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ある日、自宅でインターネットを見ていました。地図を見ていると、妙義の山並みの更に北、横川やら坂本宿やらの先、旧18号のつづら折りから、一本横に逸れた道を発見しました。その道を辿ってみると、その先に「霧積温泉」と書かれた温泉マークを認めました。すぐに興味を持ち、早速調べてみると、若女将が作っているブログを見つけました。公式サイトもあり、どうやら秘湯の中の秘湯とも言われる、筋金入りの秘湯である事が書かれていました。これは是非行かねばと思い、すぐに電話しました。すると若主人らしき人が出て「明日ですか?それなら朝9時頃からやってます。ただしきりづみ館から更に30分ほど歩きますが、大丈夫ですか?」心配する若主人。それもそのはず、この秘湯は金湯館ときりづみ館との2軒があり、その内きりづみ館は車でも行けますが、金湯館はきりづみ館から更に奥地、1キロも歩かなければならないとの事。それでも、まだ20代の健脚ならば問題なかろうと判断し、翌朝を迎えた訳です。
翌朝、坂本宿から県道に折れ、霧積湖を横目に県道を走ってみると、なるほど道幅は狭く、車のすれ違いはほぼ不可能な峡路となっていました。バイクですからその点は問題ありませんでしたが、道に積もった砂が少々気になりました。無事にきりづみ館まで来て、山道を歩きます。かなり急峻な道で、けもの道を言うべき道を約800メートル、その後300メートルほどの道を歩き、眼下にようやく金湯館が見えてきました。すると金湯館の建物から、犬の吠え声が聞こえてきます。階段を下りてみると、一番最初に二匹の犬が出迎えてくれました。さすが”犬が発見したと言われている”という逸話が残されているだけの事はあります。
湯殿のラインナップ
洗い場(水が出る蛇口4つ、カラン?、シャンプー等あり)
浴槽(38℃程度、温泉)
犬の後に出てきたのは老主人。しかし氏は「小さい犬は噛みますから手を出さないでくださいね」と忠告をして、その手には噛み跡を絆創膏で貼っていました。犬は館内にまで入り、自由に往来していました。
温泉は小さな湯の華のようなチリが認められ、泉温は38℃程度のぬるま湯。入ってみると体中には気泡がまとわります。豊富な湯量があり、湧出口付近は岩がしつらえてあります。その岩肌には繊毛のような白い苔様のものが水流と共にうねっていました。
お風呂から出ると、老主人が出してくれたお茶と茶菓子をいただきながら、大女将の話を聴いていました。どうやら先日の地震で、湯温が2℃ほど低くなったとの事で、水でも入りこんでしまったのかなというお話でした。また計画停電が起こった場合に備え、太陽電池式の灯りを準備していると言う話もしてくれました。
帰り道、きりづみ館まで無事に戻ってきて、バイクで県道を走っていたら、砂にタイヤを取られてスリップし、転倒してしまいました。幸い怪我も擦りむいた程度で済み、バイクにもダメージが無かったので、すぐに復帰しました。往く者だけではなく、帰るものにも厳しい・・・秘湯の中の秘湯の、その恐ろしさを垣間見たような思いでした。しかしそれでも、またこの地に戻ってきたいと言う思いは変わりありませんでした。数多くの文人が愛する訳が、静けさの中に少しだけ垣間見えたような気がしました。14人が参考にしています