館山の農村に湧く秘湯は、にゅるんにゅるんのモール泉でした!
[千葉県] 正木温泉(閉館しました)
今回の温泉探訪記ガイドはこの人
東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター)。
交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床にて、車でヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は1,500以上。
その存在を知ってから早数年。念願だった「正木温泉」へ行って参りました。
温泉が湧いているとは思えない農村地帯。鄙びきった農家の建物。かけ流しで、にゅるんにゅるんのモール泉。万人受けする温泉ではありませんが、僕の好みにはドンピシャでした!
館山市郊外の農村
千葉県館山市の郊外。温泉地とはかけ離れた農村地帯に、「正木温泉」はあります。
南房総の穏やかな気候の中、南国チックな素朴で鄙びた建物は、一見、農家にしか見えません。入り口の「正木温泉」という看板で、かろうじて温泉とわかります。
ちなみに、正木温泉さんの本業は、温泉施設経営ではなく農業。本物の農家さんでもあります。
館内は手作り感満載
都会とは一線を画す、のんびりとした空気の漂う正木温泉。庭先は人気もなく、一瞬不安になりますが、玄関からはテレビの音が聞こえ一安心。声をかけると、感じのいいおじいちゃん(ご主人)が対応してくれます。
館内は手作り感満載。高いトタンの天井からは、天窓の如く光が取り込まれ、館内とは思えない明るさです。奥に見えるご主人手書きの説明板も素敵です。なんといっても、この鄙びに鄙びきった空間は、一見の価値有りです。
タイル張りと丸窓が美しい浴室
浴室は意外にも男女別になっていて、それぞれにコンパクトな浴槽がひとつあります。
画像は男性側。四角いモザイクタイルに、竹を配した壁が昭和の雰囲気を醸し出し、正面の丸窓が美しい空間です。画像ではわかりませんが、丸窓からは外のヤシの木等、南国情緒溢れる素敵な風景を望みます。
もちろんお湯も秀逸。泉質は、含硫黄・ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉。源泉温度14.6度の冷鉱泉です。それを加温のみで贅沢にかけ流し。塩素は使用せず、高温での殺菌とのことです。透明度30~40センチのモール泉は、にゅるんにゅるんの肌触りが気持ち良く、湯温は熱めの適温。含硫黄泉ですが、香りはほとんどなく、ほのかに木の甘い香りを感じる程度です。タイル張りで、独特の鄙びた雰囲気と合いまって、至福の湯浴みを堪能。湯上りは、いつまでも汗が引かず、にゅるんにゅるんの肌触りが、そのまま肌に乗り移ったかのようなスベツル肌になりました!
お土産に源泉2リットル
帰りがけ、源泉2リットルをお土産でいただき、ご主人と温泉談義。お土産の源泉は、浴びるも良し、煮沸して飲むも良し、とのこと。
聞けば、ご主人は、農薬による中毒により、一時半身不随に陥り、この温泉に浸かり、飲用し、わずか一ヶ月で復活したそう。そして、その源泉パワーを知ってほしいと、再三度外視で一般開放しているんだそうです。
それ故、観光目的ではなく、湯治目的の方が多いそう。すごく効くお湯だから!と誇らしげに話すご主人が、とても微笑ましく、いつまでも残していってほしい温泉だな、と強く思いました。