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福地を後にし訪れたのがここ下呂。日本三名泉に数えられる一大温泉地。温泉街より外れ、竹林を抜けた飛騨川畔に立つのが今宵の宿「川上屋花水亭」。約1000坪の敷地に客室わずか16。緑の山を背にする建屋は瓦の流れが見事な高級感あふれる凛とした佇まい。火を灯す頃には、一層の静寂と旅情に包まれてしっとりとした風情を醸し出している。
高級料亭のような清楚な畳敷きの玄関。ロビーラウンジなど小洒落た和モダンな雰囲気。落ち着きある佇まいを大切に、近代的な快適さも追及した現代風数奇屋造りとさりげなく飾られている書画に調度品をはじめ生花などが心和む空間を演出している。そして洗練された接客に隅々にまで行き届いてる清掃など含め、もてなしの温かさがここにはある。
今回通された客室は、桃花荘2階「沈丁花」の間。(希望した客室がすでに埋まってたためこの客室に)主室10畳+副室6畳と広々とした室内は、気品が漂い、床飾りにこだわりの調度など優雅なひとときのためのしつらいもさり気ない。外の眺めはもうひとつであるが、居心地は良く、まずはビールを飲み干し一息つき温泉へ。
御影石をはじめ端正な美しい和造りの大浴場へは、単純泉の湯が静かに注がれている。他には貸切りの檜露天に川畔には岩露天とある。これら浴槽からは、坪庭を配した小ぶりな庭や遠くに山々の稜線を眺められ、どっぷりと湯に浸かりながら旅の疲れを癒すことができる。特筆すべきものはないのだが、滑らかな下呂の湯を満喫できたのである。
食事は夕朝とも個室料亭で戴いた。新鮮な魚介に季節の山菜を素材とした美味を取り合わせている会席膳は、今回も素晴らしい内容。「一客一味」ともいうべき、はんなりと美しい膳はもてなしの心遣いがあふれており質、味付けとも文句なし。量的にも私に程よく、一品一品はもちろんだが、特に天然鮎のうまかったこと。夕に朝にと美味を堪能した。
前日の民芸調の秘湯宿とは、全く趣きが異なるこの宿へは3度目の宿泊。ここにも数奇屋造りが醸し出す閑静な佇まいには、侘びに粋にと季節の味わいがあるのだ。それらを存分に満たしてくれる、この風趣あふれる大人の宿「花水亭」へは、また機会があれば再訪してみたい。翌朝、宿を後にし次の宿泊地、山中へと向かった。(07,8月下旬宿泊)2人が参考にしています