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極めてマイナーで鄙びた湯川温泉、ゆかし潟沿いの旅館や日帰り温泉施設もささやかで奥床しく、泉質のみならず温泉の利用方法も優れ、私好みだ。今回の行脚で湯川温泉の日帰り施4箇所中、源泉かけ流しを採用する3箇所に入浴してみたところ、私が最も好感を抱いたのがここ、ゆりの山温泉であった。
勿論のこと、四季の郷温泉や喜代門の湯も同様に優れものなのだが、コストパフォーマンスその他、微妙なところで私はここが最良だと思う。
ゆかし潟東端に建つ木造の品の良い建造物の中には休憩場所もあり、温泉を純粋に愉しむには充分、外では温泉水を販売もしている。小振りだが清潔な脱衣場には脱衣籠と木製のロッカーがある。浴室の戸を開けると硫黄臭に包まれ、浴槽は石とタイルを組み合わせた端正なもの。その比較的大型の長方形の浴槽に、源泉が断続的にゴボゴボと注がれているのである。露天風呂やサウナなどありはしない。湧出量126リットル/分の湯量に見合った温泉利用法は極めて良心的。ここに例えばスー銭もどきの大型施設をしつらえて、この名湯を循環利用のうえ塩素注入などしてしまうと、仄かな硫黄臭など消し飛び、ただのプール臭ただよう湯に変質することになろうし、何より温泉を冒涜している。その点で、湯川温泉の大半の温泉施設の温泉利用法には共感を抱く。
湧出温度は39.5度で、浴槽の湯温は恐らく38程度のぬる湯、熱い湯がお好みの方には物足りないだろうが、加温なし、加水なし、循環なし、塩素消毒なしの自然そのままの状態で温泉を提供されるのが私には有難く思う。肌触り良く、人肌よりやや湯温が高い程度の良泉に身体を沈めるとまことに快適で、眠気を誘う。
カランの湯も勿論源泉である。現在は赤い栓が付けられカランから出る源泉を止めることができるが、以前は垂れ流しのカランもあった由。豊富な湯量を小振りな施設で贅沢に利用しており、利用者にとっては最も有意義な温泉利用法となるだろう。こんな良泉が300円で利用できるのは有難いこと。
2リットルのペットボトルの源泉を、親切なお客さんから1本頂き、家で珈琲をたてたりして利用したところ、香ばしさに好感した。一週間程経っても硫黄臭がなかなか抜けない。
このような温泉施設が近所にあれば、毎日利用して湯船にぷかりと浮かんでしまうことになろうが、悲しいかなこのゆりの山温泉、街へは遠い。3人が参考にしています