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GW後半、家族5人揃っての旅行は嫁の音頭で決まった。日中は高山と上高地を散策。大喜びの女性陣は上高地内のホテルへ宿泊。るるぶを見て当日予約(笑)の私のみ向かった先が、今宵初めてお世話にばる「松宝苑」であった。
辺りは民家などなく渓谷沿いに建ってるため、少々秘境の中の一軒宿を思わせる。駐車スペースの先、まず出くわした方が作業着姿の宿主(親父)だった。すれ違いざま「いらっしゃい」と威勢よく声をかけられたのだが、立ち止まることもなく、頭は下げない、登りを向いておられた(笑)さあ、気をとり直そう。
アプローチの先にある母屋は、どっしりとした構えで豪壮さの中にも何か温もりが感じられる佇まい。館内は一転、柔らかな灯りに包まれていて、優美さとモダンな一面を兼ね備えていた。さり気なく置かれたインテリアにはセンスが感じられ、梁や土間などとの色調もバランス良く取れている。待合いにて愛想の良い女性スタッフの方に促されるように記帳を済ませ、茶菓子でホッと一息つく。この時こそが、疲れもドッと押し寄せてくる瞬間なのだ。
通された客室は本館2階「こはる」の間。主室8畳の室内は、多少の古さは否めないものの真新しい畳がすこぶる気持ちいい。広縁にはイス・テーブルにかわり円形の座布団に小さな火鉢を置き、主室の照明には和紙を使い、電球にも一工夫。また、シャワートイレなのもありがたいが、角部屋なのに側面には窓がない(笑)
室内からの眺めはいい。そこから見渡せる中庭には、自然のままを残しつつ、微妙に手入れのなされた草花などが趣きを添えている。翌朝は、その目線の先に見える正面の山肌が新緑に染まった姿を見せていた。
温泉だが、貸切岩露天の小ぶりな浴槽は周りの自然にしっとりと溶け込んでいる。そこには、目の前の深い渓谷を緑の木々がすっぽりと覆っている様子が伺える。その谷間から響き渡る川の音を聴きながらのひとときは湯にも勝る思いがした。
「おのこ」?男湯の大浴場だった。浴室内は見事な木造建築。清潔感のある畳敷きの脱衣場と木の香りをプンプン漂わせている浴室内との仕切りはなくて、とても開放感がある。こちらにも岩露天があり、さすがに広々と感じぬるめの湯なのでついつい長湯になる。内湯は私に適温だったが、露天に時間をかけ過ぎ頭がクラクラもう限界。湯上りには中庭を眺めながら一服。
アメニティは、客室には最低限のものは揃っていたが、大浴場には綿棒のみ。他、何もない。追加備品としてタオル1枚に付き100円。浴衣はなんと300円。
古い木材を活用し、再生を図る。大いに結構なことだ。高い天井に梁、自在鉤に定番の囲炉裏。古民家ならではの演出だろう、醍醐味があっていい。
その重厚な食事処で戴いた夕食だが、飛騨牛とをアレンジしてるカルパッチョやサイコロステーキをはじめボリュームのある内容。温物冷物をタイミング良く運ばれてくる料理は、繊細に盛り付けられていて、それら一品一品を彩る器とのバランスも取れている。少々薄味に感じた料理もあったが、口に合う合わないは別として、その土地の食材を使った料理には新鮮味があって楽しい。朝食には少し不満も残ったが、朴葉の味噌焼きは美味しく飯も進む。
ただ、囲炉裏端での食事なのだが、こちらでは「炭火」を使用していない。当然、岩魚などの串打ちといった料理はでないが、厨房で調理される塩焼きもうまい(笑)私なりには、囲炉裏での雰囲気も味わえたし、料理内容も思ってた以上に良く、美味しく戴けたので満足だった。「囲炉裏には炭火」だとこだわる方は、あらかじめ確認されるか、そういった宿を選ぶのが懸命かと。
静かにのんびりと過ごせることができた。ロケーションの良さをはじめ、宿の持つ心意気や気配りなども感じとれた。爆睡した翌日には体力に天候までもが回復。晴れ晴れとした気分で宿を後にし、平湯ターミナルにて家族と合流したが、そんな気分もつかの間。独特な雰囲気に飲み込まれながら次の目的地へと車を走らせた。
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