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晩秋の深夜、国道121号線を湯西川に向かってを疾走する車が一台。塩原を抜け会津に向かうはずでしたが、湯西川の薬師の湯共同浴場に入りたくなり、時間と体力のロスを覚悟で湯西川に寄り道しました。途中から林道のような細い山道を突き進み、ようやく到着。
近くのお土産屋さんの駐車場に車を止め徒歩で向かうと、橋の袂に湯小屋を発見。観光地のド真ん中にありながら、なんとも地域密着型の鄙びた外観です。中に入るとすぐ目の前に脱衣所があり、男女の別はありません。脱衣所から見下ろす位置に石造りの湯船が一つのみ。4~5人サイズ小さな湯船ですが、石をくり抜いたような湯船は、木造りとは違った独特の雰囲気を醸しだしています。かなり使い込まれた為か角の取れた柔らかさがあり、見ているだけでホッとしてしまいます。木造の湯小屋と融合し、時代劇に出てきそうな佇まいです。協力金200円×2を投入して早速連れと入浴です。
湯は無色透明で黒ホースから湯船に注がれ、投入量もまずまず。湯温は投入口で体感50度以上、湯船内で体感43度のやや熱め。源泉が高温なためか加水されていました。加水は黒ホースからいったん湯桶に注がれ、その湯桶に開けられた穴から湯船に投入されています。良く見るといろいろなところに大小異なる穴や切り込みが入れられ、季節や源泉温度によって差し水の量が加減できるようになっています。管理している方の経験に裏打ちされた熟練技が垣間見られました。
湯は無色透明ですが、火打石を打った時のような鉱物系の焦げ臭さを感知。変な刺激もなく素肌に良く馴染む印象。はじめはヌルスベでその後弱キシ感へと変化。ジワジワと湯の成分が浸透してくるような浴感で、しばらくするとつま先と指先がジンジンとしてきました。湯力もなかなかです。湯煙に包まれた浴室は夜と言うこともあって、湯情満点。至福の時間が過ごせました。遠回りになりましたが来て良かったと疲れも吹っ飛んでしまいました。混浴な上、脱衣所も一緒なので女性の入浴はかなり勇気がいると思いますが、自信を持ってお勧めする湯です。
車に戻って湯上りの休憩をしていると、テケテケと何やら動物が近づいてきました。はじめは犬か猫かと思いましたが、良く見るとなんと狐です。深夜とは言え、お土産屋さんや旅館の並ぶメインストリートを飄々と通り過ぎていった狐のうしろ姿は、まさに孤高。連れ共々、狐につままれながら呆然と見送ったのであります。16人が参考にしています