-
四年ほど前に一度入浴したきりであったので、久々に赴いてみたところ、天然温泉の利用は取り止められ、井戸水を沸かしたものに入浴剤を添加した人口温泉形式に変更されていた。この12月からのリニュアルであるらしい。施設そのものは小奇麗なままで、老朽化は見られない。
内湯の主浴槽は天然温泉からゲルマニウム温浴に、露天の三つの浴槽が「湯めぐり四季彩風呂」と称したそれぞれ種類の異なる入浴剤が添加された湯となっている。私の入浴時には大型テレビが設置された岩風呂は、乳頭温泉を再現したとされる白濁湯で、湯温は若干ぬるめ。中央にある石風呂が漢方薬湯であった。漢方薬湯というのは芳香が強く、塩素臭を消し去る効果があるが、身体についた漢方薬臭がなかなか消えにくい。もっとも、入浴剤でごまかしてはいるものの、塩素風呂には変わりなく、入浴してみてちっとも有難みを感じない。
釜風呂と称する蒸気風呂がまだましな方か。
天然温泉を廃止して人口温泉にリニュアルしたのは、施設側の説明では客のアンケート結果を実現しとという触れ込みだが、どうも面妖な話だ。全国の名湯を再現したといっても所詮は人口温泉、客は本当に天然温泉より入浴剤入りの湯を好むのだろうか。それならわざわざ高い金を支払ってスーパー銭湯に行くより、家の風呂にバスクリンでも入れればよかろうと思う。私にはアンケート結果云々は表向きの理由で、実態は化石海水の枯渇若しくは利潤追求面からの天然温泉廃止としか思えない。
それでも大勢の客が利用しており、商売繁盛と見えるのは慶賀すべきことかもしれない。大衆に迎合しなければ商売にならないからである。しかし、例えば簡素で泉質重視の優れたスーパー銭湯である羽曳野の華の湯より、こちらの方が集客力に優れるのを見るにつけ、大衆が求めるものなど所詮はたかが知れていると意気消沈せざるを得ない。
少なくとも私は、温泉とは地球の恵みを身体で受ける快楽であると思うので、温泉施設において、湯船に入ってテレビを見たり、散髪をしたり、ましてやマグロの解体ショーなどを見たくはない。1人が参考にしています