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サウナ×アート

サウナ1300年の歴史と
六本木の壮大な挑戦

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猪子寿之
猪子寿之

1977年徳島県生まれ。東京大学卒業と同時に「チームラボ」を創業。 チームラボはさまざまなものづくりのスペシャリストから構成されているアート集団。 2021年にはサウナとアートを掛け合わせた前代未聞の「チームラボリコネクト」を開催。

猪子寿之の超個人的ベストサウナ

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- サウナにハマったきっかけを教えてください

2015年からはじめて今年で9年目。佐賀の御船山楽園で「かみさまがすまう森」っていう展示をずっとやってるんだよね。サウナーの人には「らかんの湯」でお馴染みの御船山楽園。

チームラボ《夏桜と夏もみじの呼応する森》の写真
チームラボ《夏桜と夏もみじの呼応する森》©チームラボ
チームラボ《廃墟の湯屋にあるメガリス》の写真
チームラボ《廃墟の湯屋にあるメガリス》©チームラボ

「チームラボ かみさまがすまう森」。御船山楽園、御船山ホテルにまたがる50万坪もの広大な敷地に展示されるアート群。2021年にはCNN「行くべき世界の屋外アート展」にも選出。今夏も開催予定。

御船山楽園ホテル「らかんの湯」の写真
御船山楽園ホテル「らかんの湯」。3年連続サウナシュラン1位を獲得して殿堂入りした、サウナ好きなら一度は行ってみたいサウナ。

だから御船山楽園の小原代表とは今の「らかんの湯」が出来る前からずっと一緒に仕事をしてきたんだけど、その小原さんがサウナを作り始めて「良いものが出来た」って言うから一緒に入ったのね。その時に入り方を教えて貰って、サウナに入って、アート見て、酒飲んでね。その体験がすごく良かったんだよね。感覚が今までと違うの。

「こんな良い体験、絶対昔からあるだろ!?」って思って調べたんだよ。「『これが良い』ってことは誰かが気付いてるよな!?」って。そしたら「淋汗(りんかん)茶の湯」っていう文化がかつてあったの!室町時代に、奈良の興福寺が中心になって日本全国で行われてたんだけど、風呂場に絵や香炉、花入、掛け軸を飾り、お風呂上りにお茶や酒をふるまうていうね。当時の風呂は、湯ではなく、蒸し風呂だから、今でいうサウナ。まさに同じでしょ?

サウナって、フィンランドが発祥って言われてるじゃん?日本ではそのフィンランドのサウナが1964年の東京オリンピックの時に入ってきて広がったっていうのが定説なんだよね。でもそういう簡単な話じゃないんだと思うんだよ。

だって、日本のこのサウナブームは水風呂とセットだけど、フィンランドのサウナって水風呂が無いじゃん。「フィンランドでは水風呂のかわりに湖に入るんだ」って言うんだけど、ヘルシンキの街中のサウナにいつも湖あるわけないからね!(笑)

気になるから東京にある、オリンピックの前から営業してる地元の実家の近所の古い銭湯に電話して聞いたのよ。「水風呂はいつからあるんですか」って。そしたら「創業以来ずっとある」って言うのね。その銭湯は創業以来熱湯なんだよ。つまり、フィンランドのサウナが日本に入って来る前から日本に熱湯と水風呂での温冷交代浴の文化はあったんだよ。その文化とインフラがあって、そこにフィンランド式のサウナがくっついたっていうのが正しいんじゃないかと思って。それで面白くなってきて色々調べたら、行基に行き着くんだよ。

- 行基って、東大寺の大仏を作った行基ですか?

そう。1300年前、奈良時代の僧。調べると、行基ってあちこちでお風呂を造ってるんだよ。高松には行基が作ったとされ、日本に現存する最古のサウナの一つである「から風呂」が今も残ってるし、大阪の堺にも痕跡がある。東大寺にも蒸し風呂、まあサウナだよね。その痕跡が残ってる。そもそも「風呂」って蒸し風呂を指す言葉だしね。

行基は日本のあちこちで「功徳風呂」って名前のふるまい蒸し風呂、つまりはサウナを作ったの。そうすると民衆はお風呂目当てに集まるじゃん。仏教に興味がなくても、お風呂には入りたいから。

そして滝行とかもそうだし、水垢離(みずごり)って言って基本的に体を清めてから行うじゃん。だからもうその頃にはサウナに入って、井戸水をかぶってみんなととのってたんじゃないかって(笑)

- 1300年前から日本人はととのっていた、と。

そうそう(笑)それで、サウナに入って、井戸水をかぶって、ととのってる時に耳元で念仏唱えられる。

行基は、土木や治水を行って、具体的に豊かにしていくんだけど、治水工事っていうのは、大規模な協力体制によってはじめてできる。ハラリの「サピエンス全史」に詳しく書いているけど、大規模な協力体制ってのは、宗教が必要なんだね。サウナで寺に人を集め、ととのった状況で宗教を教え、大規模な協力体制による工事ができるようになって、治水を行って、具体的に豊かにした、とも言える。

- 御船山楽園にも行基にまつわる五百羅漢がありますね。

それなんだよ。行基も御船山楽園に来てるの。だから1300年の歴史の、連続性の中に「らかんの湯」も「かみさまがすまう森」もあるんだよね。

行基が寺に蒸し風呂を作って、功徳風呂として民衆の公衆浴場となって、淋汗茶の湯があって、銭湯がある。巨大な銭湯のインフラがあって、そこに水風呂があったからこそ、今のサウナブームが生まれる。
でね、これはちょっと信じられないような話なんだけど、「かみさまがすまう森」をずっと構想していた時にね、ふと「あ。御船山楽園のあの崖※登ったら行基が彫った仏像がまだ残っているんじゃないか」って思ったんだよ。

御船山楽園ホテルの写真
画像提供:御船山楽園ホテル この画像で言うところの③の崖を指す。普段は立ち入る事が出来ません。

夜中だったんだけど、すぐに小原さんに電話して「あの崖!あの崖に登ってみて!」って言ったんだよね。そしたら小原さんが「わかりました!」って次の日の朝登ってみたらしい。そしたらそこに洞窟があって仏像がいた、って!

該当の仏像の写真
後日撮影した該当の仏像。御船山楽園ホテル代表の小原氏もここに仏像がある事は知らなかったらしい。

- そんな事が……。

ね。だから全ては歴史の連続性の中にあるんだなって。あそこで小原さんがサウナをやりはじめたのも全部宿命なんだと思う。

- 六本木で、前代未聞のアート×サウナの「チームラボリコネクト」を開催したのもその連続性なんでしょうか

サウナ浴のあとにアート作品を鑑賞する斬新なスタイルの「チームラボリコネクト」の写真
六本木で開催されていた、サウナ浴のあとにアート作品を鑑賞する斬新なスタイルの「チームラボリコネクト」

あれはね、ちょうど東京オリンピックの年だったからね。ととのうというサウナ文化は、今の日本を代表するような文化だし、その背景には1,300年の風呂の歴史があるし、日本に来た世界中の人に「東京やばかった」って楽しんで帰ってもらいたいじゃん。世界では、アートってのは、権威があったり素晴らしい建築だったりする「いい場所」で見るんだけど、東京来たら、裸にされて、サウナ入って冷水被らされて「いい状態」にさせられて、アート見たって!
そしたら、日本は、オリンピックでは海外の人を日本に入れない!って!。無観客試合。俺らも、無観客試合。もう、しんどすぎる。



※この記事は個人の感想であり、効果・効能を示すものではありません

写真提供:猪子寿之
取材・文:豊田佳高
編集:ニフティ温泉編集部

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