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長良川河口堰の程近く、なばなの里を挟んで、地元民のための共同湯が二つ存在する。北側にあるのが松ヶ島共同浴場で、南側の大島地区にあるのが大島共同浴場である。長良川で川魚を獲る漁師たちの船が停泊する入り江から少々奥に入ったところにひっそりと在る。観光客は恐らく訪れることがなかろうし、発見するのも少々難しかろう。私も近くまで行きながらも建物の在り処がわからず、地元民に教えを乞うた次第。夜間しか営業していないので、ますますわかりにくい。
建物自体は公民館とおぼしき小さなもの。番台もなく、100円の入浴料を箱に入れて入浴、当然のことながら私が入浴中には地元民以外誰もいなかった。ここは自治会が管理する施設である。
当然脱衣場も浴槽も小さなもので、脱衣場には鍵付きのロッカーなんてものがあるはずもなく、脱衣棚があるのみ。浴室内には4~5人はいればいっぱいになる小さな主浴槽ひとつとカランが三つ、入室するなり松ヶ島共同浴場と同様のモール臭、油臭とおぼしき匂いが鼻を衝く。長島特有の飴色の湯がかけ流されているのも松ヶ島と同じ。R15・R16の混合井を利用しているのも同じだから当然同じ湯である。
湯は少々熱めだが、源泉を一旦タンクに溜めて冷やし、その冷泉を水がわりにして利用することができるシステムで、浴槽の温泉を薄めることなく冷やすことができるのもありがたい。それもこの施設にとっては合理的なシステムで、真水を利用するとかえって高くつくことになる。
建物の裏側にまわってみると、温泉がホースからジャバジャバと垂れ流されていた。新鮮なかけ流しの湯に恋焦がれる私には随分勿体無い感覚に囚われる。
松ヶ島よりこちらがの方が新しいけれど、建造物が無機質で、その点で情緒に欠けるともいえる。しかし湯は極上で、すこぶる安価で素晴らしい湯を堪能できる。常連客の地元民は大概が漁師であることもあってすこぶる陽気で、話をするのも面白い。本来地元専用のこの湯に、最近はネットで検索して入浴しにくる人も増えた由。温泉好きには素晴らしい宝石に思えるが、あくまで地元民のための施設であることを意識して、謙虚に湯を堪能した。
意外と知られていないが、輪中は優れた温泉郷だ。0人が参考にしています