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白浜温泉には沢山の共同浴場がございますが、ここは温泉地の共同湯と申しますよりむしろ日帰り温泉施設といった雰囲気、古くからある小さな共同湯にこそ優れた湯が湧いているとの先入観から、瀟洒な建物の長生の湯は、入浴が後回しになりましたが、予想を裏切って優れものでございました。
木造の瀟洒な建物は清潔感と情緒溢れ、喧騒さを忘れさせてくれます。入浴後の休息部屋もあり、のんびりと過ごすのには最適でありましょう。
脱衣場、浴室ともに小振りなものですが、都会地のスーパー銭湯の如き混雑があるはずもなく、十分なスペースが確保されてございます。わたくしが利用した平日の午前中には、数名の客しかおられず、女湯はしばらく貸し切り状態であった由。余計な機能バスやサウナなどなく、浴槽は内湯と露天の岩風呂および備長炭風呂のみ、それが程良い規模なのでございます。湯量を考慮して浴槽を造る姿勢が現れており、好感を抱きます。
わたくしがこの施設に好感を抱くのは、源泉かけ流しでの温泉利用と、無意味な大規模施設でないこと、加えて情緒溢れる露天エリアでの演出の素晴らしさにあります。夏場の暑い一時期を除いて無加水で通し、加温なし、無添加、循環なし、塩素消毒なしといった良心的利用方法に加え、露天エリアでは裏山の樹木を上手に利用した造作になっており、山間の露天に浸かっているがごとき感覚、浴槽の上までせり出してきたカエデの木など、まさに風雅そのもので、秋にはさぞかし綺麗な紅葉でございましょう。
含食塩重曹泉は浴感に優れ、程よいツルヌル感と微硫化水素臭が天然温泉を実感させてくれます。白浜温泉の湯は塩分濃度が高いものが多い中で、ここは比較的濃度が低く、白浜温泉のなかでは個性が薄いといえるかもしれませんが、見事に演出された露天エリアにふさわしい色合いと香りといえましょう。予想以上に優れものでございます。
松の湯や、最近廃業されたとおぼしき綱の湯などの、白浜の典型的な共同湯をわたくしは好みますが、あまりに地元専用色が強い入浴施設に抵抗のある方々には、この長生の湯など、お勧めです。2人が参考にしています