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住宅街の中にあり、車を運転しながらでは簡単に発見できないだろうなと思いながら、城見通りを東行き、今里筋を越えて二番目の信号を曲がるとすぐに建物が現れた。不動の湯よりわかりやすい場所にある。
早速浴室に入ると、中央に長方形の大きな浴槽が鎮座、その主浴槽の一番奥はジャグジーとなっている。主浴槽には電気風呂と水風呂が連なり、水風呂以外の浴槽には天然温泉が満たされている。色合いは黄色もしくは薄い褐色、内湯の天然温泉の湯温は比較的高い。単調な浴槽の並びだが、限られた空間で、天然温泉をできるだけたくさんの人に堪能してもらおうと考えると、このようなレイアウトが合理的ではなかろうか。機能的で、好感が持てるレイアウトだ。
さて、露天風呂に目を移すと、これまたシンプル、うなぎの寝床の如き細長い浴槽に、源泉の湯がパイプから注ぎ込まれている。構造上、浴槽の淵に頭を預け、足は壁につけて、もしくは足も反対側の淵に乗せながら、ゆーらゆらと至福のポーズで入浴することとなる。露天とは申せ、見えるのは空のみ、私は台風一過の後に入浴したため、入浴客は少なく、源泉の湯をほぼ独占できる幸福に預かった。
源泉を注ぎ込んだ露天風呂の泉質は素晴らしい。お湯はぬるめで、いくら長湯をしてものぼせる心配はないほど。注ぎ口の湯をすくってみるとかなり湯温は低く、浴槽の一番奥の底にある注入口から暖かい湯が加水されている様子、たとえ加水されていたとしても、柔らかな肌触りと気分を沈静化させるぬるめの湯に、充分天然温泉の魅力を堪能することができる。東北あたりの湯治場の雰囲気に近い。
源泉注入口の湯を口にふくんでみると、塩味はほとんど感じられず、若干の金気臭と硫化水素臭、いかにも天然温泉らしい。手書きで、「飲用されても一切責任は負いません」と表示されてあるのはご愛嬌。
凝った設備など何もない。サウナもない。ここにはそんなものは不要だろう。源泉を重視した素朴な露天風呂を味わうだけで大満足なのは私だけではあるまい。この姿勢に私は敬服する。このまま、何も足さずに、何も引かずにいて欲しいと切実に思う。それだけで素晴らしい銭湯なのだから。0人が参考にしています