- 温泉TOP
- >
- 東海
- >
- 岐阜県
- >
- 奥飛騨温泉郷
- >
- 福地温泉
- >
- 元湯 孫九郎
- >
- 元湯 孫九郎の口コミ一覧
- >
- 元湯 孫九郎の口コミ 湯を守る誇り
-
福地温泉に宿泊の際、立ち寄り湯でお邪魔した。泉質と雰囲気から当初この宿での宿泊を希望したが、如何せん貧乏旅行には若干厳しい価格設定。福地温泉ではどの宿に宿泊しようと、一軒に限り他の旅館の温泉に入浴できる「もらい湯」というシステムがあり、泉質重視でゆくなら他のリーズナブルな宿で宿泊しつつ、「もらい湯」を利用するのが合理的と判断して、ここには夜間極上の湯を頂戴しに赴いた次第。
温泉地あげてのこのシステム、なかなか理にかなうものだ。更に小さな温泉街全体を小奇麗な小宇宙とすべく観景面でも努力が払われ、浴衣と下駄でのそぞろ歩きが似つかわしい雰囲気に仕立て上げられている。生き残るために知恵を絞るオーナーたちがこの温泉地には沢山おられるのであろう。
古い日本民家風の建物は外観のみならず内装も一貫しており、近代的大型ホテルとは対極にある。上品かつ瀟洒、客をもてなす気合充分であることが外見だけでも読み取れる。
「もらい湯」の場合、内湯は入浴不可能で、露天風呂に限られるが、その露天風呂が情緒満点、情緒のみならず泉質も抜群なのである。露天エリアは結構広く、男湯の「帝の湯」の場合、奥の大きな岩風呂と手前の東屋付きの檜風呂があり、それぞれに源泉がかけ流されている。湯温はややぬるめだが、夏場には絶妙の温度であった。夜間の利用であったため湯の色合いは判然としないが、褐色にやや緑がかった色合いのもで、福地温泉の中では出色である。そのためにここを「もらい湯」として選んだのではあるが。泉質は湯温67度と36度の自家源泉の混合泉であるらしく、うまくブレンドすることで絶妙の湯温に仕上げている。単純泉にもかかわらずほのかな金気臭も感知する。幸い貸切状態で夜間のひと時を独占でき、まことに長閑な気分を味わえた。照明もオレンジ基調で明る過ぎず、センスの良さが伺われる。
熱交換システムを利用して合理的かつ良心的に源泉をかけ流す手法はエコシステムとしても優れ、素晴らしい試みだ。オーナーの湯を守る気概を感ずる。静かな福地温泉で豊かな気分になれる優れものの宿であり、宿泊するのが無論望ましいのだが、私のように他の安価な宿で宿泊しつつ、ちゃっかり極上の湯だけ頂戴するというのも次善の策としてやむを得ない。この宿でしか入浴できない自家源泉も味わえる。21人が参考にしています