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投稿日:2012年3月25日
湯治宿のお手本 (大沢温泉 湯治屋(とうじや))
練馬春日町さん [入浴日: 2012年3月11日 / 1泊]
55.0点
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三陸の吉里吉里を15時過ぎに出て、自炊部に着いたのは18時になりかけていた。同じ県内だが、関東に当てはめれば東京・宇都宮くらいの距離があるだろう。岩手は広い。
帳場を出てコンビニ並み品揃えを見せる売店、食事処やはぎを通り過ぎ、中館の角部屋に案内された。襖を開けた瞬間、お、広いなと思った。自炊宿といえば、狭かったり、窓の無い部屋だったりすることも覚悟のうえだが、清潔な広い部屋に加え、二面の窓から豊沢川を見下ろせる眺望は良い意味で想定外だった。外は雪が降る寒い夜だったので、オプションでストーブと炬燵を頼んだ。
館内と4つの風呂の説明を受け、全部回れるかわからないのと各風呂の入浴可能時間を考え、露天の大沢の湯、菊水館の南部の湯、自炊部の内風呂である薬師の湯を優先し、循環しているという豊沢の湯は最後にすることにした。ちなみに源泉はすべて同じとのこと。
まずはシャワーで洗い流せる南部の湯。下足に履き替え、豊沢川に架かる曲がり橋から大沢の湯を横目にしつつ、川向こうの菊水館に向かう。この1分少々の移動が旅情をくすぐる。南部の湯は2、3人が適正と思われるやや小ぶりな木造りの湯舟。臭いや色に強い特徴はないが、明確なぬめり感のあるアルカリ単純泉。浴槽の底に熱い箇所があり、そこから湯が投入されているのがわかる。熱すぎず温くもなく、ゆっくり浸っていられる。結果的に湯としては南部の湯が一番気に入った。
有名な大沢の湯は自炊部の最奥にあり、最後は階段を下りていく。大沢温泉の看板風呂を今更説明するまでもないが、川面でせせらぎを聞きながら、薄明かりの夜は心落ち着き、朝の雪景色に心洗われた。ぬめり感は南部の湯の方が強いように思われた。
薬師の湯は翌朝行ってみた。昔懐かしいタイル張りの2つの浴槽。これはこれで立派な湯だが、個人的には南部と大沢の方が強い印象を受けた。最後に豊沢の湯に行こうとしたが、運悪く清掃中とのことで今回は入れずじまい。
内部構造が迷路のように複雑な自炊部は風呂探しに難儀するが、館内を探し回る行為自体が楽しい。また、日曜夜でありながら結構な泊り客がおり、館内に漂う楽しげな雰囲気もいい。やはぎで蕎麦を食べた後、静かな部屋に戻り、曲がり橋に降る雪を眺めていたら、濁っていた気分が濾過されたような気がしてきた。湯治宿の手本のような宿だと思う。3人が参考にしています
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