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矢田生活協同組合が運営する銭湯。銭湯とは言え、天然温泉が湧く温泉施設である。大阪市内で、銭湯料金で天然温泉に入浴できる温泉施設は数件あるが、ここは飲泉も可能な充実した施設で、注目に値する。
設備はさすがに古く、洗練された雰囲気は一切ないと言ってよい。外装も内装もかなり年数が経過し、そして利用者もかなり年数が経過された方々ばかりで・・・・館内に流れるのは演歌、一貫して演歌なのである。ここではやはり演歌が似つかわしい、ショパンのBGMの雰囲気ではない。
浴室の入口には飲泉の設備と冷水機が設置され、サービス満点、さて、浴室内には、大きな主浴槽が中央に鎮座し、奥に水風呂と電気風呂、サウナまである。ただしサウナも水風呂も広くはない。
露天にも10人程度入れる露天風呂があり、若干内湯より湯温が高く感じられる。露天とは申せ、左右が浴室の建物に囲まれており、見えるのは空だけなのは仕方あるまい。
水風呂以外の湯はすべて天然温泉で満たされ、ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉は薄い鶯色とおぼしき色合い、無臭かつ無味だが、飲泉してみると、若干の金気を感じるものの、塩味はほとんど感じられず、飲みやすい温泉である。
特段小奇麗でもないこの銭湯に惹かれるのはなぜだろう。年寄りが実に気持ちよさそうに湯船に浸かっている姿や、隣の人の背中を流す姿が目に付くこの銭湯には、もはや失われた昔の日本があるからだろう。そんな面影が大阪の下町に残存している。幸せそうな年寄りの表情を見るにつけ、桃源郷とはこんなところなのではないかとの思いがよぎる。まさに庶民のオアシス。
名は体を表すと言う。ふれ愛温泉矢田という屋号は、この銭湯を見事に表現していると思われた。1人が参考にしています