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9月13日、朝の清掃が終わる前に訪れた。しばし待っていると、シマリスがえさを食べにやってくるし、ハトは人が近づいても餌台で悠然と餌をついばむ光景を目にした。広い敷地は緑が一杯で、とても旅館には思えない。
さて、小さな戸を空けて露天に出ると、コンクリートの打ちっぱなしの、何の変哲もない四角い浴槽が。旅館の綺麗な湯船を連想してきたら、恐らく仰天するに違いない。
湯船の中ほどで板で湯がせき止められ、熱湯とぬる湯になっている。ぬる湯が長湯には最適。目の前には緑が迫り、時折、秋あかねやしおからとんぼがお湯に尻尾をぬらしている。時間を切り取ったような空間がそこにはある。そんな誰一人いない浴槽にのんびりと浸かっているのは最高の贅沢。
この湯船はとても広く、個人で営む旅館には似つかない大きさ。近くの川湯などは硫黄泉だがここは無色透明のアルカリ泉。
張り紙に「売却ができるまで営業することにしました」とあったので、聞いてみた。もう、体がいうことをきかなくなって、お客さんに迷惑をかけるからということであった。こんないい温泉を、と感想を述べると、居抜きのまま買ってくれる人にしか売らないことにしているとのこと。その人ことに希望をつないだものだ。5人が参考にしています