ココロとカラダをととのえる“暮らしの主人公Stories”

何事にも臆せずチャレンジ

幾多の文豪に愛された湯河原温泉の歴史を背景に、創作活動をコンセプトに据えたユニークな日帰り温泉として注目を浴びる「湯河原温泉 おふろcafé HITOMA」。今回はこの施設立ち上げの中心人物である「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」支配人、株式会社温泉道場 山﨑玲奈さんにインタビュー。

若くして支配人を務めることになった経緯や施設のこだわり、小規模旅館の活性化への想いとともに、日々の暮らしのなかで心身のバランスをととのえるために意識している点など、パーソナルな部分についてもお話しいただきました。

Profile

山﨑 玲奈 やまさき れな

The Ryokan Tokyo YUGAWARA 支配人

大学卒業後、株式会社温泉道場に入社。「ときたまひみつきち COMORIVER」にて約2年半勤務、2年目に「小麦の奴隷 ときがわ町店」の立ち上げ店長を経験。一度「おふろcafé 白寿の湯」で温浴を経験し、2023年「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」のリニューアルに際して「チャレンジ支配人制度」を使って立候補、同施設の支配人に就任。

休日を利用してさまざまな宿泊施設や温泉施設などをめぐるのが最近のルーティーン。

INDEX

若いうちこそ経験が必要

現在の「The Ryokan Tokyo YUGAWARA(以降、TRT)」に携わるようになったのは、2023年の2月からなんです。その前は埼玉県のグランピングリゾート「ときたまひみつきち COMORIVER(コモリバ)」で働いていました。

ときたまひみつきち COMORIVER(コモリバ)

TRTは、かつて会社の保養所として運営されていた旅館で、そのあと別の会社さんが引き継ぎ、コロナ禍を経て2022年3月に私たち株式会社温泉道場が運営することになりました。近い将来、一角に日帰り温浴施設の「おふろcafé」をつくってリニューアルすることも考えていました。

その話を聞いたときに、コンセプトを含めてイチから立ち上げる経験を、若いうちにこそやってみたいと思い立って、社内の「チャレンジ支配人制度」を利用して自ら手をあげて立候補したのがはじまりです。当時のTRTでは、仕事の属人化が課題になっていました。旅館には様々なお仕事があると思いますが、効率化をすることによってもっとお客様のサービスに時間が使えるのではないかと思い、効率化、標準化した「小規模旅館の新しい運営モデルをつくりたい」ということを提案しました。また、自分以外の若い社員にも「早いうちから支配人にチャレンジしてみたい」と思ってもらえるような姿を見せられる存在になりたい、ということも話しましたね。

実は一度チャレンジ支配人のプレゼンテーションに通らず、2回挑戦しました。無事に支配人になったあとも、現場に入りつつ、リニューアルに向けてはコンセプト作りからはじめました。各地の温浴施設や小売り、サービス施設を視察しながら、湯河原という地域性をどう生かせばいいのだろう、という視点でメンバーと一緒に考えをまとめていきました。コンセプトが決まったあとには、デザイナーや設計士の方、施工業者の方とコミュニケーションをとりながら、電源の場所、備品一つひとつに至るまで検討しながら進めて、「湯河原温泉 おふろcafé HITOMA(ひとま)(以降、HITOMA)」の開設を目玉にリニューアルオープンするにいたりました。こういった経験は初めてだったのですが、周りのメンバーや上司にサポートしてもらいながら進めていくことができました。

リニューアルミーティングの様子(ご本人提供)

「文豪の地」としての個性で選ばれる宿へ

夏目漱石、与謝野晶子、島崎藤村など、多くの文豪達にゆかりがある湯河原温泉は「文豪の地」と呼ばれるだけあって、「書く」「読む」といった行為との親和性がとても高い地域なのだと思っています。そこで、リニューアルによって誕生したHITOMAでも、地域の個性である「書く」「読む」を軸に、そこからブレないようにイベントを企画したり、広めていったりしようと決めました。

訪れていただく方々になにか体験できるプログラムをつくりたいと、まずたどり着いたのが「インク」です。コンセプトの一つでもある「書く」という観点から視察を重ねたときに、オリジナルのインクづくりを体験しました。こんなオペレーションをしているんだとか、こんな伝え方があるのかなども学ばせていただいて、オリジナルのインク作りを通した「書く」の体験をHITOMAでも提供していくことにしました。また、日常生活でSNSやメールでのコミュニケーションが主流になっていて、自分でペンを持って「書く」ことも少なくなってきているので、自分で作ったインクで手紙を書くということも、ぜひHITOMAで体験していただきたいと思っています。

インクづくり体験の様子(ご本人提供)

HITOMAも含む「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」として目指しているのは「日本一のクリエイターのための宿」になるということです。また、「ソロで泊まる旅館といえばここ」と言えるような場になりたいという想いもあります。

実際にご利用いただく方々もクリエイターの方が多いんですよ。平日だと小説を執筆されている方や同人誌を描かれている方がほとんどで、昨日は漫画家さんが泊まっていかれました。リピーターになってくださる方もいて、その方達がソーシャルメディアで情報を流して、広まっていっているような面もありますね。

チャレンジを重ねて積極的な自分に

私自身は、中学生くらいまでは人見知りで、人前に出るのはとても苦手でした。その性格が変わってきたのは大学時代でしょうか。「せっかくだから大学生じゃないとできないことをしよう」と思い、大学のプログラムや企業のインターンなどを利用していろいろな地域に行って活動したんです。

タイ滞在時の様子(ご本人提供)

当初はフィリピンに1カ月滞在したり、タイの過密地区の調査を10日間行うプログラムに参加したのですが、そこで感じたのは、自分程度の力では何もできないということ。各国それぞれに課題はある。日本にはどんな課題があるのだろうかと考えるようになり、そんな中で国内に改めて目を向けるようにもなりました。国内では、地方の農産物加工場に1カ月間滞在し、第一線で働く80代、90代の方々の姿には刺激を受けましたね。また、イベントの運営などを通して、地域の経営者の方々とも知り合うことができ、今の考え方にもつながる貴重な経験を得たと感じています。仕事以外の人とのつながりも大切にしたいので、いまでも年に数回は会いに行ったりしています。

大学4年生の時は石川県珠洲市に滞在し、商店街の調査や卒業論文の執筆をしたり、カフェのお手伝いもしていました。若いときの失敗って、結構許されるじゃないですか(笑)。応援もしてもらえますし、失敗しても帰る場所もある。だから、面白そうであれば何でもチャレンジしていましたね。その結果、新しいことに挑戦したり、飛び込んだりすることへのハードルはなくなりました。入社2年目でベーカリーの立ち上げ店長をやってみない?と言われた時も未経験の分野でしたが、「やってみたいです!」とすぐ返事をしました。

「小麦の奴隷」立ち上げ時(ご本人提供)

やる気を受け入れ、成長を後押ししてくれる職場

学生時代に経験したプログラムやインターンを通じて、就活中は都会の大手よりもローカルで頑張っている企業に魅力を感じていました。そういった理由から、まずは祖母の家がある群馬の会社を中心に探したのですが、なかなかフィットしそうなところがなく、自分の出身地である埼玉の会社にシフト。結果的に株式会社温泉道場に入社することになりました。

もともと、お風呂やサウナはあまり得意ではなく、入ってもすぐに出ちゃうタイプだったのですが、勉強も兼ねて月に1度は温泉やホテルにいくように心がけたところ、今では休日のほとんどの時間を費やすくらい好きになっています。

休日、ホテルにて(ご本人提供)

温泉道場では、役員を含めてメンバー同士の距離が近いんです。ちょっとしたことでも気軽に相談できますし、ブラッシュアップした案をすぐに返してくれます。実際に動くのは自分であっても、一緒になって企画を考えたりしてくれるので、とても心強いですね。

また、仕事の時間とは別に社内に「ゼミ」があります。事業運営や温浴施設についての講義のほか、自分たちではなかなか体験できないサービスを体験しに行くこともあり、自分たちでサービスを作る仕事なので役に立っています。エンターテインメントの勘所を知るためにスポーツを見に行くことも、レストランや釣りに行くゼミもありますよ。チャレンジを応援してくれる制度や社風があって、自分の考え方にも合っている。それが背中をおしてくれているとも感じます。

釣りゼミにて(ご本人提供)

現在は現場のオペレーションでいっぱいいっぱいなのですが(笑)、これからは湯河原で活動している学生団体と協力して、地域を盛り上げるような取り組みも検討中です。食材がとても豊富な地域でもあるので、地元の方と連携して湯河原の食べものとか飲みものとかをもっとたくさんの方に紹介できればと思っています。

小規模旅館再生のモデルになりたい

「デザインができる」「温泉に詳しい」「サウナが好きすぎる」「アウフグースができる」など、温泉道場の人たちはみんな個性的な能力があるのですが、私はあまり得意なことがないんですよね。だから、あまり考えずにとにかくやってみることを大切にしています。常に新しい環境に身を置いて、忙しくしているのが好きなんです。その中で、自分で何か改善したり、自分の力で売り上げを作っている感覚が楽しいです。ただ、忙しすぎると考える時間がなくなるので、休日はなるべく出かけるようにしています。新しくできた温浴施設や気になる温泉に行くことが多く、癒やしの時間を楽しみながら、どんな方たちが楽しんでいるのか、どんな体験をしているのかを直接みて感じて、次のアイディアにつなげています。そのほか、オフタイムには最近ジムに行くようになったり、地域柄、海を見に行ったりもしますね。湯河原に来てからは魚が美味しいのでお刺し身をよく食べるようになりました。体を動かすことと、美味しいものを食べることで、心身のバランスを良い状態に保っていますね。

「温泉に入る」という文化は海外にあまりなく、日本ならではのもの。ぜひ残していくべきだと考えています。また、小規模な温泉旅館という、日本の観光業を支えてきた業態の良さや魅力を、改めて伝えていきたい。今回誕生した「湯河原温泉 おふろcafé HITOMA(ひとま)」は、小規模な旅館が手掛ける日帰り温泉のテストケースのようなもの。小規模旅館の経営再生のお手本と言えるくらいの存在にできればと思っています。

リニューアル後、仲間達と(ご本人提供)

今後、いろいろなサービスを拡充させていくためには、地域での採用もこれからの課題になりますね。小規模旅館の再生モデルとして確立させるためには、やることもまだ山積み。湯河原はもちろん、みんなでローカルを、温浴業界を盛り上げていけたらと思っています。

※この記事は個人の感想であり、効果・効能を示すものではありません

提供元:The Ryokan Tokyo YUGAWARA

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