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各地のかんぽの宿の湯に入ってみても、大概が循環で塩素系薬剤で消毒といった温泉利用方法であるところ、ここは珍しくというと失礼だが、泉質重視の姿勢が見られることに敬意を抱く。まことに貴重な存在だ。
有馬の湯は濃厚であるために、設備の維持が大変だろう。事実、源泉を一定期間流した管を展示してあったが、動脈硬化を起こしたように源泉成分で狭くなった管に圧倒される。かように、源泉をそのまま利用するとなると、苦労も多いのである。
比較的狭い内湯のみで、露天はない。自家泉源の金泉が注がれた浴槽と白湯の浴槽があるのみ。金泉の浴槽の湯は、加水され希釈されたとはいうものの、赤褐色の存在感ある湯である。源泉温度が90度を超える高温であるがゆえに、加水もやむを得まい。加水されて希釈されているためかもしれないが、金泉でも天神泉源の色合いとは微妙に異なり、赤みは薄い。良心的なのは源泉を加水して冷ましたうえでかけ流しているところ。そして憎き塩素は混入されていないのである。これはお勧めだ。かんぽの宿らしくないといったら叱られるかしらん。
価格的にもリーズナブルであるし、ここは無料で駐車可能もであるし、有馬の最も賑やかな場所からは若干外れた長閑な場所にあるし、有馬温泉の湯を堪能したい向きには穴場といえる施設だ。食事付きの安価なプランも用意されている。
ちなみに、おにゆり様の仰られる有馬で生の源泉を堪能できる三つの施設とは、このかんぽの宿と、上大坊、陶泉御所坊のこと。確かにこの三つ以外の施設の湯は循環されているか、塩素消毒が施されているかどちらかである。嘘だと思われる方は、例えば日帰り施設の金の湯と、上大坊の湯に入り比べればよろし。両者同じく天神泉源からの引き湯だが、香りと色合いの違いは歴然。加工されていない湯がどれだけ優れたものか、認識することになるだろう。3人が参考にしています