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山代を後にし訪れたのが、ここ城崎。その温泉街より少し外れ、幹線道路沿いに立つのが今宵の宿「大西屋水翔苑」である。この城崎にあって一際目を引く佇まいは、客室数は30程。この地に限って言えば大型宿であり新感覚の高級和風宿と言ったところかな。
端整で広々としている玄関。そこには畳が敷かれ、まるで茶室のよう。中庭には能舞台を設け、それを囲むように延びる畳敷きの回廊には趣きが感じられる。館内至る所に意匠を凝らした造りは、格調と落ち着きの中にも所々に華やぎを見せており素晴らしい。
通された客室は1階「玄武の間」。清々しい数奇屋の佇まい。間取りは本間10畳+次の間6畳+濡れ縁付き。水廻りも快適で女性には好評だ。雪見障子の向こうに見える小ぶりな坪庭が風情を添えているのもいい。静かな環境なのだが、仲居さんが出て行かれてからが大変。携帯でのやりとり、テレビのボリューム、室内をドタバタ。うるさくてたまったもんじゃない。ビールを半分程残し温泉へ向かった。
温泉だが小洒落た造りの大浴場に露天付き。私の嫌いなサウナも併設。大浴場は十分に採光が取られており実に明るい。壁には白木を施しタイルは青色で統一、見た目にもすっきりとした印象。石造りの浴槽は至ってシンプル。当日はほぼ満室。宿の規模からすると少し狭い気もするが、混み合うこともなく快適に入浴できたのは良かった。ガラス越しの先には小ぶりな岩露天。岩と言えば豪壮なイメージを描くけど、ここは至って優美な造りとなっている。脱衣場も清潔感があり、アメニティも万全。風呂上がりにはラウンジ「桃山」にてのんびりと寛ぎ、土産処では見るだけといった具合に一人の時間というのも貴重である。また、私は行かなかったが外湯(タダ券)への送迎もして頂ける。
食事は朝夕とも客室にて頂いた。「但馬路遊膳」というコース。「七湯めぐり」とある前菜は城崎の外湯をイメージしている楽しい一品だ。また、3段重ねの重箱で運ばれてくる出石皿そばだが、そのうち2段には器に盛られたそばを、残りの1段には薬味が入っているといった具合。そば好きの私には見た目にも嬉しい一品だった。他、但馬牛のサイコロステーキも思ってた以上にボリュームがあり美味しく戴けた。山海の新鮮な素材を調理している膳は、皆が満足できて良かった。食事後にはラウンジ「花衣」にて喉を潤すのもまた格別。朝食もまずまず、飯を3杯もおかわりしてしまった。
子供達が選んだこちらの宿へは初めての宿泊だった。電話予約の時から対応も良かったそうで、皆さんとても親切で温かみもあった。皆、口を揃えて「今度は友達と来たい」と言っていたのは、満足したからだろう。当然、私ももてなしの質の高さを肌で感じた。
帰り際にも2人のスタッフの方々に車まで見送りを受け、カゴに盛られたキャンディーを戴いた。色んなアイデアがあるのだなあと「貰った飴」を口にしながら帰路についた。また機会があれば再訪したい城崎の良宿である。(08,8月下旬宿泊)
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