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投稿日:2013年10月10日
あの筑紫哲也さんも通っていた名泉 (京都北白川天然ラジウム温泉えいせん京 【旧 源泉湧出元 北白川天然ラジウム温泉】)
陽だまりのコスモスさん [入浴日: 2013年9月14日 / 1泊]
55.0点
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55.0点
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44.0点
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55.0点
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55.0点
胃癌の手術の後、医師の勧めでこちらの温泉に通い始め、恐れていた再発や転移もなく五年が過ぎた。同じような境遇の方もたくさんおられ、この温泉のおかげで救われたと思っているのは私だけではない。筑紫さんもそのひとりだった。筑紫さんとは一度だけお風呂でご一緒したことがある。ちょうど肺癌の療養のため、ニュース23のキャスターを降り、京都に居を構えられた頃だった。「この温泉に入ると咳が止まるんですよ。」と笑顔で語っておられた。惜しくも抗がん剤の副作用がひどく、亡くなってしまわれたが…
こちらのラドン含有量は約140ナノキューリーと温泉基準値の下限20ナノキューリーの7倍もある。これには専門機関の分析表の掲示があるので疑問をはさむ余地がない。(分析表のないところは温泉法違反なので気をつけないといけない)またここは一滴の加水もしていない。100%の源泉のみで、飲泉もできる全国的にも貴重な温泉だ。(もっとも水道が来ていないので加水のしようもないのだが…)
この温泉の岩盤にはラジウムがあり、それが崩壊しラドンに変わると、水溶性の気体なので湧水に溶け込む。もともとは「お助け水」と呼ばれ、地元の人たちが重宝してきた。偶然この土地を買った初代が分析にまわすと、多量のラドンを含むことが分かり、クリスチャンだった初代は「神様からの授かりもの」と思い、人助けのための温泉を始めた。これが「北白川天然ラジウム温泉」であり、その思いは今も受け継がれている。
ラドンは加熱すると気化し、湯気の中に存在する。他の物質と結合しない性質のため30分ぐらいで呼吸とともに出ていくが、その間の弱い刺激で血行が良くなり、体温が上がり、免疫も活性化する。これがホルミシス効果だ。じっさいに私の体温は、五年前の35.4度から現在の36.3度まで上がった。癌細胞は高体温を嫌うのだ。
ふだんは日帰りだが、先日は少し贅沢をして、新しくできた露天風呂付き客室に泊まった。
リニューアルされた宿泊用フロア(日帰りの懐石コースでも利用可)は、レトロな日帰り用の休憩室とは別世界で高級ホテル並みの設備だ。京都迎賓館にも参加したデザイナーの設計だそうで、木のぬくもりがやさしい快適な空間だ。トイレも全自動のウォッシュレットだし、床暖房まで備えている。料理はすべて飲用の源泉で調理され、京野菜を中心とした滋味のある料理が食膳をにぎわす。ここは数少ない旬の京野菜提供認定店でもある。朝食もちょっとした旅館の夕食並みで、至福の一泊二日だった。
どこか体の不調を抱える客が多いので、時にはトラブルもある。たまたま耳に障害のある方がおられるとテレビの音量が大きい事もあるかもしれない。店としても、障害のある方を傷つけたくないのであまり強くも言えない。障害者も健常者もお互いゆずりあっていきたいものだ。ここのスタッフはみんな親切で、もちろん常連客だけを優遇することなど絶対にない。
この温泉は開湯してゆうに半世紀を越えている。スーパー銭湯なるものができるずっと前から
地元の方に愛されてきた。ロッカーのコインが戻らないのも昔のものだからで、まだ使えるのに捨てるわけにもいかないのだろう。私は何度となく店の方が「ロッカーが古いので100円は戻りませんが、貴重品はフロントでお預かりいたします。」と説明されるのを聞いている。
それから食事を注文するなら、入浴前にしておく方が良いですよ。ここは懐石コースの店としても名高いので、休憩室が空いていても、個室はぎっしりで、厨房はてんてこ舞いのことがよくある。
「お出しするのに時間がかかります」と言われるのはそんな時で、日曜の昼や土曜の夜にはよくあることだ。そのかわり出来合いのものは一切使わず、本物の材料を源泉で調理した料理が味わえる。
日帰りで入浴のみに行かれる方は、スーパー銭湯の持つ華やかさは期待しない方が良い。入館料の1550円(入湯税100円を含む)も高いと感じるかもしれない。でもそれをおぎなって余りある本物の温泉が待っていてくれる。もちろん、自分への褒美に贅沢を望むなら、露天付き客室の宿泊か日帰りの懐石コースが良い。そういった使い分けをして、大切な温泉文化を育てていきたいと思う。87人が参考にしています
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