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奥津バイパスから旧国道にそれ、奥津渓の圧倒的な紅葉の中、車をゆっくりと走らせていくと、そこに「般若寺温泉」はあった。
ガレージに車を止め、竹林に囲まれた石段を降りていくと、萱葺屋根に覆われた立派な母屋が見えてくる。もうこの時点で胸が一杯になり、気持ちがはやって仕方が無い。若旦那さんに受付をしていただき、気もそぞろに説明を受けて早速入浴する。
湯小屋は、外見はコンクリートで作られたシンプルなものであるが、中へ入ると雰囲気は一変する。壁は大きな岩そのもので、まるで洞窟風呂のようである。内湯は入った瞬間からそれと判るほどの、pH9.2のツルスベの極上湯。
これだけでも大満足なのであるが、圧巻は露天風呂。目の前の真っ赤に燃える山を見、「鮎返しの滝」の音を聞きながら入る風呂はまさに至高の贅沢で、とてもではないが貸切時間の一時間では足りるまい、と感じてしまう。ここは近くの大釣温泉から見られる可能性もあるが、温泉好きならばそんなことは何の問題にもならないであろう。
こちらの温泉には三つの源泉(39度の自噴、40度・42度のポンプアップ)があり、これらを季節によって使い分けているようである。今の時期は内湯が39度と40度の混合泉、露天には42度の源泉を使用しているようであるが、何といっても私達が気に入ったのは39度のお湯であった。このお湯は洗い場の石と石の間から流れ出ていたものなのだが、一番ハッキリとツルヌル感を感じることが出来た。
冬場は42度の源泉を内湯に引き、露天風呂は閉鎖するとのことであるが、川に面した内湯の窓は大きく開け放つことが出来るので、雪見風呂も愉しむことが出来そうだ。春はコブシや石楠花の群生、夏は新緑やカジカガエルの鳴き声等々、どの季節にお邪魔しても五感すべてで私たちを癒してくれること請け合いである。
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