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岩井屋は、たった3軒しかない温泉地の宿である。
以前に、女将の鳥取を感じてもらえるよう心がけているとの記事を読んだことがある。
浦富海岸に近く、長らく海水浴で馴染みのあった地にありながら、やっとの縁となった。
宿の外観は、他の旅館に較べても取り立ててどうと言うこともない趣だ。
しかし、ひとたび玄関に入ったらば、じきに優れた癒しの演出を感じることだろう。
レトロな家具調度品や生け花がセンス良く配置されてわざとらしさがない。
その主張しすぎないところに品の良さがある。
夜になると、館内のあちこちに照明の濃淡があって、それが醸し出す雰囲気がまた良い。
仲居さん達は皆にこやかで、簡潔で無駄のない説明や接し方の距離感にもホッとする。
これらは日常的で、レベルは意識されている。勤める人の出入りが激しい宿ではない。
料理については、味も盛り付けも修行を積んだ職人の仕事だ。なので言うことなし。
良ければ良かったでサプライズではありますが、これらは温泉好きには温泉以外です。
さて、肝心の湯です。
カルシウム・ナトリウム硫酸塩泉。含芒硝石膏泉。
単位当りの成分量約1.7gはりっぱなものである。
丁度良い温度は調整している。源泉位置47度であるので今の時期は濃い状態か。
足下湧出を実感したくてしつこく探ってみるが、そもそも吹き出し口なるものがない。
ただ、ときどき泡が出るのが見られる。
鼻に近づけると、微かにきな粉の香りがするが、近くの外湯ほどの強いものではない。
口に含むと苦みがあり、すこしの硫黄臭が鼻から抜けた。
湯船の中は2段構造である。縁に頭を預けてゆっくりと躯をのばすと良い案配だ。
平日宿泊のためか、混むこともなく都合6回も湯に浮かんでうたた寝とあいなった。
非常に贅沢で幸せな時間を過す。今回は三朝の橋津屋とのセッティングだった。
宿を出る頃には、なんとか平日に連泊したい気分になってしまっていた。11人が参考にしています