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ここに着くや、女の人が近寄ってき、お風呂ですかぁ、と聞いてきた。建物の周りには廃材の山、そして鶏の鳴き声や獣の臭い。すぐさま私は龍門山温泉や木曽岬温泉などと同じにおいを嗅ぎ取り嬉しくなる。
浴場はいたってシンプルながら、湯は評判どおりのヌルヌル、他に人もいなかったので、体が火照ってくるとサッシを全開にし、裏の森林の空気を浴びる。
建物すぐそばの川では仕切りのなかでチョウザメがうようよ泳いでおり、驚くというか笑ってしまう。
ディープ紀州温泉の旅の締めに訪れたのがここでした。紀州の作家・中上健次は、紀州は鬼州とも喜州とも書けると言っていましたが、今回の旅、私にとってはまさに喜州の旅となりました。1人が参考にしています