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ここ杖立。阿蘇北外輪の裾、筑後川の源流に湧く、九州きっての名湯は弘法大師ゆかりの温泉地。杉小立が絶壁のように迫る杖立川の渓谷に沿って、帯状に宿が軒を連ねている。川畔からは幾筋もの湯煙が立ちのぼり、独特の風情漂う山峡の温泉郷を作りだしているのだ。その一角に立つのが今宵の宿「米屋別荘」である。
ほのぼのとした田舎の風情を醸し出しているこの宿は、どっしりとした木造建築の母屋をはじめ温泉棟、その先奥まった所に立つ離れ3棟を擁す。まず母屋にて囲炉裏に迎えられるのだが帳場らしきものは見当たらない。隣の書などを置いた談話室にて茶菓子を戴き几帳を済ませるのだ。内外装を施してる館内は、古材を用いた木の質感を生かした造り。純和風の佇まいの中にも現代和風のモダンさを取り入れており調和の妙にも感心させられる。
通された客室は、離れ同行二人「日溜り」の間。和と洋が融合しているメゾネットタイプ。まず目に飛んできたのが外の眺めの良さ。何物にもかえがたい情景なのだ。やわらかい光が差し込み、木肌の温もりと木の香りに包まれ、漆喰の白を基調としたスタイリッシュな空間が拡がる。リビングに畳間などシンプルに映るがモダンで洒落た造り。余計な飾りは排除、インテリアなどもすっきりとさり気ない。トイレは2ヶ所、洗面スペースなどの水廻りにも快適性を持たせ、アメニティも万全だ。客室露天も良い。檜のふちを回した石造りの湯船はジャグジー付き、大人2人で十分な広さ。ぬるめの湯だが、静寂な環境の中での入浴は快適そのもの。癒しを重視した脱日常の佇まいには、伝統を踏まえながらも新しい感性を取り入れており、落ち着きとくつろぎの美的なプライベート空間を創りだしているのだ。
館内にある温泉は10ヶ所程。それぞれに趣きの異なる湯船で味わうことができる。泉温約97度の高温泉で泉質は弱食塩泉。豊富な湯が注がれる長寿霊泉は野趣満点の混浴露天だ。時代を感じさせる屋根付きの囲いや竹から流れる打たせ湯などが風情たっぷりで霊泉の名に恥じない幽玄ムードを漂わせている。他には私の嫌いな和風サウナとも言うべき釜風呂に蒸し湯、夫婦石風呂など様々。一の湯から五の湯まである5つの貸切風呂は、小ぶりながら全てに内湯に露天付きと多彩である。私は一の湯のみ入浴、露天は胸辺りまでの深さがあり立ち湯or岩を背もたれにして浸るといった具合だ。アルカリ泉の湯はツルツルとしており杖立の湯を満喫した。湯上りには発泡酒のミニチュア缶のサービスと温泉卵(50円)など食しながら寛ぐのもいい。
食事は、客室までスタッフの方のお迎えを受け、朝夕個室食事処にて戴いた。「秋草の宴」と書かれた品書きを見ながら箸を進めていく料理は、実りの季節を偲ばせている。創作風な懐石膳だが、奇をてらわず山里の旬の味覚を大切にしている地産地消の見事な内容。京風にアレンジされてる繊細な味付けは素材の持ち味を生かし舌を飽きさせないのだ。ワンスプーン料理から始まり、馬刺しのカルパッチョ、箸休めには新蕎麦小国大根のかき氷など一品一品美味しく戴けたのである。
この老舗宿には、懐かしい山里の風景がここにあるといった雰囲気の中、古き良き情緒がほのぼのと伝わってきた。ここには、湯情・人情・味情などもてなしの温かさが溢れており「旅に情あり」とはこのことなのだろうとそれらを十分に肌で感じ取ることができた。この風情ある味にくつろぎと湯に遊び、住む宿の心地良さを併せ持つ米屋別荘は素晴らしかった。また機会があれば再訪したい杖立の良宿である。(07,10月上旬宿泊)1人が参考にしています