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あの、親父さんは、そこに居た。
でんぽう でんわの看板、駄菓子屋の店先。
昭和三十年代だ。
初めてです。告白し、受水槽にかしずき聖水を授かった。
洗礼は炭酸ガスをモロに被ぶる
よきかな。コーラ一気飲みより炭酸ガスである。
そのとき、天が開いた。空に虹色の彩雲がでた。
よきかな。天国の階段があらわれた。
親父さんは、続けて、神の怒りである松代地震と
神の恩寵である松代温泉について述べられた。
次に如何に濃い泉質であるかを述べられた。
よきかな。coは72デナリcaは80デナリ、金と鍵を損なうな。
親父さんの指差した先はすぐ露天風呂である。
露天女性客と眼が合った。隔てる囲いは無い
よきかな。眼福であ・・・アー、エヘン。
汝らのうち、罪無き者だけが我を責めよ。
玄関、脱衣場と浴室、聖三位一体である。
源泉は泡立っているが、浴槽内は別に泡立たない。
灰汁だらけの苦汁に煮切り貝汁と炭酸の苦塩味、なにやら舌にザラツクものが残る
熱からず温からず丁度いい塩梅の湯温。
出湯口は灰色。1フィートも行かぬうちに、赤茶けた色に変化する。
鍾乳洞如き堆積物に圧倒される。
露天へもアダムとイブの子孫は玄関から出て青天移動する。
イチジクの葉っぱは纏っていない。
よきかな。彼らは原罪を知らない。
それを見た、洗礼中の夫婦は回れ右をした。
よきかな。彼らは原罪をしっている。
隣はなんかの会社、はす向かいには宅地
樹齢重ねた木は在るが、露天を囲っていない。
掘り抜きの浴槽は出入りにご神木やらお稲荷さんを晒してしまう。設備、入浴スタイルは数十年前のままだ。
それを同意できるかどうか、だ。
天国の門は誰にでも開いているが、入りづらいのが真実である。
我は温泉に入る時のみ原罪を忘れる。
罪深き我をすくい給へ。
エーメン8人が参考にしています