-
縁あって笹屋ホテルの豊年虫に泊まりました。笹屋ホテルは大きく4つに分かれています。万松閣、清涼館、奥別荘、そして豊年虫です。それぞれ趣が異なりますが、中でも豊年虫は特別です。豊年虫は建築家の遠藤新が設計した建物で、2003年に登録有形文化財の指定を受けています。かつて志賀直哉がここに滞在し、小説「豊年虫」を執筆したことから名づけられたといいます。ちなみに豊年虫とはこの地方の言葉で「かげろう」をさすのだそうです。
「豊年虫」には客室が八つあり、一つとして同じ造りの部屋はありません。すべの部屋が庭に面し、趣の異なるお風呂がついています。もちろんどのお風呂も放流式。湯舟が小さいだけに大浴場のお湯よりもこちらの湯の方がいいように思いました。
笹屋ホテルは独自の源泉を持っていて、大浴場も部屋にあるお風呂も放流式になっています。大浴場は「石の湯」と「木の湯」があり、それぞれに大きな内湯と露天風呂が設けられいて、時間によって男女が入れ替わるようになっています。「石の湯」の内湯は円形の洒落た造りになっています。お湯はやや濁りがあり、湯の華が舞い、硫黄のにおいがしっかりしす。浴後は肌がつるつるになります。
泊りでは温泉とともに料理も楽しみ。ここでは料理にも心を動かされました。笹屋ホテルには複数の厨房があり、料理長も4人いるそうですが、「豊年虫」では専属の料理長が腕を振るっているそうです。見た目も美しく、上品な味の料理の数々、中でも「豊年虫」でしか味わえない料理、その名も「豊年蒸」は、和食の中に「洋」を取り入れた逸品で、形容しがたいおいしさです。わざわざこれを食するために「豊年虫」に泊まる方もいらっしゃるとか。ほかには冷しゃぶ、冬瓜の煮物も印象に残っています。冷しゃぶはお肉の茹で加減が絶妙でした。冬瓜は冷たくして出されたのですが、冷たくしても味を損なわないように、ほかのものよりしっかりとした味付けする細かな配慮がなされていました。ほんとうに料理は絶品ばかりです。
また、笹屋ホテルは接客もすばらしい。滞在中、ほんとうに快適に過ごすことができました。フロントにはコンシェルジュがいて、旅の相談にものってくれます。これも他の宿にはなかなかないことでしょう。
庶民にとってはおいそれと泊まることのできない宿なのですが、結婚20周年とか、何かの記念に泊まるのもいいかもしれません。11人が参考にしています