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世に秘湯と呼ばれる温泉は数あれど、この山空海温泉ほど、ある意味で秘湯と呼ぶにふさわしい温泉は他にない。大阪府下にあるため、場所は秘湯というほどのものではなく、泉質も、この地には硫黄泉は珍しいものの、目立って個性的でもない。ここが他の温泉と大いに異なる部分は、この温泉の運営方針である。
オーナーである鍼灸師によって掲げられている「山空海温泉憲法」なるものに、、まず驚かされる。一部抜粋すると、
・お金を払っているのだから客だという考え方の方の入場はお断りしています。
・当温泉では管理人、オーナーの言うことが憲法ですので、間違っていても従える人のみ入場して下さい。
個性的でしょう?これを読んだだけで帰りたくなる人もいるかもしれないが・・・
飽くまでこの温泉は療養目的のために一般開放されたもので、、入浴者は客というよりむしろ共同で温泉を維持する協力者の如き位置付けなのだろう。
さて、設備はお世辞にも小奇麗なものとは言えないが、硫黄臭漂う小さな浴室に足を踏み入れると、高温・低温・源泉の水風呂の三つの浴槽に混じり気のない硫黄泉がかけ流され、その三つの浴槽を交互に移動することで、じっくり入浴が可能、事実、入浴者は常連さんがほとんどで、一時間ほど低温の湯に浸かったまま動かない猛者もいる。小さなステンレス浴槽に満たされた冷泉は、ホースから飲用することも可能で、飲んでみると、意外なほど飲みやすい。
入浴していると、東北の鄙びた共同湯の如き雰囲気を味わうことができ、最初は恐る恐るだった私も、身も心も安らぐことができた。実に貴重な体験で、近隣の住人だったら、間違いなく常連客となるだろうと思う。
オーナー氏はいざ知らず、管理人の方は愛想も良く、愛嬌のある犬までお出迎えのサービス付き。温泉としての個性の強さに圧倒された次第。
都会の小奇麗」なスーパー銭湯に慣れた人には不向きだろうが、鄙びた雰囲気と本物の温泉が好きな人には好まれる温泉だろう。私としては、この、知る人ぞ知る秘湯を、秘湯のままにしておきたいのが本望なのだが。2人が参考にしています