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四万温泉に近づくと雪が降ってきた。上空は白くかすんでいる。下界は桜が散り始めているというのに。車で新湯川に架かる赤い欄干の橋を渡ったところ、日帰り客の駐車場は無いとのことで、四万川沿いの町営駐車場に引き返すこととなった。
1200円で入浴券を購入すると小さな地図を渡され、なにやら早口で簡単な説明を受けたが、そのスタッフは、定められたことを定められたように話しているだけで、「説明とは知らない相手に知らせるもの」ということを理解していないようであった。
元禄の湯は、開放された通路からドアを開けるといきなり浴室で、浴室の手前の方が脱衣スペースとなっている。一旦中に入ったが、靴の置き場所が無いと思い外に出てみるとドアの側に下足棚があった。浴室内は少し寒かった。入口は隙間だらけだし、窓が少し開いていて、換気扇が回っていた。外は小雪がちらついているというのに。湯温は、手前の大きな湯舟が39度、中の二つが40度、窓際の二つが41度位であった。カランが狭いスペースに一つある。終始窓際の湯舟に入っていたが、気温が低いので41度でも少し温く感じてしまう。しかし、お湯の良さは流石である。湯舟の蛇口は白い析出物で厚く覆われており、それに滲み出た緑青が妙に美しかった。
混浴岩風呂は元禄の湯から離れた場所にあるので、一旦服を着て移動する。岩風呂の脱衣場は粗末なもので、共同湯のそれでもましなものはたくさんある。岩風呂は二つに分かれており、5人ほどが入れる湯舟は湯温が42度位、3人ほどが入れる湯舟は43度位であった。脱衣場の脱衣棚は、女性の脱衣場との仕切りになっているが、脱衣棚に幾つか穴が開いており女性の脱衣場が覗けてしまうのではないかと思われた。田舎の混浴風呂の座興では済まないと思うのだが。
元禄の湯は、登録文化財であっても湯治宿の湯治湯なのであって使い勝手は良くない。お湯の良さでと言うならまだしも、浴室が気に入っての再訪というのは理解できない。レトロモダンとは異なる。建築当時モダンだったものが古くなっただけなのだ。11人が参考にしています