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赤穂温泉といえば、ふつう赤穂御崎の海沿いにあるホテルの類を連想する。事実少し前までは赤穂御崎にしか天然温泉はなかった。スーパー銭湯の類はひとつだけあるけれど人工泉であるし、この地で天然温泉に入ろうと思えば、赤穂御崎に在るホテルで1500円程のやたら高い出費での日帰り入浴を余儀なくされたものだが、近年この施設が赤穂御崎ではなく市街地に近い場所にできたために、市内でお手軽に天然温泉に入浴することができるようになったことには慶賀すべきだろう。
ここは観光ホテルというより寧ろビジネスネスホテルの機能を果たしているとおぼしき、赤穂パークホテルに併設する施設であるため、当然宿泊者は無料で入浴可能である。外来入浴も700円で可能。建物はホテルと別棟の小振りなもので、ホテルの日帰り外来入浴といった敷居の高さは皆無、外来入浴施設としての性格が濃い。平日は夕方4時から、土日は午後1時から営業する銭湯と考えて気軽に利用するとよいだろう。この内容で700円は少々高いが。
浴室には内湯の主浴槽が一つと水風呂、小さな乾式サウナも併設する。女湯には塩サウナが併設との由。岩風呂形式の露天風呂が小さな庭の横にあり、脱衣場からも浴室からもアクセスできる造作になっている。内湯も露天風呂もいずれも小さなものである。そして、双方の浴槽に天然温泉が注がれている。
泉質は赤穂の温泉によくある食塩泉の類で、正確には含弱放射線・カルシウム・ナトリウム・塩化物・強塩低温泉というもの。この地は冷鉱泉であるため当然ながら加温されている。
ここでの温泉利用法は、加温・加水なし・入浴剤添加なし・循環・塩素消毒といった一般的なもので、無色透明の湯の味覚はまがうことなき塩味だが、残念ながら天然温泉の芳香は消滅し、塩素臭が臭うことになる。銭湯代わりの利用法ではこの施設で充分かもしれないが、私には再訪を思わせるだけの魅力はない。これが例えば、せめて小さな露天風呂だけでも、加温してもかまわないから源泉の塩化物泉をそのままかけ流してあれば、評価は変わってくる。今のままでは温泉愛好家には路傍の石に過ぎない。9人が参考にしています