明るい未来に向けて、持続可能な社会を創るためのプロジェクトを行っている一般社団法人「小さな地球」。
その舞台となるのは、千葉県鴨川市の山間にたたずむ釜沼集落です。1000年以上も前から大切に守られてきた天水棚田をはじめ、果樹園にみかん畑、昔ながらの茅葺き屋根の古民家、緑豊かな裏山⋯ 。この美しい場所で「小さな地球」は誕生しました。
この記事では、インタビューにも登場いただいた副代表の福岡さんに、プロジェクト誕生秘話にも触れつつ、都市部に住んでいる人でも気軽に「自然とつながる暮らし」を味わえる、魅力的な体験をご紹介いただきました。
INDEX
【誕生ストーリー】台風で被災した里山から、みんなの場所へ
プロジェクト発足のきっかけとなったのは、2019年に房総半島を直撃した大型の台風15号です。釜沼集落も被災し、「小さな地球」代表である林 良樹さんの古民家の窓ガラスは割れ、屋根上にかけてあったトタン板は吹き飛ばされ、家の中は水浸しになりなるほどの被害があったそうです。
さらに25世帯の集落で空き家が3件も出てしまい、存続のピンチにさらされました。そこで高齢者が9割の集落を救うべく、林 良樹さんと福岡達也さん、塚本由晴さんの3人が集まり「小さな地球」のプロジェクトが始動したのです。
「林さんは農家でありアーティストでもあります。この美しい里山のことを「いのちの彫刻」だととらえ、人と人、人と自然、都市と農村を地域をつなぐことをテーマに、さまざまな活動をされています。台風が起こる前に、林さんが建物の設計を依頼していた建築家の塚本さんは、大学の先生ということで台風が起こったときに学生たちを連れて、小さな地球の立ち上げに協力してくれました。」(福岡さん)
子供から大人まであらゆる人たちが作業や交流ができる、都市と地方の垣根を越えた里山・コモンズ。
「コモンズはわかりやすくいえば『みんなの場所』というイメージですね。都市に暮らしている方も気軽に鴨川・釜沼(小さな地球の拠点のことを指す場合は基本的に釜沼=集落の名称で呼んでいます。)に遊びに来ていただけたらと思っています。」(福岡さん)
都市と地方をつなぐプロジェクトを展開する「小さな地球」は、大学との連携にも力を入れています。プロジェクトの主要メンバーであり、建築家・東京工業大学教授の塚本さんは、ゼミの学生たちとともに茅葺き屋根や古民家を直したり、田んぼや耕作放棄地のを回復させたり、タイニーハウスを制作するプロジェクトを行いました。
また2021年から現在に至るまで、明治大学の学生とともに土でつくるサウナプロジェクトを実施しています。
「伝統が色こく残る釜沼集落は、いつの間にか多くの大学が分野を超えて集まる場所となり、一歩引いた目線で世界を見渡す探究の場になってきています。
将来的には、もっと多くの人がこの美しい里山に通ったり移住したりして、ライフスタイルの一部として活用できるコモンズにしていきたいです。」(福岡さん)
【里山でできること】「小さな地球」で自然とつながる体験を
都心から車でわずか1時間半ほどの距離にありながら日本古来の風景が残る「小さな地球」は、移住を考えている人はもちろん、都会を離れてリフレッシュしたい人にぴったりな自然とつながる暮らしを体験できる施設がそろっています。その一部をご紹介します。
空き家となった1軒は古民家「したさん」という愛称で、コモンズとして利用されることになりました。村の中心に位置する古民家したさんは、元村長の家ということで立派な建物ですが、山と田んぼを維持することがこの家を引き継ぐということでもあります。このためなかなか移住者が気軽に借りることができない状況でした。そこで寄付や基金という形でお金を募って法人で購入し、みんなの共有財産とできるように仕組みを作りました。今では多くの方に愛される場所になっています。古民家「したさん」では宿泊ができるほか週の3日はカフェを営業、月1回ペースでオーガニックマーケット「awanova」を開催もしています。
メンバーシップで運営される古民家「したさん」
2021年にリノベーションされた古民家「したさん」。地域住民だけではなく、都市に住む人たちも学生も子供も、すべての人が作業したり交流したりできる場所を作りたい。そして、誰もが豊かに過ごせる社会を作り、この風景を守っていきたいという想いから作られたのが「したさん」です。
木のぬくもりがあふれるカウンターキッチンに薪ストーブ付きのラウンジスペース、山のそばにある信楽焼ののお風呂など、田舎暮らしを体験できる設備が整っています。思わずホッと息をつきたくなる温かな雰囲気が魅力です。コミュニティメンバーとして「小さな地球」に参加して利用することができるほか、スポットで一棟貸宿としても利用可能です。家族や友人同士で里山で採れた食材を使ってバーベキューや調理も楽しめます。
身体にやさしいごはんとスイーツ「里山cafeピリカ」
2022年に古民家「したさん」内にオープンした「里山cafeピリカ」。オーナーは東京と鴨川の2拠点生活を続けた後、移住した福田ゆきさんです。 東日本大震災を経験した後、自分の暮らしを見つめ直すようになり、自給自足的な生活をしたいと願うようになったそうです。鴨川に魅せられたゆきさんは、自分が本当に求めていたのは田舎暮らしだということに気づき、移住を決めました。
「里山cafeピリカ」では地元産の無農薬の野菜、無添加の調味料を使った食事や、米粉のグルテンフリーのスイーツをいただけます。コーヒーにもこだわりがあり、オーガニックフェアトレードの豆を使用したブレンドコーヒーは、ゆきさん自慢の一品です。
完成間近!土でつくる藏サウナ「Earth Sauna」
2021年から動き出した土で作るサウナ「Earth Sauna」プロジェクト。明治大学の学生とともに、築100年ほどの古い蔵を北欧フィンランド式のサウナに仕上げ、現代の建築ではめずらしい土を使った大がかりな作業を行っています。
「Earth Sauna」の特徴は、気の知れた仲間と一緒に楽しめためのサウナということです。サウナは5人がゆったりと入浴できるサイズ。里山に抱かれるサウナでは、心身が「ととのう」ことはもちろん、知らない人と入るサウナとはまったく違う、鴨川にしかない体験ができます。
「ただのサウナとしてではなく、自宅や学校、職場とは違った、心地いい場所という意味がある『サードプレイス』を作りたくて、2年前から構想を練ってきました。土中の環境に配慮したいという願いを込めて、コンクリートは極力使わないという大きな挑戦に挑んでいます。」(福岡さん)
「Earth Sauna」プロジェクトでは、クラウドファンディングを実施(2023年10月現在)。支援金はサウナストーブの購入費に当てられ、蔵サウナ利用券や小さな地球のツアー、サウナ作り体験ワークショップなどのリターンが用意されています。
プロジェクトへの支援はこちらから
美しい地球を守り続けるために、建設される土で作る「Earth Sauna」。「暮らしの主人公Stories」では、「Earth Sauna」の完成までとそしてその先のストーリーをご紹介していく予定です。
自然に溶け込むタイニーハウス「滴滴庵」
太平洋を一望できるタイニーハウス(小屋のように小さな家)「滴滴庵」。福岡さんは移住した当初からタイニーハウスを作り、地域の人たちも都市に住む人たちも気軽に通える場所にしたかったそうです。
そして念願が叶って、建築学生の研究を兼ねてタイニーハウスの建設がスタートしました。1年以上の歳月をかけ、東京工業大学の学生たちがほぼすべての作業を行いできた渾身の作品が「滴滴庵」です。印象的な八角形の入り口から望める大きな窓の先には、里山の緑あふれる風景が広がっています。都市からわざわざ通いたくなる、どこか懐かしい風景が心を癒してくれることでしょう。
また、2017年にできた良品計画の通称「棚田オフィス」も鴨川のシンボルとなっています。林さんが代表を務めるNPO法人うずと良品計画がタッグを組み、都市住民と協力して棚田を保全する「鴨川里山トラスト」と呼ばれる活動が行われてきました。棚田オフィスの1階は農具置き場や休憩スペースとして、2階は棚田の絶景を見ながら仕事ができるワーキングスペースとなっています。横には開放的なウッドデッキもあり、ただボーッとしたり読書したりするのに絶好の場所です。
「千葉県の熊谷知事もワーケーションを体験しに鴨川に来られたんです。田んぼで稲刈り作業をして、棚田オフィスで仕事した後は、良品計画さんの古民家リノベーション宿泊滞在施設『MUJI BASE KAMOGAWA』に訪問されました。ここのライフスタイルが『千葉の宝』だと知事に言っていただき、地域の方々とこれからのビジョンを語り合いました。」(福岡さん)
【移住体験】どれからはじめる?持続可能な暮らしを見て、聴いて、体感しよう
2019年の台風により存続の危機にさらされた千葉県・鴨川の釜沼集落。「この美しい里山をいつまでも守り続けたい」という願いから誕生した、「小さな地球」の持続可能な社会・暮らしを作るための取り組みをご紹介しました。
場所にとらわれない働き方が進められる中、暮らしのあり方を見つめ直し、田舎移住に興味を持つようになった方も多いと思います。
「サステナブルな暮らしっていっても、何からしたらいいの?」という人でも、この美しい里山を訪ねてみれば、たくさんのヒントをもらえるはずです。人と自然とつながる暮らしを、ぜひ実際に見て聴いて体感してみてください。
※この記事は個人の感想であり、効果・効能を示すものではありません
提供元:一般社団法人小さな地球【PR】
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