あの世とこの世の境目にある硫黄泉
[青森県] 恐山温泉
今回の温泉探訪記ガイドはこの人
東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター)。
交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床にて、車でヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は1,500以上。
滋賀県の「比叡山」、和歌山県の「高野山」とならび、「日本三大霊場」のひとつに数えられる青森県の「恐山」。死者を呼び寄せる「イタコの口寄せ」で有名ですよね。しかも、あの世とこの世の境目である「三途川」も流れています。そんな「恐山」、実は立派な温泉地。「恐山菩提寺」の境内には、合計4ヶ所の湯小屋が存在しています。
本州最北の地・下北半島の山奥
「恐山」は、本州最北の地・下北半島の山奥に位置し、開山期間は毎年5月1日~10月31日と、入山は夏季のみ。冬季は大変雪深く、周辺道路含め、完全閉鎖となるんだそうです。まさに日本を代表する霊場らしい、「極限の地」といった感じです。
また、周辺には高速道路や主要な鉄道もなく、青森市の中心地からでも片道3時間弱もかかり、アクセスは最悪。訪れるだけでも、かなりの覚悟が必要となる、とても「ヘヴィな霊場」です。
入山料は500円
「恐山菩提寺」の入り口で、入山料500円を納め境内へ。
お目当ての温泉は、広々とした境内に、ぽつんぽつんと4ヶ所点在しています。どれも木造の風情ある湯小屋。そして嬉しいことに、4ヶ所とも無料!つまり入山料の500円を納めれば、すべて入り放題なんです。(男性用、女性用、混浴、男女交代制の4ヶ所のため、入れるのは最大3ヶ所)
境内の中心「薬師の湯」
まずは境内の中心に佇む「薬師の湯」へ。
中に入ると、扉や洗い場はなく、簡易的な脱衣場と浴槽のみ。外観同様とてもシンプルなつくりの、湯治場的な雰囲気。浴槽には美しい乳白色の硫黄泉が、コンコンと注がれ、生き生きとした新鮮な硫黄の香りに包まれています。
お湯は舐めるとかなり酸っぱく、入るとピリッと刺激的な浴感です。「霊場」のお湯らしく、「身を清める」には最適。あの世とこの世の境目で、「極楽」な湯浴みを堪能できます。
恐山温泉唯一の混浴「花染の湯」
他の湯小屋から少し離れ、境内脇にある宿坊の裏手に佇む「花染の湯」。あまり目立たない場所にあり、人気も少なく、恐山温泉の中では「穴場」的なスポットです。のんびりゆっくり入りたい方にはちょうどいいですが、「混浴」なので女性は注意が必要かもしれません。
ここのお湯は、他の湯小屋と異なり、透明の硫黄泉。湯温は熱めで、入るとすぐに茹で上がります。たまたま一緒だった常連さんいわく、浸かると肌が赤く、美しく染まることが由来で、「花染の湯」となったんだそうです。また、以前は恐山の参拝者全員に「禊の入浴」が義務付けられていたんだそう。そんな歴史を感じながら入る、とても「有り難い」お湯でした。