-
優れものの泉質を誇る温泉施設が老朽化してリニュアルがなされる場合、小奇麗で近代的な設備に生まれ変わる反面、貴重なかけ流しが取り止めになり、哀れ無個性な循環湯に様変わりして塩素消毒など施され、それこそ目も当てられない惨状と変わり果てながら、施設側に悪気はなく逆に変に誇らしげという悲劇が世の中には多々ございまして、個性的な泉質を誇ります「クア武庫川」様のリニュアルが如何相成るか、不安と期待におののきながら昨日入湯させて頂きましたところ、わたくしの不安は杞憂に過ぎなかったのでございます。
建物の外観こそ変化はございませんものの、内部は予想以上の改良がなされております。ロビーからして新築の雰囲気漂わせ、お祝いの花など窓際に並び、以前と男女の浴室の位地が逆になっていることに気が付きます。
内湯の主浴槽や個性的な三つ並ぶカランなど全て一新され、新築に等しい改良でございます。以前は男女の仕切り壁沿いに浴槽が並ぶ造作であったものが、現在は浴室中央に浴槽が並び、浴槽はジャグジー、ジェット、寝風呂、電気風呂など充実したもの。ボタンを押下して強烈な水圧で背中を刺激する類のジェットもあり、機能バスが好きなお方には充分満足のゆく設備となっております。浴槽に浸かりながら大型テレビを観賞できるという、親戚筋の「テルメ龍宮」型システムも健在でございます。
さて、この銭湯の白眉は、なんといっても露天エリアの源泉風呂でございましょう。その個性溢れる泉質の源泉風呂がなければほとんど存在感が無いほどに、ここの源泉風呂の泉質は異彩を放ちます。以前からわたくしはその源泉風呂の虜ではございましたが、今回のリニュアルで以前の三倍ほど大型化し、わたくしの認識では無意味と思われた循環濾過された透明な湯が張られた浴槽がなくなり、露天エリアでは源泉をかけ流した浴槽に一本化されたのでございます。
浴槽が大型化されたとは申せ、以前と同様に香ばしい土類が含有された芳香と塩味は寸分損なわれることなく潤沢にかけ流され、リニュアルされてからひと月にもならないというのに、岩の部分には温泉成分の固着が見られます。程なく床下には以前と同じく温泉成分が波打つようなコーティングが自然になされることでありましょう。余談ではございますが、この源泉に生麺を入れたものを茹でて食べてみたいという衝動をわたくしは抑えることができませぬ。
大型化により浴槽の湯量が増えたため、酸化が進行することにより以前と比較して茶色が濃くはなりましたが、体感的には変化なく、熱めの個性溢れる温泉が以前にも増して楽しめる設備に改良されたのは慶賀すべきことでございます。
この銭湯の長所、即ち個性溢れる天然温泉の泉質こそ売りであるということをを充分に認識なされ、長所を更に伸ばすことを主眼にリニュアルされた「クア武庫川」様にはまことに頭が下がる思いで、これこそ真っ当なリニュアル、確実な進化を実現されたことに敬意を表する次第でございます。0人が参考にしています