神奈川県の秘湯・珍湯・怪湯?でも名湯 星山温泉・稲龍神山スポーツランド
[神奈川県] 星山温泉(閉館しました)
今回の温泉探訪記ガイドはこの人
温泉ソムリエのイカ燻です。
泉質に関わらず個性的な温泉に興味があり、噂を頼りにあちこち出没しています。
温泉ソムリエ認定セミナーの東京会場でお手伝いさせていただいています。
ソムリエタオルで鉢巻している私を見かけたら、お気軽にお声掛け下さい。
インターネットが普及したおかげで「秘湯」の存在もポピュラーになり、ずいぶん気軽に行けるようになりました。 しかし中には住所は分かっていてもカーナビには出て来ない、住宅街のすぐ近くなのに季節や天気によってはたどり着けない、着いてビックリどうやって利用したらよいか分からない(笑)なんていう、文字通りの珍湯もございます。
この星山温泉は葉山御用邸の裏山にあるのですが、アクセスが未舗装の急坂、しかも夏場は木が茂ってとっても狭い。 梅雨時など道がぬかるんで、普通の車では登れずにスタックしたり、帰り道でスリップして林に突っ込むなど、散々な目に遭う覚悟をしてからアタックしなければなりません。
たどり着いたが、どうしたらいいの?
狭い山道を登りきると森に囲まれた広場に出ます。 どうやら着いたらしいのですが、そこにはうず高く積まれた廃材の山と、廃材の原料・・・失礼、怪しげな小屋がいくつか並んでいるだけ。 一体どこに温泉があるのでしょう?
車を置いて近くの小屋に歩いて行きますが、人気がありません。 さて、どうしたものかと悩んでいると、坂の下からスクーターのエンジン音が。 やがてスーパーカブでオジサンが現われ「温泉入るの?」と聞かれました。
オジサンはこの施設のオーナーさんで、山道の入り口にある家に住んでおられます。 今回は私の車の音に気が付いたから追いかけて来たけれど、見つからなかったら家の方で声を掛けてくれ、との事。
そんなに無防備な温泉なら、黙って入っちゃえば入浴料払わずに済むぞ!なんて不埒な考えを持ってもダメでした。 ここは湧出温度が16℃の冷鉱泉で、お客さんが来るたびにオーナーさん自らが薪で炊いて温める、というシステムなんだそうで。 ちなみに入湯料は1人500円です。
高く積まれた廃材は、風呂を沸かすための燃料なのでした。 広場でのんびり景色を見ていると、やがて湯小屋から青い煙が昇り始めました。
これが温泉か? 初めて見るタイプの浴槽と壁画(笑)
脱衣所が駐車場から丸見えなのは野湯で慣れてはいるけれど、そこから浴室に入ると過去に見た事の無い景色にインパクトを受けます。 板敷の浴室の真ん中にステンレス浴槽が一つ。 団地サイズです。 それに水道の蛇口が一つ。 左の壁には小学生の絵のような海の景色が描かれています。
この蛇口は、小屋の外の井戸につながっていて、16℃の冷鉱泉が出てきます。 それを浴槽に溜め、すぐ裏のボイラーにくべた薪で温めます。 まさに源泉かけ流し(加温だけどね)、鮮度抜群の湯です。 「温泉」と称していますが、温泉かどうかはよく分からない。 温泉分析書も有りません。 オーナーさんに尋ねると、「あ~、昔調べに来た人もいたけど、アレお金かかるんでしょ?」(笑) 超アバウトです。
しかし、お湯の方は質が良く、美しく透明で滑らか。 味と香りからすると炭酸水素の豊富なアルカリ単純泉でしょう。 ミネラル分が少ないせいか引っ掛かりが無く、ヌルツル感の強い、化粧水のような湯です。 源泉を薪で炊いているのも、湯を柔らかくしている秘密かもしれませんね。 これはまさに名湯!です。
休憩所はお客さんが勝手に建てちゃったとか・・・
湯小屋の外には二棟の小屋が建っているのですが、そちらは休憩所だそうです。 なにせ浴槽のサイズからして、一度に二人入るのが限度。 それも毎回水をはってから薪で沸かすので、交代にも時間がかかります。 天気の良い週末には5~6台の車が来て半日以上待つこともあるそうです。 二棟ある休憩小屋の小さい方は、そうした常連さんが廃材を利用して勝手に建てちゃったとか。
休憩所の中も超エキセントリックです(笑) 写真は、元体育館だったという大きい方の休憩所。 コタツにちゃぶ台、屏風もあれば壁には紅白の横断幕。 まるで骨董品の倉庫みたいです。 休憩所とは呼ばれていますが、建築基準なんて満たしている雰囲気はなく、いつ倒壊しても不思議ではないスリリングな体験。 湯上りに涼むにはいいのかもしれませんが・・・。
都市近郊に残された貴重なパワースポットかも
突っ込みどころが満載の温泉(ではないかもしれない)ですが、泉質に関しては文句のつけようも無く、そして森に囲まれたこの場所の「気」が素晴らしい。 源泉井戸の奥には小さなお社が2つあり、観音様と龍神様が祭られています。 木々の間を神聖な風が吹き抜けるのを感じます。 この山の反対側は皇室の葉山御用邸だそうで、多分この土地は昔からパワースポットだったんじゃないでしょうか。
もともとはオーナーさんの先代が、近所の子供が遊べるようなフィールドアスレチックの公園を作り、稲龍神山スポーツランドとしてオープンしたのですが、訪れる子供が徐々に減り、泥んこの子供達を洗うために作った浴室だけが残ったのだそうです。
この施設では大勢の来客があれば大変だし、かと言って寂れて閉鎖されるのも悲しいし、このアクセスの悪さがちょうどいいのかもしれません。 いつもでも残って欲しい近場の秘湯でした。
「たどり着いたが、どうしたらいいの?」・・・ウケました~!
僕は意外とマニア度が低く、ワイルド系も得意とは言えないんです。
それだけにこのような秘湯・珍湯・怪湯のことはあまり知らないので、参考になりました♪