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この入浴施設は敷居が高い。場所を特定して入浴しようとしてもすぐには利用できない、という意味で敷居が高いのである。別段高級施設で入浴料金が半端じゃないとか、貧乏人には入りにくいほどの門構えであるとかといった意味ではない。
ここは「NPOみなと」という特定非営利法人が運営する施設で、趣旨を理解のうえ入会して年会費2,000円を支払い、やっと入浴資格が得られるのである。入会のためには昼間に一度訪問せねばならず、私のような勤め人はそのために休暇をとらねばならない。そういう意味でハードルが高いというか、敷居が高いのである。
飽くまでこの施設は会員の福利厚生の一環というのが建前で、私のような温泉好きが、天然温泉に入りたいという下心丸出しで会員登録に赴いて「温泉に入りたいんですけど」と言うと、「ここは温泉の施設ではないんです」とピシャリと釘を刺されることになる。かのように、まことに敷居が高いのである。
しかし、一旦登録してしまうと、都心の秘湯ともいえる豪快な源泉かけ流しの湯を200円で堪能できる。これは魅力だ。
廃工場の従業員入浴施設を利用した浴室はかなり広く(女湯は広くはない)長方形の石造りの浴槽とステンレスの浴槽が平行に配され、太いパイプからは源泉がドバドバ浴槽に注がれている。源泉の量は半端ではなく、カランの湯もシャワーもすべて源泉、全身に混じり気のない純粋のかけ流し天然温泉を浴びることが可能で、温泉好きにはまことに有難い。
源泉温度は45度くらいらしく、浴槽の温度は42~43度といったところ。少々熱く感じられるのが欠点だが、ステンレス浴槽には仕切りがあり、手前側は湯温が比較的低く長湯が可能。また冷水の出るシャワーも備えられているために、温冷交互浴も可能。
天然温泉の泉質は、登録された入浴施設ではないために分析表が貼られているわけでもないので、推測の域を出ないが、恐らく単純泉かナトリウムー炭酸水素塩泉といったところ。透明だが微褐色の金気臭のする良い温泉である。色彩も芳香も大阪湾周辺地域によくある類のもので、尼崎の戎湯の湯温を少々高くしたものを想像してもらえれば結構かと思う。
当然のことながら、一般開放された入浴施設ではないので、入浴セットの類は自分で持って行く必要がある。また、会員以外の方が非会員価格で入浴しようとしても、NPOの趣旨から絶対に不可能であることに注意のこと。様々なハードルをクリアしさえすれば、極上の天然温泉を安価で堪能できる。事実、近所の銭湯がぼやくほどに、近隣には会員が多いらしい。知る人ぞ知る、都心の秘湯だ。
興味ある方は、まず会員登録を!1人が参考にしています