-
竹薮ある苔むした石段を川べりへといざなうアプローチ。町の喧騒から遠くない秘湯。古びているが、鄙びの世界。 駿河の殿様今川家の乳母が退役後に居した土地で今も小字が残り、御殿乳母の湯と云う。営業して50年ほどだが、かの御殿乳母も浴びた湯で、源泉は湯屋より100mほど山をのぼったところと聞く。小さい谷底の川べりにある湯屋なので川のあたりから湧いているものと思った。平日の朝であったが常連客がごく自然に湯浴みしている。カランはないが飲泉コップがあり、シンプル・イズ・ベストな通の温泉場であった。
お湯は加温はしているが加水もなく、循環濾過なし、消毒もないすっぴんの湯である。湯口からは1分あたり5~10リットル、40~50度くらいに都度調節された源泉が注がれ、源泉をすくうとはっきりとした硫黄の香りがした。僕の好きな飲泉も当たり前のように湯口の脇に添えられ、胃腸に効きそうなそれらしき味であった。やや硬い味わいであった。
浴感はさほど強くないが、湯の華が多く良い使い方の湯であると思う。長湯に適した泉質と湯船で、実際、このての湯は効能が高そうである。湯守の主人はうれしそうにこの湯の素晴らしさを語ってくれた。殺菌効果が強く、主人は目薬としても使うと言う。処方箋より効くとのことで、打身や湿疹にも効くのだそうだ。
穴場的立地で、本当に古びてはいるが、湯を守る主人と本来の温泉がここにはあり、ちょっといい気持ちになった。17人が参考にしています