-
島崎藤村の『千曲川のスケッチ』に「升屋」として登場し、眺望の良い温泉宿と紹介されています。
今回、田沢温泉を再訪するにあたり、私の希望でこちらに妻と宿泊しました。
国の重要文化財の建造物ということもあり、その存在感は圧倒的なものがあります。古い趣のある造りは鄙び系大好きの私にピッタリ。急な階段もギシギシと音の鳴る廊下も何故か落ち着くから不思議です。
長い廊下を辿って行く浴場は予想外に新しい感じで、内風呂に入るとリンスインシャンプーとボディソープに使われているお茶の香りが漂っています。
ですが、掛け湯を浴びるとふわ~んとタマゴ臭がしてご機嫌。内風呂は適温~ややぬるめ、露天はかなりぬるめで特に露天風呂は茶色い綿状の湯の花が大量で驚きました。
山肌に近いので目には緑、頭上では鳥が鳴いて心を和ませてくれます。思わず目を閉じて深呼吸をし、その自然の音楽に耳を傾けました…。存分に長湯が楽しめるまろやかな湯、素晴らしいです。
ゆかりの「藤村の間」は宿泊者がいて見学できませんでしたが、夕食の食前酒には「藤村のにごり酒」が出て来たり、資料展示もあり興味深く見させて貰いました。食事も山の地場物中心で品数豊富。味も素朴で非常に美味しかったです。
映画「卓球温泉」で知られるだけにサイン色紙も数多く、廊下やロビーでも沢山見る事が出来ました。
ピンポン室にある3台の卓球台も傷とか凹みとか無数にあって、逆に雰囲気と歴史を感じさせ何かジンと来るものがありました。
宿としては清潔感はあまり感じられないけど、仲居さんたちの対応含め安らぎは存分に与えてくれました。
なかなか妻と温泉宿に宿泊することは出来ませんが、いい思い出となりました。11人が参考にしています