ココロとカラダをととのえる“暮らしの主人公Stories”

“Something Good” 日々の小さな幸せを大切にしたい

2012年のオープン以来、源泉掛け流しのお湯と地域の食材を取り入れた食事処がとても評判で、歴代のニフティ温泉年間ランキングでも上位常連である埼玉で人気の温泉施設「杉戸天然温泉 雅楽の湯(うたのゆ)」。今回はこちらの施設にオープン前から携わり、地域との繋がりを大切に様々なアイデアを具体化させてきた副支配人の天野正明さんにインタビュー。

日々のささやかな接点を大切にされているSomething Goodや従業員との15秒トークなど、ご自身のこだわりや習慣についても教えていただきました。

Profile

天野 正明 あまの まさあき

杉戸天然温泉 雅楽の湯 副支配人

住まいは施設から車で20分程度の場所で、妻、息子(19歳)と3人暮らし。東京デザイナーズ学院グラフィックデザイン科卒業。数社の広告代理店に勤務後、企画・デザイン会社を約10年経営。独立時代に行った沖縄八重山諸島の取材を通じて触れた温泉文化に心を奪われ、温浴業界に足を踏み入れる。趣味はクラシックから演歌、ジャズ、ロックなど広いジャンルの音楽鑑賞。

INDEX

八重山諸島の絶景風呂がきっかけ

もともとは広告代理店に勤務したり、企画・デザインの会社を経営していたのですが、その一環で八重山諸島の観光誘致の仕事を現地の役場さんや企業の方と行う機会があったんですね。その時に小浜島や西表島で入ったお風呂が絶景の中にありまして、心も体も頭もリラックスして、それがすごく贅沢な時間に感じたんですよ。それでお風呂文化の良さってこういうことなんだと思い始めました。

「雅楽の湯」にはもう開湯前の12年前から勤務していますが、ここで働き始めたきっかけは、さいたま市にある姉妹店の「さいたま清河寺温泉」なんです。当時住んでいた都内の家は隣の家の壁との間が10センチぐらいしかなく、とても窮屈に感じていただけに、西大宮駅から長閑な道を歩いた先にあった「さいたま清河寺温泉」の大パノラマ竹林に感動しちゃいましてね、それで約1年後に、求人もしていないのに「社員で雇ってください」と厚かましくもお願いしちゃったんです。

そうして働くうちに、引っ越してきた埼玉県久喜市の隣町、杉戸町に新しい温浴施設を建設すると知り、家も近いということで、現在の「雅楽の湯」に配属されました。当時はまだ基礎工事の最中で、しばらくは長靴を履いてプレハブの事務所に出勤する日々でした。

「雅楽の湯」はもともと大農家の跡地なのですが、90年程前からある素晴らしい屋敷林が残されていたんですね。これを露天風呂の借景にしたら面白いんじゃないかって経営者が考えまして、当時の果樹、グレープフルーツやカリンの木も中庭に残しました。玄関前の柿の木もそうです。

雅楽の湯の中庭のカリン(左)とグレープフルーツ(右)の木(ご本人提供)

「ちょっと温泉旅行気分♪」をコンセプトに

「雅楽の湯」の公式サイトを開くと、一番上に版画調のゆらゆらと動くイラストが出てきます。実はあれ、僕が描いたものなんです。どこの版画作家に頼んだのですか?って聞かれると、「やったぁ!」って思いますけどね、僕が描いたとわからなければ成功。

あの宿場町をイメージしたイラストの中にもこだわりがたくさん詰まっています。まず橋を渡ってくる。施設のコンセプトが「ちょっと温泉旅行気分♪」なのですが、ここからストーリーが始まるんです。

公式サイトトップページのイラスト(ご本人提供)

川(大落古利根川)には毎年8月に杉戸町で行われる流灯祭りの灯籠が流れ、橋を渡るとうなぎ屋さん、豆腐屋さん、造り酒屋さん等があります。その先に「雅楽の湯」があって、後ろには筑波山がそびえている。こんな風に杉戸町という地域全体を楽しんで、旅行気分を味わってもらえる温浴施設でありたいんです。

杉戸町の地元食材を通して地域との共生を考える

来て下さるお客様は地元である埼玉県の人がやはり多いのですが、次に多いのが圧倒的に東京の人。東京の人は僕らが普通に感じるものを面白いと思ってくれるようなんですね、地元のネギの天ぷらとか、地元のかぼちゃを使ったプリンとか。

館内に食事処は「みやび」と「irodori(いろどり)」の2ヶ所があり、可能な限り地元産の食材を使っています。例えば人気メニューに蕎麦があるんですが、ここに薬味で付けているネギの評判がいい。なんでかっていいますと、朝届けてくれるので抜群に鮮度がいい。

朝採れネギ(ご本人提供)

食材に関しては杉戸町の役場さんに相談することも多いです。例えば杉戸産のお米を使いたいと言えば、役場の方が農家の方を紹介して下さいます。そして田んぼごと契約したりします。野菜でも役場の方が複数の農家さんの四季ごとの作物をリスト化して下さり、一緒に農家さんに会いに行ってくれたりするんですよ。ちなみに私は契約するときは現地に足を運ぶようにしています。そうするとお互いに信頼が生まれます。地元と繋がることによって、地域が一丸となってお客さんをたくさん呼べたらいいなと思っているんです。

うちの食事処の人気ナンバー1メニューに「たまふわ杉農うどん御膳」というものがあるのですが、こちらはもともと杉戸宿開宿400年の記念に役場や地元企業が携わったプロジェクトで、地元の農業高校の生徒さんが考案したものなんですね。通常はこういったメニューは単発で終わるのですが、美味しいので8年経った今でも人気メニューです。背景には役場、学校、企業がともに開発したというストーリーがあるわけです。

お客様にもスタッフにも笑顔で過ごしてほしい

玄関にて(ご本人提供)

「雅楽の湯」は2012年に開湯して、最初の1年目は正直に言ってそんなに人気は出ませんでした。しかしニフティ温泉の年間ランキング2位に選ばれた頃からテレビ、新聞、雑誌などで取り上げられるようになってきまして、お客様の来場が年々増えてきました。ありがたいことなのですが、混みすぎることでお客さんの満足度が下がってしまうことが、目下のところ最大の悩みです。

「ここは杉戸のディズニーランドか」なんて言われたこともあります。土日は当たり前のように入場制限がかかり、食事処は毎日満席。IoTを取り入れて混雑状況の可視化をはかり、お客様の負担を少し軽減することはできましたが、混雑そのものは今でも解消していません。お客様が笑顔で過ごせるように、まだできることがあればと、さまざまな検討をしております。

もう一つ悩んでいることがあるとすれば、それの課題は従業員の幸福度アップです。温浴施設は一般的に離職率が高い傾向にありますが、うちは従業員が幸せを感じるお店でありたいと思っています。そのために必要なことの一つが向上心。自分なりの5年後、10年後の人生の目標を持ち、その実現のために今何をなすべきか考え、行動に移す。そういうコミュニケーションをとっていきたい。自分自身も同様に先の目標に向かって挑戦し続けていくことで、もっと社会に役立つ人間になりたいと思っています。

また先ほど、食材を仕入れる地元の農家さんに会いに行くという話をしましたが、従業員の方もそういった経験をしてもらって地域と繋がり、仕事を面白いと感じてほしい。温泉に関する資格を取って温泉への理解を深めてもらうのもいいと思いますね。

Something Goodが自分の“ととのい”

湖のある公園(ご本人提供)

「Something Good」という言葉をご存じでしょうか?

これは私が青山学院大学の社会人講座で教わった言葉で、“何か良いものに満たされている状態は幸福ではないか”という考え方です。夫婦でこの言葉に大変共感し、二人で指輪にも彫りました。

日々のととのいのために大切にしているのは夫婦の時間です。休日が合えば近所の湖のある公園に出かけ、地元の美味しいベーカリーのパンでガーデンランチ、これを最低週1で行います。おしゃべりするのは日常のことや息子のことや未来のこと。ライブハウスやコンサート等、音楽を一緒に聞きに行くこともあります。

それから店内で一緒に働く従業員さんと15秒だけ話します。1回が短くても、できるだけ多くの人と話すようにしています。店で扱っている食材などのお店の人とも積極的にコミュニケーションを取るようにしています。15秒というわずかな触れ合いでも、自分の心が喜ぶんです。部屋や事務所の整理整頓も心がけています。お風呂が好きなので、お風呂に入らないと1日がととのいません。温泉じゃなくて自宅のお風呂でもいい、綺麗に全身を洗って入ります。これら全てが「Something Good」です。

※この記事は個人の感想であり、効果・効能を示すものではありません

提供元:杉戸天然温泉 雅楽の湯

関連記事

【薬膳レシピ】vol.6人参のラぺ&スムージー「啓蟄」

この記事はいかがでしたか?
この記事をシェアする

コピーしました!