-
この温泉施設はいささかユニークで、故意にかそれとも生理的にか日本的情緒を見事に外した造作・雰囲気に特徴がある。常に何らかの工事がなされ、内部の造作も細部において行くたびに微妙に変更されている。今回気付いたのだが、駐車場の南側のスペースにコンテナーを切断したかのような建造物がり、そこが飲食物販売スペース兼休息場所の様相を呈している。大きなソファーが外向きにむき出しで置かれており、一体誰がこの場所に座ってくつろぐのだろうかと悩んでしまう。粗大ごみとして捨てられていたソファーを強引に飯場に運んできて置いたといった風情なのである。前は駐車場で、景色を楽しむ場所でもないし、夏は暑いし冬は寒いぞ!
ともかく、色々突っ込みを入れるのは話題に事欠かない施設なのである。私は悪態をついているのではない、寧ろ微笑ましいのだ。
男湯の露天エリアには、以前足湯らしきものがあったが、今回訪問した折にはテーブルがトドスペースに変更されていた。木枕が造られていたからトドスペースに相違あるまい。それにしても、大理石のテーブルを強引にトドスペースに変更するというのも龍門山温泉らしくて良い。困ったことに元来テーブルだから長さが足りず、足を曲げて寝転ばなければならないので快適とは言えないし、横を見ると壁に造花を這わしてある。その造花もバナナの樹なのである。細やかな日本的情緒とは対極の野暮さ加減が、ある意味愉快だ。
様々なパラダイス系の造作を愉しんでしまえるだけなら優れた温泉施設とは言えないが、ここは純然たる源泉かけ流しで、湯に余計な加工を施していないという一点で評価できる。近隣の蔵乃湯老鶴館などは上手な雰囲気作りで世間の評価が評価が高いけれど、その一点で私個人は龍門山温泉の方が好ましいと思う。老鶴館はソツがないがあざとさを感じる一方、龍門山は身も蓋もなく野暮だが一本気、温泉に余計な加工をした上で雰囲気作りに付加価値をつけて客を呼ぶ手法より、私のような天然温泉好きは、情緒のかけらもなくとも純粋の天然温泉が加工されずに提供されている方に軍配を上げる。
ただ、1000円という価格設定は若干微妙ではありますが。
0人が参考にしています