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こじんまりした簡素な村営の共同湯で、料金も300円とリーズナブル、十津川村にある入浴施設の中で最も安い料金である。うっかりしたら通り過ぎてしまいそうな小さな施設で、浴槽も一つ、温泉地の共同湯というのはこんな施設が多い。豪華さや様々な設備を期待してはいけない。そんなものを求める人は、わざわざ十津川村まで来る必要がなく、都会のスー銭で岩盤浴でもしておればよい。ここには一切加工されていない源泉が注がれているのみなのである。
浴槽には源泉注入の蛇口と水を注ぐ蛇口の二つがある。源泉はかなり高温であるために、水を注入する必要があり、そのため源泉率は80%と記載されている。ナトリウムー炭酸水素塩泉の湯は二号泉と七号泉の混合泉で、温泉地温泉ほどの硫黄臭はないが、硫化水素がほのかに香る良い物である。勿論のこと、加温なし、塩素消毒なし、循環濾過なしの天然そのものの湯だ。この度は貸し切り状態で、湯を堪能した。男湯からは、目前にダム湖を望むことができる。
共同湯は旅情を感じる最高の温泉施設で、私の訪問時には受付の女性に景色の良いべランダまで案内していただき、昔話など伺った。地元の方との会話もまた共同湯を訪れる愉しみの一つ。
地元の年長者にとっては、最近近隣にできた日帰り入浴施設が、浴室までの階段が長くて苦痛であるため、従来からの共同湯であるこの公衆浴場が好ましいらしい。私にとっても、この小さく古い、しかしながら旅情を感じる源泉かけ流しの湯がすこぶる好ましく思われた。0人が参考にしています