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意外であるが、蟠渓温泉の歴史は今から120年以上前にも遡るらしい。北海道では極めて古い温泉の類だろう。そのなかでもここ「ひかり温泉」は蟠渓温泉の歴史とともに歩んで来た老舗中の老舗旅館。見た目はちょっと古めの民家風だが、庭先に佇む祠と小振りの鳥居からただの民家ではないことが伺える。
館内に一歩足を踏み入れれば、そのことをさらに実感できる。北海道では滅多にお目にかかれない黒光りする廊下など、ただ古いだけではない、大事に守り続けられていることが伝わってくる。
浴場は二手に分かれ、手前はかつて露天だったという野趣ある石風呂。浴槽中央に設えられた天然岩の頂からお湯が溢れるという珍しい意匠で、これだけでも絵になる存在だ。奥にある浴場は内湯のみだが、壁一面の「水色」の中、浴槽正面に掲げられた巨大な『蟠渓ひかり温泉音頭』の看板にほのぼのとした気分にさせられる。昨年宿泊した熱海の温泉旅館を思い出した。いわゆる「レトロ」である。
歴史を感じさせる宿の中に二つの異空間が同居する、非常に貴重な温泉旅館である。4人が参考にしています