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元禄の湯は本館とは別の川に面した建物1階部分にあります。本館玄関に入り、靴のまま受付まで行きます。受付を済ますと玄関脇のドアから別棟の建物へ。そこには外に面して女湯と男湯ののれんがあり、扉をと開けるといきなり写真の光景。ちょっとびっくりです。左右に脱衣の籠が置かれた棚があり、ちょっとした脱衣スペース。そして階段を3段ほど下りて5つの浴槽のある浴室へ。こういう脱衣所と一体型の浴室というのは盗難防止にはいちばん。鍵付きロッカーなどなくてもいいのだ。昭和5年築というからもう80年近く時を経ているが、今でも充分におしゃれでモダンな内装。湯槽をやたら大きくしないで、このように分割するとお湯の鮮度も保たれるし、湯温の調節もしやすいのでは。
四万温泉は透明でヌルスベ感もなく強い匂いもしないクセのないお湯。インパクトを求める人には不向きだが、肌にやさしくじっくりジワジワと効いてくる温泉だ。特に飲泉は、鉄臭くもなく塩気もあまりないので飲みやすい。いかにも胃腸によさそうな味がする。
お湯は適温が保たれていた。どの湯槽もほとんど同じ温度のお湯がなみなみ。オーバーフローしたお湯が床に流れても泉質のおかげでそれほど滑らない。カランは1か所。いちおうシャンプーセットもある。基本的には浴槽の脇で体を洗う昔ながらのスタイル。
お湯の入り心地はよく、鮮度のよさそうないい匂いがする。いっしょに入っていた85歳のおばあちゃんは「ああ、いいお湯だ」を連発。本当に気持ちよさそう。浴室にはほかに二つの蒸湯がある。壁にある人ひとりがやっと入れる小さな扉をあけるとタイル貼りの寝椅子が。温泉を桶で汲み室内に打ちかけてから寝そべる。小窓があって空気が取り入れられている。小さなスペースなのであっという間に発汗。
塩気もなくあつ湯という印象ではなかったのですが、出るころには汗が引かず困りました。脱衣所一体型は服を着るとき暑いのが欠点です。
積善館はこの元禄風呂はもとより、建物全体に文化財的価値があります。朱塗りの橋からの眺めは本当に素晴らしく、外廊下の付いた客室など昔ながらの温泉旅館そのものの風景。今回は「温泉博士」利用の日帰り入浴でしたが、いずれ宿泊してこの旅館そのものを味わいたいと思いました。
※写真は元禄の湯 女湯8人が参考にしています