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奥津温泉は、湯原温泉、湯郷温泉と並んで美作三湯のひとつだが、最も鄙びた温泉郷で規模も小さい。湯はアルカリ性単純泉で清明、静寂の地に湧く名湯だ。美作三湯のうち私は最も奥津温泉が好ましいと思う。
吉井川沿いに源泉かけ流しの宿が三軒並んでいる。橋に近いところから奥津荘、東和楼、河鹿荘と並び、真ん中にある小ぶりな宿が東和楼だ。昭和3年に立てられた三階建ての建物は歴史を感じさせる。この温泉郷にはこのような建造物が似合う。
500円で立ち寄り湯が可能である。浴室は階段で地下に下り、地下のトンネルをくぐってアプローチするという愉快なもの。浴槽は河原の岩盤を利用してある野趣豊富なもので、大きくはないが、水深は大人の胸あたりまである結構深いものだ。男湯と女湯は浴槽がつながり、一緒の湯なのだが、男湯の方は足下から源泉が湧き出す結構なものである。それも、かなり豊富な湯量だ。お隣の奥津荘の鍵湯も足下湧出の有名な湯だが、こちらも勝るとも劣らぬ温泉だ。泉質はアルカリ性単純泉で個性はないが、肌になじむしっとり感は美人の湯と称されるだけある。
女主人は愛想良く、立ち寄り湯の私にも丁寧に対応して頂き、温泉のみならず人柄にも感激した。ゆっくりと宿泊すれば、浮世の憂さを解消できそうだ。9人が参考にしています