべるか、松の葉を煮出したエキスをお湯に入れて作ります。より簡単に楽しみたい場合は、松葉茶でも代用可能です。

2月：大根湯

2月の季節湯は「大根湯」です。

大根の葉は栄養価が高く、ビタミン類やミネラルがたっぷり含まれているため、昔から冷えや女性の体調ケアに役立てられてきました。温泉にも含まれる塩化物質や硫酸イオンなども含まれているので、湯上がりの保温効果にも優れています。

大根湯は、大根1本分の葉を2〜10日間程度、風通しの良い日陰で数日間干し、その葉を刻んで布袋に入れて湯船に浮かべて作ります。生の葉を使う際は、刻んでからすり鉢ですり、しぼり汁を湯船に入れて作ることも可能です。

3月：よもぎ湯

3月の季節湯は「よもぎ湯」です。

よもぎは、草団子や草餅などの材料としても使われる春が旬の植物。漢方にも使用されるほど高い薬効を持ちます。止血や殺菌作用があるため、切り傷や湿疹、あせもなどの肌の炎症への効果が期待でき、また、よもぎの香りは安眠やストレス解消にも効果的です。

よもぎ湯は、生のよもぎなら葉を5〜6枚刻んで、煮出した汁を湯船に入れて作ります。乾燥よもぎであれば、葉をそのまま布袋に入れて湯船に浮かべて作ります。

4月：桜湯

4月の季節湯は「桜湯」です。

桜の樹皮に含まれるフラボノイドという成分には消炎作用があり、湿疹や打ち身などを抑える働きがあります。桜の樹皮は漢方薬局などで手に入るほか、季節になると花屋でも桜の枝を手に入れることが可能です。

桜湯は、桜の樹皮を刻んで乾燥させたものを布袋に入れ煮出し、そのエキスと一緒に布袋を湯船に入れて作ります。桜の花びらを一緒に浮かべることで、見た目にも色鮮やかになり、さわやかな香りも広がるアロマバス気分が味わえます。

5月：菖蒲湯

5月の季節湯は「菖蒲湯」です。

菖蒲は、古くから疲労回復や血行促進などを目的に用いられてきました。「尚武」や「勝負」との語呂合わせから、武家の子どもの健やかな成長を願い、端午の節句である5月5日に菖蒲を使った湯に浸かる風習が広がったのが、菖蒲湯の始まりといわれています。

菖蒲湯は、細かく刻んだ菖蒲の葉を布袋に入れて煮出し、そのエキスと一緒に布袋を湯船に入れて作ります。

6月：どくだみ湯

6月の季節湯は「どくだみ湯」です。

どくだみは、昔からニキビや湿疹、あせもなどの肌トラブルに対し、抗菌・消炎作用を期待して使われてきた薬草のひとつです。また、新陳代謝を促す効果もあり、美肌効果も期待できます。

どくだみ湯は、どくだみの葉や根を布袋に入れて、浴槽内で揉むようにして作ります。どくだみの臭いが苦手な人は、乾燥させてから使ったり、どくだみ茶で代用したりするとよいでしょう。

7月：桃湯

7月の季節湯は「桃湯」です。

桃の実は栄養価が高く、中国では仙人が食べる縁起の良い果物とされてきました。魔除けの力があると考えられており、日本でも暑気払いをかねて夏の土用に桃湯に入る風習ができたといわれています。桃湯に使用するのは葉の部分で、あせもや虫刺され、日焼けなど、夏の肌トラブル対策に効果的です。

桃湯は、桃の葉を布袋に入れて煮出し、そのエキスと布袋を一緒に湯船に入れて作ります。入浴に使用する桃の葉は、漢方薬局や通販などで入手できます。

8月：薄荷湯（ハッカ湯）

8月の季節湯は「薄荷湯（ハッカ湯）」です。

メントールを豊富に含み清涼感がある薄荷は、お湯に入れることで汗が引きやすくなるので、熱い夏のお風呂と相性抜群です。さらに薄荷の成分が体に浸透すると、血管を広げて体を効果的に温められるため、冷え性や冷房病など、夏の冷え予防にも効果を発揮します。

薄荷湯は、薄荷の葉を入れた布袋を熱湯にかけて蒸らし、抽出されたエキスと布袋を一緒に湯船に入れて作ります。手軽に作りたい人は、市販の薄荷油をお湯に数滴垂らす方法がおすすめです。より冷感を求める場合は、お風呂のお湯を38℃くらいのぬる湯にするとよいでしょう。

9月：菊湯

9月の季節湯は「菊湯」です。

菊湯は、9月9日の「重陽（ちょうよう）の節句」が由来とされています。重陽の節句は、菊の花をさまざまな形で楽しみながら邪気を祓い、長寿を願う伝統的な行事です。当初は貴族の宮中行事として行われていましたが、後に気軽に楽しめる菊湯が民間にも広まりました。菊に含まれるカンフェンという精油成分は、血行を促進し体を芯まで温め、疲れた体を癒してくれます。

菊湯は、野生種のリュウノウギクの葉を布袋に入れて熱湯で蒸らし、抽出したエキスと一緒に布袋を湯船に入れて作ります。花も一緒に浮かべると見た目や香りも楽しめるのでおすすめです。

10月：生姜湯

10月の季節湯は「生姜湯」です。

古くから漢方にも多く用いられる生姜には、血行促進や抗酸化作用があり、体を芯から温めて免疫力を高める効果が期待できます。また、生姜の酵素の働きで、皮脂汚れも落ちやすくなるので、肌をツルツルにしたい人にもおすすめです。

生姜湯は、スライスした生姜を布袋に入れ、湯船で揉むようにして作ります。また、すりおろした生姜の汁を入れることでも作れます。

11月：みかん湯

11月の季節湯は「みかん湯」です。

漢方ではみかんの皮を「陳皮（ちんぴ）」と呼び、古代中国から現代に至るまで、生薬として大切に扱われてきました。みかん湯は血行促進効果や保温効果があり、湯冷めしにくいのが特徴です。さらに、みかんの香り成分であるリモネンは、高いリラックス効果があるといわれています。リラックスしながら体を温め、風邪や病気を予防するのに効果的です。

みかん湯は、干したみかんの皮を布袋に入れて湯船に浮かべるか、5個程のみかんを丸ごと湯船に浮かべて作ります。みかんを半分に切って入れると浴槽内に成分がよく出ますが、肌が弱い人は切らずに丸ごと入れたり、みかんの果皮をしっかりと乾燥させたりすると良いでしょう。