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投稿日:2010年11月2日
漂う寂びの風情を楽しむ (アクトバード矢立温泉 (閉館しました))
さん [入浴日: 2010年6月2日 / 2時間以内]
44.0点
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33.0点
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近くの日景温泉も惹かれたが、なんとなく寂びれた雰囲気に浸りたい気分だったので、あまり目立つことのないこちらを選んだ。自生している花菖蒲とどくだみの花畑を通り抜け入口に向かうと、沁み入るような笑顔のご主人が迎えてくれた。
お湯は赤湯の名の通り赤褐色で、源泉を舐めてみると苦しょっぱかった。入ってみると、ずんと強く身体に浸潤する感じがあり、強酸性泉に入ったような感覚。あまり長湯すると身体に堪えそうなので、ちょいちょい上がっては浸かるのだが、まわりは析出物によって惑星の地表のようになっているので横たわったりするのは難しい。しかし、この「異星感」はなかなか出合えないもので、ミニチュアの宇宙飛行士でも置いたら面白い写真が撮れるだろう。
湯あがりに休憩していると部屋借りで日帰り入浴に来ていた老婆二人が話しかけてきた。曰く、あちこち療治で温泉を巡ったが、腰と膝にはここが一番だそうだ。屈指の温泉地帯である地元の方が云うのだから本当のことなのだろう。しばらくすると温泉巡りを夫婦でしているとよく振られるおきまりの艶笑話になったので、うまく切り上げて玄関へ向かう。
帳場でほとんど砂嵐のテレビを飽くことなく見つめていたご主人がにこっと立ち上がって見送ってくれた。「また来てくださいね」という言葉がなぜか胸に沁み、うまく返事ができないまま外へ出た。このサウダージ感。これもこちらの魅力の一つだと思う。0人が参考にしています
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