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この世界遺産の温泉は貸切入浴で30分の入浴時間、混雑時はすこぶる長の待ち時間を覚悟しなければならないが、運が良ければ待ち時間なしという僥倖に恵まれることもある。それにはやはり行楽シーズンを避けた平日に赴く必要があり、私が先日入浴した水曜日の正午頃は温泉街そのものが閑散とし、つぼ湯の待ち時間もなくいきなり入浴可能だったので驚いた。番号札は4番で、当日早朝からの通し番号ならば、午前中4組しか入浴しなかったということかしらん。当日は近隣の「あづまや荘」その他休日の民宿が目立ったこともあり、もしかしたら水曜日が混雑せずつぼ湯に入浴できる曜日なのかもしれない。温泉に入る身になってみれば、いくら源泉かけ流しで、新湯投入率の高い湯でも、あんな狭い湯舟に絶えることなく人が入り続けた湯に入るより、人が少ない方が好ましいと思うに決まっているし。
楕円形の小さな湯舟の底から熱い湯が湧き上る。どうも一番多く湧き出している場所は、湯舟の奥に位置する、言わば柿の種の先端部分の底に近いところのようだ。そこに足を差し入れてみると、かなり深い窪みがあり、そこから熱い湯が潤沢に湧き出している。
水で薄めても相当熱い湯ゆえに、出たり入ったりを繰り返すうちに終了となる。30分なんてあっという間に終わる。私の入浴時は前回同様灰色に青みがかった色合いの湯だったが、香ばしい硫黄臭に包まれて至福の時を味わえた。同じ硫黄臭でも、信州の白濁した硫黄泉の香りとは微妙に異なる。
たとえ公衆浴場の薬湯に入らずに、つぼ湯だけで済ましたとしても、また30分はいかにも短いにしても、750円がちっとも高いとは思えないのは優れた泉質と歴史の澱に圧倒されるためか。4人が参考にしています